先日の失敗したミサイル試験の分析

2017.4.5


 38north.orgが先日、北朝鮮が打ち上げに失敗したとみられるミサイル試験について報じました。今朝、北朝鮮は同型のミサイルを再び試験したようですが、短距離しか飛ばなかったようです。

 韓国とアメリカの情報源による報告は3月22日午前7:00(現地時刻)は、北朝鮮が弾道ミサイル発射試験に失敗したことを示します。

 これらの報告は「今朝、北朝鮮は元山空軍基地(the Wonsan Air Base)からミサイル1発を発射したものの、失敗したものと推定される。そしてミサイルは「打ち上げ数秒後に爆発したらしい」といいました。

 ミサイルの種類は公表されていませんが、(かつては元山空軍基地として知られる)カルマ国際空港(Kalma International Airport・kmzファイルはこちら)に隣接するカルマ弾道ミサイル発射基地(the Kalma Ballistic Missile Launch Site・kmzファイルはこちら)は、北朝鮮が2016年にムスダン中距離弾道ミサイル(Hwasong-10・KN-07)の複数の試験を行った場所です。

 この失敗して試験の報告は出るのがより遅く、通常よりも曖昧で、引き続いて提供される追加情報がありませんでした。

 試みられた試験の日からこの地域の商用衛星写真はありませんが、3月28日の写真は、カルマ弾道ミサイル発射基地につながる第二滑走路上に大きな直径110メートルの不規則な円形の爆発証拠の傷を示します。

 我々は確認できないものの、3月19日の写真には現れなかったことから、それはこの爆発傷が発表されたミサイル発射失敗を示すという高い可能性があります。

 破滅的な失敗を被った時、ミサイルは近くの組立工場へ運ばれ(それから海岸の発射位置へ)、打ち上げのために立ち上げられたとみられます。

 この評価の背後の主要な推測は以下を含みます。

  • カルマは国際空港ですが、過去2年間に唯一の観察された活動は、ミグ21とミグ19戦闘機の混合編隊一つの飛行活動でした。これらの飛行活動はほとんど常に第1滑走路から行われ、第2滑走路からではありませんでした。
  • もし航空機が離着陸の間に爆発したのなら、爆発の傷は形が長方形になり、通常移動する方向へ徐々に消えて行くでしょう。
  • もし爆発が燃料トラックによって生じたのなら、爆発の傷は一般的に長方形で、車両が移動する経路へ直角に激しく引き延ばされ、黒いまだらの集合になります。
  • 発射のために移動したり、持ち上げられた弾道ミサイルの爆発は、3月28日の写真に見られる爆発傷と似た、大きく不規則な円形のパターンになる傾向があります。
  • 観察された爆発傷は、過去の試験でムスダン中距離弾道ミサイルと輸送直立機(transporter-erector-launchers: TELs)が組み立てられるのに使われた建物から400メートル足らずで、24×17メートルのコンクリート舗装された発射場2カ所から650メートルです。

 現場上や周辺に破片の非常に小さな証拠しかなく、爆発の直後に大がかりな清掃活動が行われたことを示します。組立工場では大きな活動が見られない一方で、装備品や補給品の小さなグループが3月28日に、海岸の打ち上げ位置にみられます。

  確認されないものの、ムスダンの試験のためにこの地域が過去に使われたことは、組立工場と発射場近くの大きな円形の爆発傷と共に、この失敗した試験がさらなるムスダンの開発のためのものだったことを示します。

(なお、記事には以下の写真が添付されています。ドラッグすると試験の前後の写真へ切り替わりますので、確認してみてください)

Figure 1. The Kalma International Airport in the days before and after the reported failed missile test.
Figure 2. Close-up of the explosion scar.
Figure 3. The processing building where Musudan and associated TELs have been prepped for previous tests.
Figure 4. The launch positions used for previous Musudan tests.
Figure 5. Little debris left at the launch positions, only some equipment or supplies.


 以上は全文の日本語訳です。

 なかなか詳細、慎重な分析です。燃料トラックは普通、滑走路には入れないでしょうが、その可能性まで検討しています。

 すでに打ち上げに成功しているムスダンが3月22日と今朝、二回連続して失敗したと考えられます。何かの改良を行ったものの、不具合があって2回失敗したのだと想像します。

 興味深いのはFigure 1の写真です。ムスダンは東へ向けて発射したはずなのに、発射場の西側に爆発傷がみられます。北東に向かうはずが、南西に落ちており、向かうべき方向と反対側であることから、発射直後にバランスを崩して墜落した可能性があります。

 原因は幾通りも想定できますが、ムスダンに何か大きな設計変更があったものと思われます。

 問題点を克服するために、次の実験まではかなりの時間が必要でしょう。しかし、ロケットの開発はこういう試行錯誤の繰り返し、北朝鮮はいつか問題を解決して打ち上げに成功するでしょう。

 防衛省はこの発射失敗を探知できなかったと思われます。日本の探知装置がある位置からは、高度が低すぎてどうやっても探知できません。そのせいか、防衛省は何の発表もしていません。

※稲田防衛大臣が3月中に1回しか記者会見を行っていないと書きましたが、誤りであることが分かったので、その部分は削除しました。

 


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