米英仏がシリアの科学施設を空爆

2018.4.15
追加 2018.4.15 17:30


 military.comが昨日のシリア攻撃の詳細を報じました。

 それは2分間ですっかり終わりました。

 米仏英軍は現地時間午前4時頃、すべてが目標を2分間で叩いた合計105発の兵器で、疑いがあるシリアの化学兵器施設を攻撃したと、国防総省当局者は土曜日に言いました。

 「これ以上の結果はあり得なかったでしょう……任務達成!」とドナルド・トランプ大統領(President Donald Trump)は土曜日早くにツィートしました。

 攻撃には、3つの攻撃目標(ひとつはダマスカス郊外、他2つは北へ90マイル)に対して、東地中海、紅海、北アラビア海で活動する艦船、航空機、潜水艦1隻が関与しました。

 合計76発のミサイル(トマホーク地上攻撃ミサイル(TLAMS)59発、射程拡張型統合空対地スタンドオフミサイル(JASSM-ER)19発がダマスカス付近のバルザ研究開発センター(Barzah Research and Development Center)に撃たれたと、統合参謀事務局長ケニス・マッケンジー海兵中将(Marine Lt. Gen. Kenneth McKenzie)は国防総省の記者会見で言いました。

 まったく同じ時刻に、ダマスカスの北約90マイルにある、ホムス(Homs)近くのヒムス・シンザル化学兵器貯蔵施設(Hims-Shinsar chemical weapons storage facility)が合計22発の兵器(トマホーク9発、イギリスのストーム・シャドー・ミサイル8発、フランス海軍の巡航ミサイル3発、フランスのSCALP地上攻撃巡航ミサイル2発)で攻撃されたと、マッケンジー中将は言いました。

 3番目の目標、ホムス近くのヒムス・シンザル化学兵器掩蔽壕施設(Hims--Shinsar chemical weapons bunker facility)がフランスのSCALPミサイル7発で攻撃されたとマッケンジー中将は言いました。

 紅海では、タイコンデロガ級巡洋艦モンテレー(Monterey)がトマホーク30発を、アーレイ・バーク級駆逐艦ラボーン(Laboon)がTLAM7発を発射しました。

 北アラビア海では、アーレイ・バーク級駆逐艦ヒギンズ(Higgins)がTLAMS23発を発射したとマッケンジー中将は言いました。

 東地中海では、フランスのフリゲート、ランドック(Languedoc)がSCALPミサイルの海軍版3発を、ヴァージニア級潜水艦ジョン・ワーナー(John Warner)がTLAM6発を発射しました。

 空中ではB-1Bランサー爆撃機2機がJASSM19発を発射しました。

 イギリス軍はストーム・シャドー・ミサイル8発を発射するために、トルネードとタイフーン戦闘機の組み合わせを飛行させました。

 フランス軍はSCALPミサイル合計9発を発射するために、ラファエルとミラージュ戦闘機の組み合わせを飛行させました。

 攻撃は戦闘におけるJASSM-ERの最初の使用を意味しました。

 サウスダコタのエリズワース空軍基地(Ellsworth Air Force Base)から来た通常兵器のみのB-1爆撃機は3月31日に、B-52爆撃機から攻撃任務を引き継ぐために、約2年半ではじめて、カタールのアル・ウデイド空軍基地(Al Udeid Air Base)に到着しました。

 12月、B-1のパイロットと乗員はMilitary.comに、中東の戦場に備えて、昼夜兼行で訓練をしていると言いました。

 シリアによる主張にも関わらず、同盟のミサイルは防空システムの干渉を受けずに目標に到達しました。

 「我々は地対空ミサイル40発以上がシリア政権によって使われたと評価します」「それらの発射の大半は我々の攻撃の最後の着弾が終わった後で起こりました」とマッケンジー中将は言いました。彼はシリア軍の発射は効果がなく、見境のない反応に基づいて明らかに彼らの国民へのリスクを増やしました。空に誘導もなく鉄を撃てば、それは必然的に地球に落ちます」。

 ロシア軍の最新型防空システムS-400とS-300ミサイルは、3つの目標の射程外にあると考えられており、起動されませんでした」とマッケンジー中将は言いました。「ロシアの防空システムが展開された徴候はありません」と彼は言いました。

 金曜日夜間の記者会見で、統合参謀本部議長ジョセフ・ダンフォード大将(Gen. Joseph Dunford)は、2,000人と見積もられるシリア東部の米兵はミサイル攻撃によるあらゆる報復に対して高められた警報が出されていると言いましたが、マッケンジー中将は「我々は隊形に対するいかなる軍事的対応も見ていません」と言いました。

 マッケンジー中将は、アメリカはミサイル攻撃の結果かもしれない民間人の犠牲を今現在承知していないと言いました。

 「これらの攻撃は、シリア政権の継続的な国民に対す化学兵器の使用に対する正当で、合法的で、比例した対応でした」と国防総省の報道官、ダナ・ホワイト(Dana White)は言いました。

 「我々はロシアとイランが支援するアサドが国際法を無視する間は傍観はしません」。

 攻撃機に加えて、作戦を支援するために、任務にはさまざまな防御用防空機、給油機、EA-6Bグロウラーを含む電子線航空機が関与しました。

 「この作戦に関与した航空機やミサイルがシリア軍の防空システムと交戦したり、ロシアの防空システムが使われたいかなる徴候はありませんでした」とマッケンジー中将は言いました。

 同盟の航空機はすべて安全に基地に戻ったと、彼は言いました。

 マッケンジー中将は、攻撃は疑いが持たれている神経ガスのサリンを使ったダマスカス北部への化学攻撃への対応で、昨年4月7日のシリアの飛行場に対するトランプ大統領の過去の命令の約2倍だったと言いました。

 2017年の対応で、合計59発のトマホークが、アーレイ・バーク級駆逐艦ロス(Ross)とポーター(Porter)から発射され、少なくともミサイル1発が目標に命中しなかったと考えられています。

 土曜日早朝のシリアを狙った作戦で、「我々はミサイルすべてが目標に到達したと確信しています」とマッケンジー中将は言いました。「すべての『トム』はいかなる問題も受けませんでした」。

 ダマスカス近くのバルザ施設は「もはや存在しません」とマッケンジー中将は言いました。「そこ(バルザ)には3つの建物と駐車場がありました」が「もはや、ありません」。

 「私は廃棄物(cripple)と分解(degrade)という言葉が正確だと思います」と彼は3つの目標への影響を説明するために言いました。

 詳細は述べませんでしたが、マッケンジー中将とホワイト報道官は、ミサイル攻撃は化学貯蔵施設に命中する爆発が民間人の犠牲を引き起こすプルーム(汚染源から立ち上る汚染物質)を生じる可能性を制限する方法で行われたと言いました。

 ホワイトとマッケンジーはどちらも、金曜日夜にミサイル攻撃は「一回限り」であり、ロシアが支援するバシャル・アル・アサド大統領(President Bashar al-Assad)が化学兵器を再び使用しない限りは繰り返さないと言ったジム・マティス国防長官(Defense Secretary Jim Mattis)と同じことを言いました。

 4月7日のダマスカス東部のドーマ(Douma)での疑いが持たれる化学兵器攻撃は少なくとも40人を殺し、500人以上を負傷させました。

 ホワイトはアメリカのシリアでの目標は、イスラム国を打倒し、国連が仲介する、450,000人を殺し、数百万人を難民にしたと見積もられる7年越しの内戦を解決することだと言いました。

 化学攻撃は第1次世界大戦以来、国際社会によって禁止された兵器の使用への道徳と人道的な根拠に対するアメリカからの対応を必要とした別の問題だったと、彼女は言いました。

 「我々の焦点はイスラム国を打倒することのままです。シリアの内戦に関与することではありません」とホワイトは言いました。


 B-1爆撃機の装備に関する詳しい説明は、他でも読めるので省略しました。

 今朝のニュース番組を見ていたら、この攻撃は、実は北朝鮮へを威嚇するためのものだと述べるコメンテーターがいました。そんな副次的な効果を狙っての攻撃ではありません。米軍はシリアに集中して作戦を立てたのであって、北朝鮮に効果があるとしても、それは「行き掛けの駄賃」みたいなものです。こういう意味のないコメントしかしない人をテレビで見かけるのは残念です。

 攻撃はすべてが成功したようです。巡航ミサイルや精密誘導爆弾は攻撃の成功率が高いことで知られていますが、全弾命中とは驚きです。ロシアから一定数が外れたとの報道がありますが、信じる必要はないでしょう。シリアが発表した不正確な情報を繰り返しているだけかも知れません。

 攻撃対象から空軍基地を外したので、民間人の犠牲はかなり減らせたはずです。化学兵器施設の職員が死ぬことに、国際的な同情は集まりません。そこを計算した上での目標選定です。もちろん、主目的は化学兵器を使えなくすることです。

 ロシアが主張していたように、ロシア軍に被害が出た場合は、攻撃の発進地も攻撃すると言っていましたが、そこは避けることで、ロシアとの関係悪化を避けることに成功しました。

 「プルーム」が発生しないようにしたとのことですが、実際にどうしたのかは不明です。巡航ミサイルにそんな機能があるとは知りません。その他のミサイルに仕掛けがあるのかどうか。

 軍事的には成功した攻撃ですが、これでシリア内戦が終わるわけではありません。終戦に向けた一歩になるかといえば、そうとも言えません。いまや内戦は複雑な構図となっていて、これらの空爆で状況が変わるわけではないからです。

 力任せで内戦を終わらせようとすれば、ロシアが戦いを一歩エスカレートさせ、全面戦争を暗示させることで、欧米諸国を思い止まらせようとします。ここで、そうしてしまうと、それは敗北を意味しますから、欧米諸国もさらにステップを踏むことになります。行き着く先は核戦争です。

 だから、ロシアが介入する前に行動すべきだと、当サイトでは何度も主張してきました。それができなかったのは、ジョージ・W・ブッシュがイラク侵攻時にやった、偽情報作戦が尾を引いているからです。また、同じことになるのではないかという懸念から、オバマ政権が動こうとした時、国際社会は賛成しませんでした。

 シリア内戦は長期化するしかなさそうです。もはや、短期で終わらせる手立ては尽きています。アサドが年老いて、気力がなくなれば、何か変化が起きるのかも知れません。

 

 


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