ロシア軍のシリア撤退は信じられるか?

2017.1.4


 alarabiya.netによれば、シリアから引き揚げる第一段階として、ロシアは空母とその他の戦闘艦をシリア沖の海域から撤退させるといいます。

 ロシア軍参謀長バレリー・ジェラシモフ大将(General Staff chief Gen. Valery Gerasimov)は、空母アドミラル・クズネツォフ(the Admiral Kuznetsov)と同行する艦が最初の引き揚げとなるといいました。

 タス通信に引用されたところでは、彼は最高指揮官ウラジミール・プーチ大統領(Vladimir Putin)の決定に従い、国防省はシリアでの武装部隊グループの縮小を開始したといいました。

 ロシア政府は内戦で荒廃した中東の国で、シリアのバシャル・アサド大統領(President Bashar Assad)の政府と軍隊の主要な支援国です。

 さらに、トルコが支援するシリアの反政府派はアル・バブ(al-Bab)でイスラム国民兵と市街戦を戦っていおり、街を民兵から取りもどす進展は民間人を避けるための努力により速度が落ちていると、トルコの国防大臣は金曜日にいいました。

 トルコの特殊部隊、戦車、航空機が支援する反政府軍は、トルコ国境に沿ったシリア領域の帯から民兵を追い出すための作戦の一環としてイスラム国が支配するアル・バブを数週間、包囲しています。

 一方で、トルコのフィクリ・イシュク国防大臣(Defence Minister Fikri Isik)は金曜日、トルコとこの地域では、シリア系クルド人のYPG民兵をイスラム国との戦いのパートナーに選んだアメリカのために代償を払っているといいました。

 放送会社「Haberturk」へ話したイシュクは、米政府がYPGへ武器を与えているといい、YPGをトルコ政府は敵対する軍隊とみているものの、それはトルコでテロリズムを目的として、もたらすをいうのは言い過ぎだと付け加えました。

 トルコ政府はYPGをPKK民兵グループの延長とみており、それはトルコでの一連の人命を奪う攻撃を主張し、原因とされてきました。最も最近のものは木曜日に西部のイズミル(Izmir)で二名を殺した自動車爆弾でした。


 これはドナルド・トランプの大統領就任後、アメリカとの関係改善に向けたポーズだと思われます。

 まだ地上戦は決定的な勝利をアサド大統領のシリア政府にもたらしていません。アドミラル・クズネツォフは英仏海峡を渡る際に煙突から黒煙を噴き上げたり、艦載機が墜落したりと、あまりよい話は聞けていません。

 シリア駐留ロシア軍の戦力の中心は、地上部隊です。空爆は大型の爆撃機が中心で、戦闘爆撃機による攻撃は少数です。アドミラル・クズネツォフが搭載するSu-33は地上を攻撃する兵器も詰めますが、シリアでは非誘導型爆弾やクラスター爆弾が使われていて、ニュース映像でもSu-33は空対空ミサイルしか搭載していません。彼らがやっているのは爆撃機の護衛と思われます。

 いまや大半の攻撃目標を破壊し、空爆が減ったことと、トランプ政権が誕生するので、この地域での緊張を低下させておきたいことから、空母は引き下げるということです。

 これで爆撃隊の護衛ができなくなる訳ではありません。シリアのラタキア南部にあるバセル・アル・アサド国際空港(kmzファイルはこちら)に戦闘機が置いてあるのです。ロシアは2015年にこの空港を使えるように準備しました。

 地上部隊の引き揚げが確認できない限り、ロシアのシリア介入は続くと考えるべきです。

 

 


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