北朝鮮がミサイル発射も語らぬ防衛相

2016.9.7


 6日の記者会見で稲田防衛相は、前日に北朝鮮がミサイルを発射したにも関わらず、それについての発表は行わず、記者の質問に答えただけでした。(会見のページはこちら

 3発も撃たれたのに、それについて大臣から発表がないとは何事なのでしょうか。いうことがないほど、防衛省は何の情報もつかんでいないのですか?。

 その中で驚くのは、以下の部分です。

 わが国の弾道ミサイル防衛については、海上自衛隊の「SM-3ミサイル搭載のイージス艦」4隻による上層での迎撃、航空自衛隊の「PAC-3ミサイル」による下層での迎撃を組み合わせた多層防衛で、わが国全域を防護するシステムでございます。

 確かに迎撃ミサイルSM-3を搭載したイージス艦は4隻ありますが、常に全艦が稼働している訳ではなく、整備中のものもあります。実際には2〜3隻で守っている訳です。

 現在のSM-3の射程では、ごく一部しか守れず、かなりの部分がカバーできていないはず。PAC-3となると、本当に数十キロ圏内しか守れませんから、稲田防衛相がいうように「わが国全域を防護するシステム」とはいえません。 多層防衛でもスカスカの隙間だらけなのです。

 こんな風に適当に答えていれば大臣が務まるのだから、議員がなりたがる訳ですね。

 

 以下は記者会見の全文。

1 発表事項
 台風10号に伴う大雨に係る自衛隊の対応ですけれども、岩手県知事、北海道知事から、災害派遣要請を受けて、各省庁や被災自治体と連携しながら対応に全力を尽くしております。8月31日には、私から、総理指示も踏まえ、「台風10号による岩手県及び北海道における大雨被害の状況を受けて、防衛省・自衛隊として人命を第一に、被災者の救命・救助等の災害応急対策に全力で取組め」。また、「政府一体の取組みの中で、防衛省・自衛隊として対応に万全を期せ」と指示し、現在の具体的な派遣規模は、岩手県、人員約215名、車両約70両、ヘリコプター3機。北海道、人員約65名、車両約35両。人命救助活動は、これまでに岩手県260名、北海道158名を救助。給水支援は、水約980トンを提供しております。そのほか、行方不明者捜索、給食支援、入浴支援、人員・物資輸送を実施いたしております。引き続き関係省庁、被災自治体と連携しつつ、孤立者救助、給水といった、被災自治体や被災者の方々のニーズに合わせた、効果的かつ機動的な支援活動を行ってまいります。7ヶ所の孤立した集落、安否確認を含め、物資輸送等を行っております。今後は、生活支援など、重点に置かれると思いますが、被災者の方々のニーズに合わせた、きめ細やかな対応を行ってまいります。私からは以上です。

2 質疑応答
Q:昨日、北朝鮮がミサイル3発を撃ちましたが、ミサイルの回収状況等を教えて下さい。
A:昨日、弾道ミサイル、あるいはその一部が落下したと推定される海域において、自衛隊機による捜索活動を実施いたしました。また、海上保安庁の航空機や巡視船が現場海域の安全確保を実施いたしました。弾道ミサイル、あるいは、その一部と判断できるようなものは確認されず、昨日の夕方には捜索を終了しているところです。
Q:ミサイルに関連してなのですけれども、防衛省は来年度の予算の概算要求でSM-3やPAC-3の改良型の取得費を計上したほか、将来のMD構築に向けた調査費を計上しておりますけれども、将来世代のMD体制の整備に向けて、課題等あれば教えて下さい。
A:今回、昨日も会見で申し上げたとおり、同じ地点から3発の弾道ミサイルをわが国の排他的経済水域に同時に、ほぼ同地点に着水させております。また、先日は、潜水艦からの発射等もあり、ミサイルの技術は向上しているというふうに思います。やはり、万全の態勢を持って、このミサイルに対しての防衛を取組んでいかなければならないというふうに思っております。わが国の弾道ミサイル防衛については、海上自衛隊の「SM-3ミサイル搭載のイージス艦」4隻による上層での迎撃、航空自衛隊の「PAC-3ミサイル」による下層での迎撃を組み合わせた多層防衛で、わが国全域を防護するシステムでございます。今、御指摘があったように、ミサイルの発射を繰り返している北朝鮮に対して、対応は急務だと思います。そのために、高度のミサイルに対処できる能力向上型ミサイルの導入に着手をし、例えば、SM-3ブロックⅡAの新規取得、また、PAC-3MSE弾の新規取得を進めていく必要があるというふうに思います。また、概算要求で6,000万円、研究調査費を計上いたしておりますけれども、こういった将来の弾道ミサイル体制の調査研究を実施していく必要があるというふうに思っております。わが国のミサイル防衛の能力を高めていくと同時に、やはり、日米の同盟強化、BMDに対して、緊密に連携をする必要があるというふうに思います。それは、早期警戒情報をはじめとする、情報の密接な共有、また、イージス艦、PAC-3等のわが国への展開配備、SM-3ブロックⅡAの日米の共同開発などを進めているところでございます。さらには、日米、そして、韓国との三ヶ国の緊密な連携というのも必要になっているかというふうに思います。
Q:フィリピンとの防衛交流についてお伺いしたいのですが、オバマ大統領とドゥテルテ大統領の会談が予定されていましたが、それがキャンセルになりました。人権問題を巡って、オバマ大統領側からキャンセルを申し入れたということですが、日本はフィリピンと価値観を共有しているということで、フィリピンに対して、能力構築支援など行っていますけれども、今後もこのまま、日本としては、日本からフィリピンに対して、能力構築支援や共同訓練など続けていくおつもりでしょうか。
A:わが国としての防衛としては、一つはわが国自体の防衛力の強化、そして、日米同盟の強化、さらには、価値観を共有する、特に東アジア、太平洋地域の平和と安定にとっては、そういった国々との関係というのは、私は重要だろうというふうに思っております。そういう意味において、そのフィリピンに対して、能力向上のための支援をするということは非常に重要だろうというふうに思っております。本年の2月にはフィリピンとの間で、防衛装備品技術移転協定に署名し、また、5月、防衛相電話会談において、防衛装備技術協力を推進し、フィリピン海軍への海上自衛隊練習機TC-90の移転に関する協力を具体化していくことを確認しているところでございます。
Q:価値観のところ、今問題になっている人権のところは、日本政府としては、防衛協力をするにあたって問題はないと。
A:人権という点については、今、オバマ大統領の懸念ということもあろうかと思いますが、一方で、例えば仲裁判決が出て、それに対して最終的な判断として、紛争当事者両国が拘束をされる、まさしく「法の支配」を南シナ海、さらには東シナ海に貫徹をするという意味においては、価値観を共有している部分があるのではないかというふうに思っております。
Q:米軍北部訓練場のヘリパッド建設についてお伺いしたいのですけれども、抗議する市民と取り締まりしている県警とのもみ合いが非常に続いておりまして、建設現場の近くの小学校の教師が、授業に遅れるという事態が発生しております。この事態について、防衛省としてはどうお考えでしょうか。
A:そういった報道については、承知をいたしておりますけれども、防衛省といたしましては、北部訓練場の過半の返還について、ここは一日も早い返還に向けて移設工事を進めているところであります。やはり、沖縄の負担軽減という意味からは、その北部訓練場の過半の返還ということは意味があるというふうに思っております。と同時に、そういった点について、沖縄県の皆様方との理解、さらには協力を求めていきたいというふうに考えております。
Q:現在、理解を求めたいということでありましたけれども、どういうふうに理解を求めていくお考えでしょうか。
A:例えば、地元の国頭村、東村は、返還跡地の有効活用策として、国立公園の指定、世界自然遺産への登録を目指すとして、早期の返還を要望されておられます。地元の中でも、そういった理解を示されている地域もあるわけで、そういったこの返還の意義等を粘り強くいろいろな形で発信をしていくということが必要ではないかと思っております。
Q:宮古島の陸上自衛隊の配備についてお伺いします。先日、副大臣が宮古島を訪問して、配備計画の説明をしました。その中では、火薬庫は「千代田カントリークラブ」には置かないということでしたが、防衛省としては、火薬庫を置かない状態で、今計画している南西地域の防衛というものは果たせるという御認識でしょうか。
A:まずは、若宮副大臣が、2日に宮古島市に行って、市長と対談したところです。まずは、宮古島への陸上自衛隊配置の受け入れ表明に、改めて感謝の意を伝達し、また、警備部隊等の配置先については、「大福牧場」に配置しないということを説明するとともに、「千代田カントリークラブ」における施設配置案について説明をしたところでございます。今の御質問についてですが、現時点では、宮古島における陸上部隊の配置先として考えているのは「千代田カントリークラブ」のみでございまして、代替地について、現時点で具体的な候補地はまだありません。今後、地元の方々とよく相談をして行きたいというふう思っております。
Q:関連しまして、中期防に南西地域への陸上自衛隊配備というのが明記されていると思うのですけれども、この陸上自衛隊、宮古島への配備というのは、今の中期防の中で終えられるということには変わりないのでしょうか。
A:安全保障上、また、中期防に書かれていることについては、しっかり取組んでまいりたいと思います。同時に、やはり、地元の皆様方の理解なくして進められないので、そういった点もしっかり説明をしていきたいと思っております。
Q:今の関連でお伺いしたいのですけれども、ミサイルの火薬庫は、現在のところ、他に作るところは予定はないというようなお話もされていましたけれども、ミサイルの発射台、発射する機械とかも、展開の予定地も、現在のところないというような話も聞いているのですけれども、他の予定地を探す必要はあるということでしょうか。必要もないということですか。
A:必要がないということではなくて、やはり、今、代替地について具体的な候補地がないので、これについては、やはり、地元の皆様方の理解なくして進めることはできませんから、そういった点もよく相談していきたいと思っております。

 


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.