石川県知事の暴言は軍事的無知が原因

2017.6.22


 朝日新聞デジタルによれば、石川県の谷本正憲知事(72)は北朝鮮のミサイルをめぐる「兵糧攻めにして、北朝鮮国民を餓死させなければいけない」との自らの発言について22日、撤回した。

 記者団の取材に対し、谷本知事は「撤回しますよ。過激な発言といえば、それは反省しなければいかんと思う。人命は尊重されなければいかんから」と述べた。


 これもまた、近頃流行りの、過激な軍事敵発言をすれば受けるという心理から来る悪習の産物です。

 ジュネーブ条約第一議定書第五十四条を谷本知事は知らなかったのでしょう。兵糧攻めは単に非人道的だというだけでなく、国際法で禁じられているのです。下に条文を示します。

第五十四条 文民たる住民の生存に不可欠な物の保護

1 戦闘の方法として文民を飢餓の状態に置くことは、禁止する。
2 食糧、食糧生産のための農業地域、作物、家畜、飲料水の施設及び供給設備、かんがい設備等文民たる住民の生存に不可欠な物をこれらが生命を維持する手段としての価値を有するが故に文民たる住民又は敵対する紛争当事者に与えないという特定の目的のため、これらの物を攻撃し、破壊し、移動させ又は利用することができないようにすることは、文民を飢餓の状態に置き又は退去させるという動機によるかその他の動機によるかを問わず、禁止する。
3 2に規定する禁止は、2に規定する物が次の手段として敵対する紛争当事者によって利用される場合には、適用しない。
(a)専ら当該敵対する紛争当事者の軍隊の構成員の生命を維持する手段
(b)生命を維持する手段でないときであっても軍事行動を直接支援する手段。ただし、いかなる場合においても、2に規定する物に対し、文民たる住民の食糧又は水を十分でない状態とし、その結果当該文民たる住民を飢餓の状態に置き又はその移動を余儀なくさせることが予測される措置をとってはならない。
4 2に規定する物は、復仇の対象としてはならない。
5 いずれの紛争当事者にとっても侵入から自国の領域を防衛する重大な必要があることにかんがみ、紛争当事者は、絶対的な軍事上の必要によって要求される場合には、自国の支配の下にある領域において2に規定する禁止から免れることができる。

 軍事的な問題について述べるとき、一般人ならともかくも、責任ある立場にある人は、必要な知識を持った上で発言してほしいものです。この件については、石川県庁総務部秘書課に、知事はジュネーブ条約を通読するよう意見を送っておくことにします。

 


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.