国境派遣部隊が大幅に増強へ

2018.10.30


 military.comによれば、中央アメリカから北を目指す政治的亡命者の保護を求める移民のキャラバンを押し戻す、ドナルド・トランプ大統領(President Donald Trump)の努力は、南部国境の5,200人以上の現役兵によって強化されると、軍と税関当局は月曜日に言いました。

 ケンタッキー州、フォート・ノックス(Fort Knox)とフォート・キャンベル(Fort Campbell)から数百人の兵士はすでにテキサス南部へ移動したと、米北部司令部指揮官のテレンス・J・オーショネシー空軍大将(Gen. Terrence J. O'Shaughnessy)は言いました。

 「今週末までに、我々は5,200人を超える兵士を南西部国境へ派遣するでしょう」と彼は言いました。

 オーショネシー大将は、計画は追加の兵士をまずテキサス州へ、それからアリゾナ州とカリフォルニア州へ米税関国境警備局の支援で派遣することだと言いました。

 兵士は武装します。彼らは実際には武装しますが、彼らの任務は法執行において税関国境警備局を支援することになるでしょう、と彼は言いました。

 計画が完全に実行されたとしても、追加の5,200人の兵士はすでに配置されている2,000人の州兵に参加し、国境に合計7,200人となり、シリアの米兵2,000人とイラクの4,500人を大きく上回ります。

 追加の兵士は税関局それ自体の国境の安全を確保する強化された努力を増強するでしょうと、税関国境警備局長官のケビン・マクアリーナン(Kevin McAleenan)はいいました。

 「みなさんは国に帰り、適切なビザを申請してください」と彼はキャラバンの人たちに助言しました。「みなさんはアメリカに入ることは許されません」。

 ワシントン特別区のロナルド・レーガン・ビルでのマクアリーナン長官との合同記者会見で、オーショネシー大将は、フォート・キャンベル(Forts Campbell)とノックス(Knox)に言及したのは別として、兵士のすべてがどこから来るのかは述べませんでしたが、派遣は少なくとも12月半ばまでは続くと予想されるといいました。

 彼は「忠実な愛国者作戦(Operation Faithful Patriot)」と名づけられた任務の現役部隊にかかる予想されると費用の見積もりは出しませんでした。州兵は過去の任務、支援と監視の役割に限定した「管理者の支援作戦(Operation Guardian Support)」の下で送られます。

 今現在、現役兵の任務がどのように州軍のそれと違うのかは明らかではありません。4月に州軍兵が国境に派遣されたとき、国防総省は彼らが「航空、工兵、監視、通信、車両整備と補給支援」を行うと言いました。

 報道記者によれば、ジム・マティス国防長官(Defense Secretary Jim Mattis)は日曜日、プラハへの移動に同行した記者に、国境に送られるであろう追加の兵士のための交戦規定はまだ結論が出ていないと言いました。

 「兵士が従う規定は、私はこの時点では持っていません」とマティス長官は言いました。

 オーショネシー大将は、現役兵は議会の承認なく法執行に軍の隊員を用いることを明白に禁じた連邦法の「民警団(posse comitatus)」の規則に従うと言いました。

 オーショネシー大将は追加の兵士は「陸軍工兵隊(the Army Corps of Engineers)」が含まれると言いました。この部隊は国境の越境点を障害物で固める活動を支援します。

 彼は、兵士は彼らとともに約241kmの蛇腹形鉄条網を運ぶとも言いました。鉄条網は脆弱とかんがえられる越境点に張られます。

 「我々は憲兵隊を参加させています。我々は戦略輸送を参加させています」とオーショネシー大将は言いました。

 彼は派遣部隊は3個戦闘工兵大隊と3個中型輸送ヘリコプター中隊も含むと付け加えました。

 「我々がいま座っているとき、違法な越境を止めるために彼らがいる必要な場所どこへでも(税関国境警備局と)ともに派遣する準備をした3機のC-130と1機のC-17を持っているのです」と彼は言いました。

 人数約3,500人とかんがえられる先頭のキャラバンのグループは現在、まだ国境から数百マイルにあり、小さくなると予想されました。マクアリーナン長官は多くはメキシコの避難所と保護施設の提供を受け入れたと言いました。

 しかしマクアリーナン長官は、移民数千人の第2グループがメキシコとグアテマラ国境で形成されていて、先頭のキャラバンに加わろうとしていると言いました。

 「我々は非常に大きなグループが到着すよ可能性の準備をしなければなりません」とマクアリーナン長官は言いました。

 トランプ大統領は、11月6日の中間選挙につながる彼の集会での継続するテーマである、キャラバンと数千人の移民が国境を越えて押し寄せる脅威に進展をなしました。

 最新の兵士の派遣が発表される数時間前、トランプ大統領は「多くのギャングのメンバーと悪人たちが南部国境に向かうキャラバンに混じっている。どいか引き返してくれ。君たちは法的な手続きをしない限りはアメリカに入ることを許されない。これは我が国に対する侵略であり、軍隊が君たちを待っている!」とツイートしました。

 先週、ABCニュースのインタビューで、マイク・ペンス副大統領(Vice President Mike Pence)は、トランプ大統領が南部国境を完全に閉鎖することを考えているかどうかを尋ねられたとき、直接答えませんでした。

 「我々が行う必要があるのは国境の安全を確保することです」とペンス副大統領は言いました。「大統領はそれをするステップを踏むでしょう。しかし、我々は法律を改善する必要もあります」。


 800人程度の派遣のはずが、一夜にして大幅に人数が増えてしまいました。

 追加の派遣人数を見ると、これは単なる後方支援とは思えません。強制力を行使する部隊が含まれている可能性は大いにあります。

 それを打ち消すために、陸軍工兵隊が参加すると表明したようにもみえます。陸軍工兵隊は戦闘部隊ではなく、民間人を含めた土木建設組織です。

 しかし、戦闘部隊だとすると「民警団法」に違反する可能性があります。記事中の「民警団の規則」とは、この「民警団法」のことです。1878年にアメリカで成立した連邦法で、議会の承認なしに国内の治安維持に陸軍、空軍、州兵を動員することを禁じています。つまり、南部国境に押し寄せた移民たちに実力を行使することは連邦法が許しません。

 そんなことにはおかまいなしのトランプ大統領は、連邦軍が実力で移民を押しとどめると信じているようです。彼は兵士が国境に機関銃を並べて、押し寄せる移民を撃ち殺すのを望んでいるのでしょう。

 米軍指導層は連邦法については非常に厳格です。国際法においても、違反行為には厳しく対処します。在日米軍の問題のために、日本人にはピンとこないかもしれませんが、この点では自衛隊よりも遥かに厳格なのです。

 だから、軍上層部は事態が悪化することを心配しているでしょう。中間選挙の前に移民たちが大挙して国境を越えようとして、現場の部隊が実力を行使しなくてはいけなくなると、米軍は国内で批判にさらされます。

 一方、実力を行使せずに大挙して移民たちが国内に入ると、選挙を目前にして評判が落ちるトランプ大統領の逆鱗に触れます。大統領執務室に呼び出されて、大統領から叱責されることになります。

 どちらも嫌なのが米軍の本音です。

 トランプ大統領は米軍に禁じられている「拷問」をイスラム武装勢力に使えと、大統領選挙の最中に主張しました。ダンフォード統合参謀本部議長は、米軍は拷問をしないと議会で明言し、大統領とは対立しています。

 現場レベルでは、メキシコ政府と交渉して、キャラバンの人数が減るような方策をやっているかもしれません。少なくとも11月6日までは越境を思い止まるよう、キャラバンに情報を流しているかもしれません。この辺はこっそり行われるので、我々には分からないでしょう。

 大量の派遣兵士はトランプ大統領を満足させるための材料作りで、移民に対して武力が行使されないことを祈るしかありません。

 すべてはキャラバンの規模にかかっています。大規模なキャラバンが無理に越境しようとしたら、最悪のことが起こります。キャラバンの側で取材した記事に注目する必要があります。

 


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