北朝鮮に対してアメリカは核攻撃をためらうか?

2018.1.29


 military.comによれば、ジム・マティス国防長官(Defense Secretary Jim Mattis)は金曜日、アメリカと韓国は北朝鮮からの攻撃に対応するために完全に準備しながらも、通常戦力や核戦力にかかわらず第一撃の可能性は軽視していると言いました。

 「我々は今夜、韓国と共に肩を並べて戦えます」とマティス長官はしながらも、「攻撃された場合」のみだと言いました。

 水曜日、「the Business Insider」の報道は、最近のB-2ステルス爆撃機のグアムへの配備と武器備蓄の格上げは、核兵器と大陸間弾道ミサイル基地を破壊するための、北朝鮮に対する潜在的な戦術核攻撃の準備を窺わせると書きました。

 「それは完全な誤りです」と「the Nuclear Information Project for the Federation of American Scientist」の理事、ハンス・クリステンセン(Hans Kristensen)は言いました。「それが起きている兆しはありません」。

 公表された報道は、 B61核重力爆弾の核威力を下げる改良に言及しましたが、この兵器はまだ配置されていません。

 アメリカは通常戦力から核戦力まで軍事オプションの幅を持っているとマティス長官は言いましたが、「それらは外交官が権限で話せるようにするために存在し、試みられれば韓国への攻撃は厳しく撃退されるため、それらは彼らが耳を傾けなければならないことです」。

 肝心なのは「御存知のように、これは未だに外交官の手中にあるということです」とマティス長官は、韓国の宋永武国防部長官(Minister of Defense Song Young-moo)と会っていたハワイに向かう機上で記者に言いました。

 アメリカとその他の核装備国は戦略を絶えず評価し、アメリカは第一撃をこれまでに排除しませんでした。

 しかし、アメリカが北朝鮮に対する戦術核攻撃を準備しているという提示は無責任だと、クリステンセンは言いました。「攻撃計画、不測事態の計画は常にあります」と彼は言いました。

任務の明確化

 太平洋司令部当局も、最近の展開におけるB-2の役割を明確にしました。

 「B-2爆撃機「スピリット」は米戦略司令部の爆撃機確実抑止任務(爆撃機乗員が準備の高い状態と乗員の熟練を維持するのを確実にし、(太平洋司令部)主導の航空作戦を支援するための定期的なローテーション)を支援するために展開されました」と太平洋空軍のロリ・ホッジ中佐(Lt. Col. Lori Hodge)は金曜日に声明でMilitary.comへ言いました。

 ホッジ中佐は司令部は作戦の安全上の理由から作戦についてコメントしないものの、「数週間と期間が比較的短いので、爆撃機の保証・抑止展開と特徴づけるのが公正です」と言いました。

 「2016年8月に3種すべての爆撃機を最近受け入れたことで、米空軍の爆撃機の3つすべてを受け入れて運用する第36航空団の能力は、太平洋戦域での我が国の主要な戦力投射プラットフォームの一つとしてのグアム、アンダーソン空軍基地の役割を示します」と彼女は最新で、同時のB-52HとB-1Bのこの地域への配備に言及しました。

 今月上旬、長距離爆撃機B-52は、太平洋での18ヶ月間の任務で、B-1Bに置き換えられました。

 ホッジ中佐は転換はいま正式に完了していると言いました。

核兵器は核兵器

 「the Business Insider」の報道が議論を呼んだとき、ロナルド・レーガン大統領(President Ronald Reagan)の下で国務長官だったジョージ・シュルツ(George Shultz)は上院軍事委員会に木曜日の証言で低威力の核兵器の配備を警告しました。

 「核兵器は核兵器なのです」と彼は言いました。

 「小さいのを使ってみて、それからさらに大きいのを使います。私は核兵器は核兵器だと考えますし、我々はそこに線引きをする必要があります」。

 シュルツは、彼は北朝鮮と膠着状態になることを恐れ、ロシアが武器を近代化し、第一撃のオプションがトランプ政権に対してさらに実行可能になることを懸念すると言いました。

 「レーガン大統領が何度も言ったとおり、これらの兵器は不道徳です」と、彼は低威力の核兵器はアメリカを少しも安全にしないと強調する中で言いました。

 「あなたの心がその考えに進めば、核兵器は使えるようになります。そして、それから、大型の核兵器の交戦は世界を一掃しかねないので、我々は本当にトラブルに陥ります」とシュルツは言いました。

 火曜日、「the American Enterprise Institute」で、CIA長官のマイク・ポンペロ(Mike Pompeo)は北朝鮮に関して、「大統領は外交手段を通じて解決を提供したがっています」と言いました。

 彼は「それが可能でないと結論すること。我々が彼の定まった意図を成し遂げられるオプションの範囲を大統領に示すことを、等しく、同時に、確実にしています」と付け加えました。


 日本でも北朝鮮への攻撃がいつ始まるかという話は絶え間なく報じられ、先の衆議院選挙では攻撃が迫っているから、いま選挙をやるのだと、衆議院解散を正当化するためにも使われました。

 攻撃の可能性が高いのは7月だという元自衛隊幹部が現れたり、私が最近聞いたところでは防衛大学の某教授が、日本は北朝鮮になめられているから攻撃される可能性があると言ったとかいう話を聞かされました。

 グアムに核爆弾を透過できる爆撃機が来たとなれば、日本でも大騒ぎする人達がいることでしょう。

 しかし、クリステンセン氏が言うとおり、この手の戦争の予測は対して役に立ちませんし、現実的ではありません。

 米軍は北朝鮮を攻撃する計画を練り、そのために必要な訓練もしていますが、だから北朝鮮を攻撃するつもりなのではありません。やっている訓練や準備は本物です。しかし、それは不測の事態に備えるためであって、直ちに攻撃を意図しているとはいえません。

 特に、先制攻撃は国際法上の問題があり、攻撃を受けていないのに相手に致命的な打撃を与えるような攻撃はできないというのが常識です。

 軍事的手段はあくまで平和の達成のために用いられるものであって、それは少部族間の戦争と違い、近代国家の戦争は然るべき状況にならないと戦争は起こりません。

 北朝鮮が自滅する可能性もあります。そうなれば、あえて犠牲が出る攻撃はする必要なく、目的を達成できるかもしれません。実際、アメリカが一番狙っているのは、この結末だと考えられます。

 

 

 


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