海兵隊いじめ事件で大隊指揮官に有罪判決

2018.3.14


 military.comによれば、ヨシュア・キスーン中佐(Lt. Col. Joshua Kissoon)は月曜日に特別軍事法廷で有罪を認め、イスラム教徒の訓練兵の自殺につながったいじめスキャンダルでの役割で有罪判決を受けました。

 元海兵隊新兵訓練大隊指揮官のキスーン中佐は職務怠慢、虚偽の公式陳述の作成、公判前手続きの合意の一環として将校にあるまじき行為を行ったことで有罪を認めました。

 手続きを統括するチャールズ・パーネル海軍大佐(Capt. Charles Purnell)はキスーン中佐に5ヶ月間にわたり月給1000ドルの減給と戒告文を与える有罪判決を下しました。

 キスーン中佐は2016年いじめスキャンダルの中で解任されました。昨年、第32条の調査の聴聞の間に、目撃者は彼が訓練教官ジョセフ・フェリクス2等曹長(Gunnery Sgt. Joseph Felix)をいじめが行われていたとの疑いへの調査の間に、訓練兵を監督する役割から外さなかったと証言しました。

 証言によると、キスーン中佐は彼がフェリクス2等曹長が未解決の不正行為の調査対象だったことを知っていたのを認めつつも、連隊指揮官の承認を受けることなく、この教官を先任教官の地位へ配置したことを認め、不注意による職務怠慢で有罪を認めました。

 彼はもう一人の訓練教官に対する訓練兵虐待の告発を連隊指揮官に通知しなかったことで故意の職務怠慢も認めました。告発は教官が「彼が腕立て伏せの姿勢の間に足を訓練兵の背中へ乗せた」と主張したと、キスーン中佐は証言しました。

 彼は故意に申し立ての通知を受けて24時間以内に事件を予備調査を開催しなかったことを認めました。

 キスーン中佐は監察官の調査の間に虚偽の公式の陳述を行ったことで有罪を認めました。彼は部下の将校に、ある海兵隊将校が命令による状況調査でコメントを出し、規律の手段として非懲罰的な書簡を使うキスーン中佐の考え方を批判したと言ったと述べたことを認めました。

 しかし、キスーン中佐はそれからこれらのコメントを述べたかと尋ねられたとき、監察官の調査官に嘘をついたと、彼は法廷で認めました。

 キスーン中佐は、調査について誰とも話すたと指示されたあとで、上官の将校に監察官の調査官への彼の陳述のコピーを提供したことで、将校にあるまじき行為の訴えで有罪を認めました。

 キスーン中佐はキスーンが指揮する第3新兵訓練大隊の中で広範ないじめの申し立ての中で、パリスアイランド(Parris Island)で解任された3人の上級指揮官の1人です。最悪の告発はイスラム教徒の訓練兵を、夜間の尋問スタイルのいじめ儀式の中で工業用乾燥機に投げ込んだとされるフェリクス2等曹長が関係しました。

 フェリクス2等曹長はのちに、訓練教官の虐待が2016年3月にもう1人のイスラム教徒の訓練兵、20歳のラヒール・シディクィ(Raheel Siddiqui)の自殺のきっかけを与えたかも知れないことを見出した海兵隊の調査の中に関与しました。

 「私は私が残念な間違いをしたことを知っています」とキスーン中佐は軍事法廷で言いました。「私は自分自身にとても失望しています。私は責任があるとされなければなりません」。

 フェリクス2等曹長は刑務所に10年間収監となり、いじめ事件で不名誉除隊を受けました。

 キスーン中佐が受けた判決は、公判前の合意の一環として検察側が勧告した最大の処罰よりも大きく軽いものでした。キスーン中佐は最大の処罰で12ヶ月間給与の3分の2の減給、2ヶ月間の制限、戒告状のようなさらなる管理上の処分に直面しました。

 キスーン中佐の給与喪失は6ヶ月間は始まらないと、パーネル大佐は言いました。

 公判前の合意の一環として、キスーン中佐は海兵隊を退役し、彼は海軍長官が彼の退役の等級を決定する前に審理委員会に対する権利を放棄しました。

 第2新兵訓練大隊指揮官のエドワード・ダニエルソン中佐(Lt. Col. Edward Danielson)は電話で法廷に、キスーン中佐は大隊の中で、過去70年間にわたりほとんど変わらなかった文化と戦っていたと述べました。

 キスーン中佐が第3大隊の指揮を執ったとき、それは理由があって「Thumpin Third」として知られていたとダニエルソン中佐は言い、訓練教官が「規則に奔放でルーズ」に振る舞ったという評判をとったと説明しました。

 「彼は一晩で数十年間を変えることはできないと認めました」と、弁護側の証人を務めたダニエルソン中佐は言いました。「彼は対処していた文化を理解しました」。

 ダニエルソン中佐は、いじめを禁じる司令部のメッセージにも関わらず、しばしば「それはやらなければならなかったからと彼らが言うものだが、本当に事をどうやるのかは判断させろ」という理解に基づいて行われた訓練教官の風土があったと言いました。

 訓練教官に好感を持つ大隊の中隊指揮官である若い将校は、しばしば訓練教官をいじめや虐待で報告するのを嫌うと、彼は言いました。

 「着任すると、すでに配置されていた4人の中隊指揮官がいます」とダニエルソン中佐は言いました。

 「今日はキスーン中佐の責任についてです」と、検察官のスリドハ・カザ退役海兵中佐(Marine Reserve Lt. Col. Sridhar Kaza)は言いました。彼はキスーン中佐を批判から指揮と軍歴を守るために新兵訓練に甘い手法を採った指揮官として描写しました。

 量刑段階の間、カザ中佐はキスーン中佐がフェリクス2等曹長に対する申し立ての調査書を見ていて、キスーン中佐が彼の行動を偏見と憎しみに満ちていたことを知っていたと主張しました。

 キスーン中佐の弁護士、コルビー・ボケイ(Colby Vokey)は異議を申し立て、フェリクス2等曹長に対する事件はキスーン中佐の事件に関連しないと主張しましたが、効果はありませんでした。

 カザ中佐はキスーン中佐が調査が彼の行動で勧告を受けているフェリクス2等早朝だけで終わると考えていたので、フィリクス2等曹長をについての決定をしたとも主張しました。

 「それはなさる必要があったことをすることで、連隊まであがっていたことに制約をつけました」とカザ中佐は言いました。

 ボケイ弁護士はキスーン中佐が第3大隊の指揮をとったとき、彼は「Thumpin Third」の評価を変える任務を与えられたと主張しました。

 「彼は訓練兵の虐待と戦いたかったのです。そして、彼はこれから多くの反動を得ました」とボケイ弁護士は言いました。

 キスーン中佐の判決を出すとすぐ、パーネル大佐はこの事件におけるキスーンの行動を越えた「リーダーシップの無数の欠如」があったことは彼に明白だと言いました。

 ボケイ弁護士は事件の結果に満足だと言いました。

 「私は正しい結果だと思いますし、キスーン中佐は彼の指揮下で起きたことに責任をとったと思います」と彼は言いました。


 文中の「Thumpin Third」の部分は意味が分からないので、そのまま表記しました。

 この事件は何度も紹介してきましたので、過去の記事を検索してもらえれば内容が分かります。事件で起訴された最高位の将校の裁判が決着しました。

 しかし、この記事を読むと、映画『ア・フュー・グッドメン』を思い出しますね。

 海兵隊でしごきによって兵士が死亡し、しごきを実行した兵士に上官の命令があったかが問われる裁判を描いた作品です。

 どうやら、海兵隊には未だにしごきの伝統があるようです。その点では米陸軍の方がクリーンなのかも知れません。

 フェリクス2等曹長の裁判中、弁護士が食堂で行われたいじめに関して、人がよく通る場所でいじめが行えるはずがないと、事態を軽視する発言をしています。この種の発言はいくつか見られました。

 これは海兵隊では少々のしごきは常識であって、海兵隊員を精強に鍛えるために必要だと考えられていることを示します。

 大がかりな戦争にならないと出番がない陸軍と違い、海兵隊は真っ先に敵地に投入されるのだから、鍛え上げられる必要がある。そのためには上官の不合理な命令をも、疑問を持たずに実行するような隊員にしなければならないという哲学ですね。

 これはあまりにも時代遅れです。

 その一方で、フィリクス2等曹長ら、訓練教官たちは基地内の駐車場で飲酒を繰り返すという規律違反をしていたのです。海兵隊は一体どういう組織なのかと考えざるを得ません。下士卒は誰もが抑圧されているように見えます。しかし、先日は沖縄の部隊で将校が酔っ払って、ほぼ全裸で発見されるという事件が起こりました。下士卒だけでなく、将校も抑圧されていて、それが暴発することがあると考えなければなりません。

 つまり、こういう事件はアメリカ本土のことと「対岸の火事」として受け止めてはならないのです。こういう訓練を受けた海兵隊員が日本に駐留しています。日本で起きる事件の原点が、パリスアイランドの新兵訓練基地にあるのかもしれないのです。ここで起きる事件に我々が注目しなければならない理由は、ここにあります。

 それでも、事件が表沙汰になったら、指揮官は自ら職を辞する伝統は守られているようです。自衛隊ではこういうことは聞きません。

 

 


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