アメリカはサイバー攻撃で核報復せず

2018.1.31


 military.comによれば、来るべき核配備評価(Nuclear Posture Review)の言葉がどれほど曖昧かもしれなくても、アメリカのインフラに対するサイバー攻撃は敵対者に対する核攻撃を正当化しないと、統合参謀本部副議長は火曜日に言いました。

 「サイバー攻撃を根拠に我々が核攻撃に向かうという考え方は、実際、公文書で裏付けられません」とポール・セルバ空軍大将(Air Force Gen. Paul Selva)はワシントン特別区での円卓会議の間に記者に言いました。

 セルバ大将は、「機密扱いではない」と「公的用途のみ」と分類されたNPR草案の書類を公表した人物は、それが決定前で、最高指導部の最終承認を受けていないことから、犯罪を犯しました。

 「The Huffington Post」は最初にコピーを手に入れて、1月11日に64ページの批評を掲載しました。

 「公文書がなしたのは、核兵器の使用について、既存の生命を再び述べるということです」とセルバ大将は言いました。

 2月2日に公表されるよう暫定的に決められた公文書を言い換え、彼は「我々は国益、住民
、インフラが重大な結果を伴う攻撃を受けたときに核兵器を使う権利を保有します」と言いました。

 この基本的な言い回しは数十年間NPRに存在したと、彼は言いました。

 セルバ大将は「それはあまりに曖昧だという見方があって、我々が言い続けたのは、それは我々の国民、インフラ、我々の同盟とパートナーや指揮系統システムと我々の攻撃の探知に重要な警告の徴候に対する非核戦略攻撃を含むが、限定しないということです」と明言しました。

 「我々はサイバー攻撃とは決して言っていません」と彼は言い、「サイバー攻撃」という言葉を評価全体で10回と少し用いられると付け加えました。

 サイバー攻撃に対してアメリカが低威力の核兵器を使うことを許す言い回しを心配する批判者と核専門家に応えて、セルバ大将は「それはまったく基本的に真実ではありません」と言いました。
 
 彼は、NPRは70年代に遡る核抑止に関する国防総省の考えに大半は一致していると強調し、(核の)トライアド(戦略爆撃機、大陸間弾道弾、潜水艦発射弾道弾の三つから成る戦略ミサイル攻撃力)とその周辺の手順に言及しました。

 しかし、「背景は重要です」とセルバ大将は言いました。「攻撃が戦略的結果を持つなら、大勢の人たちを殺すなら、我々の核指揮系統と表示・警報システムを中断させるなら……これらはすべて仮定ですが……我々は対応する権利を持ちます。それは正確には、2010年に(NPRで)我々が言ったものです。我々がやったことのすべては(明確さのために)一つの文を付け加えることです」

低威力核兵器

 副議長が自ら支持している「ミニ・ニューク」と呼ばれるさらに低威力核兵器を製造するのを促進することを取り囲む最近のニュースの中で、セルバ大将はこのコンセプトはアメリカにとって目新しくないと言いました。

 B61核重力爆弾と巡航ミサイル用に設計されたW80弾頭数十年間リストに載っています。

 「低威力兵器を持つことは、それ自体は、核兵器の使用の敷居を下げません」とセルバ大将は言いました。

 大将は、軍が提供しなければならない多彩なオプションは敵対者に対する抑止だけでなく、類似する技術を心に抱くさらなる敵対者を特定するのも支援すると言いました。

 「だから、(我々は)我々の戦いに入る敷居を下げませんが、我々の潜在的な敵対者、それらの主要なロシア人の敷居はあげます。彼らはたくさんの低威力核兵器を持ちます。それは本当に宣言的な政策の鍵です」。

 NPRの公表に続き、セルバ大将は、アメリカのミサイル防衛の能力を強化する戦略で、2010年に更新された弾道ミサイル防衛評価(the Ballistic Missile Defense Review)も数週間後に公表されると言いました。


 アメリカでも低威力の核攻撃なら北朝鮮を攻撃するために使えるという意見があるようです。

 日本でもアメリカがいつ北朝鮮を攻撃するかという議論が賑やかですから、それと似たようなものなのでしょう。

 しかし、この種の「知恵らしきもの」は現実の戦略には何の影響も与えないでしょう。実に小心な心から出た細工事としか思えません。

 この種の戦略論もどきには注意を払う必要があります。他の理由で語られる場合が多いからです。自衛隊は熊本地震の際に米軍のオスプレイを空輸に使い、海自のヘリコプター空母にも着艦させました。この件で自前のヘリコプターの使用が少ないとの批判も受けました。被災者が出ている最中に、オスプレイ導入や米軍との共同作戦の実績を作ろうと考える人が日本政府の中にいるようです。平和な日本では、こういうことを考える人が重宝されるのです。

 この記事は、そうした偽物の戦略論に警鐘を発していて、好感が持てます。

 サイバー攻撃で核報復をしないのは当たり前の話なので、特に論評しません。

 

 

 


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