米空母派遣が意味するものは何か?

2017.4.12


 military.comが空母打撃群の西太平洋派遣について書いています。長い記事なので、その中から注目すべき部分をいくつか選んで紹介します。

 もし北朝鮮が弾道ミサイルや核実験を実行し、アメリカが応えて何もしなければ、アメリカの抑止力は衰えたように見えるでしょう。

 まずは、これがとても重要な前提です。アメリカは何か行動を行わなければならないのです。効果がどうであれです。

 ワシントンの最終的な懸念は、核弾頭を大陸間ミサイルに取り付ける北朝鮮の開発能力です。それは続く数年間でマスターするでしょう。

 この記事では弾道ミサイルに搭載できる小型核弾頭はまだ完成しておらず、あと数年かかると述べています。しかし、北朝鮮はすでに完成していると宣言しており、実際のところを知る者はいないでしょう。他の国の開発実績などから類推しているだけでしょう。

 核爆弾の兵器化を止める確実な手段はアメリカにもないと思われます。北朝鮮は過去から大量の化学兵器を保持していることが知られていて、北朝鮮に手を出すと、それを大量に韓国に撃ち込むといわれてきました。その上、現在は弾道ミサイルがあります。核弾頭を完成させたかどうかは分かりませんが、通常弾頭や化学兵器だけでも結構な被害が出ます。そして、弾道ミサイルは日本に届く能力があります。

 こういう状況にあって、公共の核シェルターを造ろうとしない日本政府には失望します。日本政府には国民を守る気がないのです。北朝鮮政府は国民を守るつもりで核兵器を開発しているのにです。

 火曜日に国防総省で、ジム・マティス国防長官(Defense Secretary Jim Mattis)は、カール・ビンソンの派遣は「賢明だ」と言いました。

 そして、駐韓米軍指揮官ビンセント・ブルックス陸軍大将(Army Gen. Vincent Brooks)は、今月、議会公聴会のためにワシントンに来ないと決めたと、彼のオフィスは火曜日にいい、彼が彼の指揮下で潜在的な危機状況のためにいなければならないことを示しました。

 米国防当局者は、それは軍事行動が差し迫っていることを意味しないと言いました。

 空母派遣が賢明かどうかは分かりません。核実験を止めさせることはできませんし、弾道ミサイルを監視するシステムは早期警戒衛星、第7艦隊のイージス艦、韓国軍のレーダーで十分だからです。正直なところ、アメリカの意図はよく分かりません。

 しかも、シリアで巡航ミサイル攻撃を行ったばかりで、このまま北朝鮮への傾倒を続けると、二正面作戦になりかねません。そして、どちらも本格的に参入した場合、かなり負荷の高い戦いになると考えられます。簡単に終結しない戦いを二つ抱えることは得策ではありません。アメリカがどんな落としどころを考えているのか、あるいは考えていないのかは不明です。

 北朝鮮の核・ミサイル計画がアメリカ本土に届く能力へと近づいているため、いまワシントンはアメリカ自体に対するものとして、脅威を見ています。それはアメリカが北朝鮮のミサイルを撃ち落とす準備があるかどうかという疑問を生みました。そうすることは、アメリカの不確かなミサイル防衛能力の現実での試験となります。

 カール・ビンソンにはミサイルを追跡して迎撃するイージス戦闘システムがある駆逐艦が随行します。

 ハーバード・ケネディスクール(the Harvard Kennedy School)で朝鮮ワーキングルループの責任者を務めるジョン・パーク(John Park)は、今週末の記念日を祝うために北朝鮮がミサイル試験を進めるならば、アメリカがこの地域にいながら、止めようとしなかったという疑問を起こすだろうと言いました。イージスシステムを使えば、失敗はシステムの信頼性を損なうでしょう。

 それは同盟の日本と韓国も心配させます。両国もイージスを持っています。

 こういう心配を日本はしていないかも知れませんが、アメリカの本当の懸念はここにあるのだといえます。

 不思議なことに、アメリカ製品に対する日本人の信頼は狂信的で、自民党はさらに新しいアメリカ製ミサイルを導入しようとしています。アメリカは弾道ミサイルを迎撃すると宣言しました。これまでのように追跡だけで終わるのとは違い、米軍は実際にイージスレーダーでミサイルを探知して、迎撃ミサイルで撃墜する必要があります。それに失敗した途端、アメリカのミサイル防衛の信頼性は崩壊し、北朝鮮は益々自信を深めることになります。

 アメリカ人が日本人がミサイル防衛能力に疑問を持つことを恐れても、日本人はそう思わないかも知れません。最も最先端の技術を導入すれば安心だとしか考えないからです。

 ここ数日、特殊部隊が金正恩を暗殺するといった記事を目にします。そんなことは不可能です。特殊部隊は歩兵であり、その防衛能力は低く、彼らの主な移動手段であるヘリコプターも攻撃には弱いのです。そんな部隊を敵の奥深くまで密かに侵攻させることはできません。

 米空母の派遣を嬉しそうに語る政治家、ジャーナリストを見ると、本当に失望します。日本政府は攻撃する前に協議することをアメリカに要請しているといいます。日本政府はアメリカが北朝鮮を先制攻撃したら、日本が報復攻撃を受ける可能性を考えず、先制攻撃に反対しないのです。まったく理解できないことです。

 

 

 


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