ロシアの新型核兵器は恐れるに足りず

2018.3.2


 military.comによれば、国防総省はロシアのウラジミール・プーチン大統領(President Vladimir Putin)の「無敵の新しい核兵器がアメリカの防衛を突破する」との木曜日の主張を否定しました。

 「我々は(プーチンによる)声明に驚きませんし、アメリカ国民は攻撃に対して我々は完全に準備していると安心すべきです、と国防総省の主席報道官、ダナ・ホワイト(Dana White)はブリーフィングで言いました。

 「我々はプーチンが核兵器の武器庫に加えたかもしれないものがなんであろうと、この国を守る準備ができています」と、国防総省で彼女は付け加えました。

 ウラジミール・プーチン大統領は木曜日に、開発中やすでに武器庫にある核兵器はアメリカとNATOのミサイル防衛を時代遅れにするだろうと豪語しました。

 射程無制限の低高度飛行のステルス巡航ミサイルと極超音速の弾道ミサイルを含めた新しい破滅兵器は実質的に破壊不能で、耐えられる防衛システムはないだろうと、プーチンは言いました。

 彼の言いなりの議会へに熱烈な演説で、プーチンはロシアが敵の潜水艦を排除するために高速の水中ドローンを開発しているところだとも言いました。

 プーチンは新兵器がアメリカとの軍拡競争でロシアを優位にして、ワシントンの対抗策を開発する試みを無意味にすると主張しました。

 「ロシアを封じ込める努力は失敗し、それに直面します」と彼は言いました。

 ホワイトハウスや国防総省から、先月のアメリカの核態勢評価の見直しに続くプーチンの主張に対するコメントはありませんでした。

 評価は新しい洋上発射型核巡航ミサイル(SLCM)と潜水艦発射型弾道ミサイル用の新しい戦術核弾頭の開発を求めました。

 水曜日に、米戦略軍指揮官のジョン・ヘイテン空軍大将(Gen. John Hyten)は、ロシアがアメリカへの実存的な脅威であるとみなしました。

 米軍協会によるミサイル防衛についての会議での演説で、ヘイテン大将は核態勢評価の中で求められたアメリカの核部隊の近代化はアメリカのミサイル防衛の改善を含むものの、「我々には依然として攻撃に利用できる穴がある」と言いました。

 一般教書演説の演説の中で、プーチンは新兵器に対する彼の主張は、核態勢評価の中での挑発だと彼が非難したものへの対抗を目的とすると言いました。

 「我々は新しい核態勢の一部に大きな懸念を持ちます。それは核兵器の使用の基準点を引き下げます」と彼は言いました。

 「閉じたドアの向こうで使うとする言葉がどんなに穏やかでも、我々は書かれたことを読むことができます。そして、これらの兵器は通常攻撃やサイバー上の脅威にも対応するために使えるといいます」と彼は付け加えました。

 プーチンは「これを述べることは私の義務です。ロシアやその同盟国に対するいかなる核兵器の使用も、小規模でも、中規模や他のどんな規模でも、我が国に対する核攻撃として扱われます。対応は即座であり、すべての関連する結果を伴います」と警告しました。

 「the Ploughshares Fund」の理事で武器コントロールの専門家、ジョセフ・サーインシオン(Joseph Cirincione)はツィッターで、「新しい軍拡競争へようこそ。これはうまく終わることはないでしょう」と言いました。

 サーインシオンは、プーチンが多弾頭大陸間弾道ミサイルが南極上空を行く図を示したと指摘しました。

 「なぜ南なんですか?。我々の対ミサイルレーダーと迎撃ミサイルは北にあります」と彼は言いました。

 プーチンはロシアは昨年、新しい巡航ミサイルの実験を行ったと主張しました。彼はミサイルは無制限の射程を与えるために核エンジンで動くと言いました。彼は巡航ミサイルは西側が無視してきたロシアの技術力の実例だと言いました。

 「われも我々の話を聞きませんでした」と彼は言いました。「すぐに話を聞いてください」。

 核態勢評価を概説する上で、ジム・マティス国防長官(Defense Secretary Jim Mattis)は、ロシアのような敵が新しい核兵器の開発によってアメリカは戦争でのそれらの使用の敷居を下げているという主張を予測しました。

 「いかなる場合も、このアプローチは核の敷居を下げません」とマティス国防長官は言いました。

 「むしろ、核兵器の限定的な使用ですら彼らが許容できるよりも高くつくと敵たちを納得させることで、事実、それは敷居を上げるのです」。


 断定するのは危険ですが、私はロシアがいうような新型の核兵器はその性能を期待できず、プーチンの発言は政治的な意図があってのことと思います。

 冷戦が終結した後、米ロが協調して世界秩序を維持するような構図は生まれず、結局のところ、ロシアはそれまでの付き合いがあった国へ武器を売ることで経済を維持する道を選びました。それが新しいことをするよりも、より簡単で確実だったからです。

 そこで、プーチンは「アメリカのすることが正義なのではない」という主張を繰り返すようになり、反アメリカ的な外交政策をとり、かつての仲間たちを鼓舞し、そこへ武器を売る戦略をとりました。それが現在のシリア情勢です。

 一方で、核兵器の分野でもアメリカに遅れを取っているようにみえると、この戦略構想が崩れるため、新しい兵器を開発し、それを宣伝するわけです。

 しかし、アメリカと直接対決する意図もないのは、ミサイルが南極を通る図を示したり、核エンジンを使う巡航ミサイルを口にしたりしている点で明らかです。

 本当にアメリカのミサイル防衛を突破する自信があれば、ミサイルは北極を経由するはずです。核エンジンは冷戦期にジェット機に搭載する計画があったはずですが、どうやっても放射能を撒き散らすので失敗に終わりました。領域外から発射するとしても、本当に小型の核エンジンが開発できるかも疑問です。

 こういう話をするのは、自国の核戦力の欠点を隠すためであり、この分野の多くが秘密に隠されているためです。嘘を言ってもバレないから、大きめに言うのです。

 

 


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