米軍が性的虐待を行う友軍を報告へ

2017.12.4


 military.comによれば、アフガニスタンの新戦略の一環として、米軍はアフガン軍と警察による幼児の性的虐待の報告に対する訓練を行います。

 新しい政策は「バチャ・バジ(bacha bazi)」もしくは「男の子遊び(boy play)」の習慣に狙いをつけています。その遊びの少年はパーティで女性の格好をしてダンスし、司令官と権威者の間を回されます。

 駐アフガン米軍とNATOの「確固たる支援任務(Resolute Support mission)」の指揮官、ジョン・ニコルソン陸軍大将(Army Gen. John Nicholson)は、新しい政策は児童虐待の疑いがある(アフガン)国防省の要員による違反を監視、報告、調査する手順を設定すると言いました。

 火曜日のカブールから国防総省へのビデオ会議で、ニコルソン大将はタリク・シャー・バーラミ中将(Lt. Gen. Tariq Shah Bahrami)は、アフガンの国防副大臣はこの週末に、明確な手続きを定め、子供の権利に違反した者たちに責任を課す児童保護政策に署名するだろうとも言いました。

 「我々は新しい報告システムを実施しました。我々は兵士全員が訓練され、すべての米兵が何がよくて悪いのかを知り、彼らが違反を見たら報告することを知ることを確実にしています」とニコルソン大将は言いました。

 「そして、我々は彼らにまさにそれをする訓練と手段を提供しているところです」と彼は言いました。

 アメリカと国連当局の報告によれば、タリバンの下では、「バチャ・バジ」とその他の児童虐待の形態は禁止されましたが、習慣は2001年のアメリカとカブールの新中央政府の侵攻のあとで復活しはじめました。

 今月早く、国防総省の監察官事務所は「アフガン国防省と治安軍の要員による児童性的虐待の申し立てに関する国防総省のレーヒー法(Leahy Law)実施」という表題の報告書を出しました。

 バーモント州選出民主党員パトリック・レーヒー上院議員(Sen. Patrick Leahy)の名前がつけられたレーヒー法の下では、国防総省と国務省は人権を侵害する外国軍へ軍事支援を与えることを禁じられます。

 監察官の報告は、児童への性的虐待事件を報告することを思い止まらせる公式のガイダンスは確認しませんでした。

 しかし、「一部の事例で、我々が聞き取りをした要員は、彼らや彼らが知る人物は非公式に、主権国家としてのアフガンの立場から、それは司令部にとって最優先事項ではなく、地元警察が扱うのが最善であり、児童への性的虐待についてなしえることはないと言われた」と説明したと報告書は言いました。

 監察官の報告書は、国防総省が2015年より前、アフガンに派遣されたり、派遣される要員に、児童への性的虐待事例を特定し、対応し、報告する訓練を行わなかったとも言いました。

 結果として、米兵は指揮系統へ児童への性的虐待の疑いを報告することを知らされなかったかもしれないと、報告書は言いました。

 2015年9月、アフガン駐留米軍の法務部は、米兵はいまや児童への性的虐待を含む人権侵害の疑いをすべて報告する必要があると述べる訓練用のスライドを用意したと、監察官報告は言いました。

 「2010年から2016年の間に我々は、米軍やアフガン当局に報告された、アフガン政府当局者を含めて16件の児童への性的虐待の嫌疑を確認しました」と報告書は言いました。

 「しかし、矛盾する国防総省の報告手順と統一されたガイダンスの全般的欠如のために、我々は16件の嫌疑がアメリカや同盟軍に報告された総数を表すかを確認できませんでした」と監察官報告は言いました。

 米兵は時折、児童への性的虐待を止めるために彼ら自身の行動と、少なくとも一件の児童への性的虐待の犠牲者が関与した同士討ち事件により綿密な調査の対象になりました。

 2012年、海兵隊員3人が南西部のヘルマンド州でデルヒ前進作戦基地で、地元アフガン国会警察指揮官と住む少年数人の一人によって殺されたとされます。

 2011年、陸軍はチャールズ・マートランド1等軍曹(Sgt. Ist Class Charles Martland)を、性的な奴隷としてベッドにつないだアフガン地方警察指揮官を殴って脅したために、不本意ながら除隊させました。

 マートランド軍曹は議会からの抗議のあとに復職しました。

 記者会見でニコルソン大将は、トランプ大統領が8月に承認した、2年以内に人口の80パーセントに中央政府の支配を確立する目標と共に、汚職を抑制し、攻勢を促進することを狙った全般的なアフガン戦略シフトの一環として児童への性的虐待に関する新しいガイダンスを概説しました。


 こういうところでの米軍のモラルの高さはまさに自衛隊が見習うべきものです。

 まず、自衛隊も注意しないと、レーヒー法に引っかかる恐れがあります。自衛隊も米軍と協力する外国部隊の一つですから。

 さらには、日本は従軍慰安婦問題に関する態度も変えたほうがよさそうです。軍隊による性的虐待は公式に禁じられるのがいまの国際社会です。国連の戦時下での性暴力禁止運動と今回の動きは関係しているといえます。

 成人女性に対する場合であれ、児童に対する場合であれ、性的虐待は許されないということです。

 在日米軍問題では、日本人は常に米軍を悪者として見ます。それは間違ってはいません。米軍の中にも犯罪者がいるのです。しかし、組織としてみると、米軍ほどこうした規律を重んじて、具体的に方策を講じるところはありません。この点では、自衛隊はまったく落第で、組織内の問題を自分で調査し、対策を立案できないことでは人後に落ちません。

 レーヒー法を実行するのが難しいのは、重要な同盟関係にあるような相手国を告発することで、アメリカにとっても必要な外国との協力関係を失う可能性があるためです。

 仮想の話として、自衛隊内の性的虐待を米軍が告発したとすると、米軍は日本に武器を供給できなくなります。それは在韓米軍の戦略にマイナスとなって影響するかもしれません。

 そんな重要な告発を気軽にできる者はいません。それが、これまでアフガンでこの問題がくすぶり続けた理由です。

 しかし、そこを告発するよう命じ、当然、告発者の責任をいうようなことはしないという決断を米軍はしたのです。

 これが自衛隊でできるかを、自衛官や政府関係者はよく考えてみるべきです。慰安婦問題すら解決できない現状では、とても無理だと言わざるを得ません。

 

 

 


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