38northによる北朝鮮SLBMの分析

2016.8.28


 38north.orgによれば、北朝鮮の最新の潜水艦発射型ミサイル(SLBM)の成功した実験は、計画が当初よりも早く進展している可能性を示します。

 しかし、これは来週、来月、来年に準備ができることを意味しません。

 むしろ、北朝鮮のSLBM実験のペースとメソッドは、早くて2018年後半までに初期の運用能力で配備する可能性を示唆します。

 ロシアのSLBM開発の歴史をふまえると、平壌型ミサイルは最初の潜水艦からの打ち上げ成功のあと、2年間と12回の様々な度合いでの成功があったものの後塵を拝しており、依然として見つけて修正される不具合がありました。

 北朝鮮はこうした試験のいくつかをスキップできますが、開発を急ぐことはほぼ確実に信頼性を犠牲にし、不十分な試験で信頼性の低いミサイルを配備することは、潜水艦の沈没をもたらし得ます。北朝鮮が限られた能力の単艦の弾道ミサイル潜水艦しか持たない時には、高い代償です。

 さらに、北朝鮮のGORAE級潜水艦は理論的にはSLBMを配備するのに使えるものの、平壌は潜水艦の試作品一隻に戦時の任務を実行する1〜2発のミサイルを搭載しようと考えることはできません。

 そうした配備は勝敗を変え得る脅威というよりは、はったりです。

 それ以上に、潜水艦は基本的な堪航能力を確認し、数回の発射を行うために短期間沿岸で海域に置かれただけでした。

 運用可能な艦となるならば、水上艦との演習のような、作戦環境で現実的な実験を必要とします。

 さらにまた、北朝鮮はほぼ間違いなく、稼働するシステムを配備しようとする前に、この設計を改善したがっています。

 38 Northは、北朝鮮が新しい潜水艦を建造するためのインフラを建設していると報告していますが(新浦市の南造船所での新しい造船ドックの更新、近代化、建設)、いまのところ、実際に新しい潜水艦の造船が始まったかについての情報はありません。

 新しい潜水艦は多分、1〜2年の時間枠で造船できますが、GORAE級実験艦のさらなる試験と改良なしに新型を配備する見込みは低いと思われます。


 以上はジョン・ホプキンス大学の機関による分析です。

 日本ではごく簡単にしか紹介されていないため、あと数年で北朝鮮が日本を攻撃できる弾道ミサイルを完成させると誤解されているようです。

 この報告書が示すように、いくつもの問題が解決されて、はじめてミサイルは攻撃能力を持ちます。

 まず、ミサイルの信頼性がもっと向上することです。北朝鮮が公表した打ち上げの映像を見る限り、常時確実に打ち上げられるほど信頼できるミサイルとは思えません。

 すでに指摘しているように、本当に潜水艦から発射されたのかについては、公開された写真を見ると、間違いがないことが分かります。クレーンで潜水艦にミサイルを搬入する写真がありました。水中のはしけはすでに使わなくなったようです。

 潜水艦から発射したとすれば、なぜ斜めに傾いて水上に飛び出してくるのかが分かりません。もしかすると、潜水艦に垂直に格納するまでにミサイルが小型化できておらず、斜めに発射チューブに収められているのかも知れないと思いましたが、公開された写真から、発射チューブは垂直であることが分かりました。これが海上に出る時までに斜めになるのですから、何か問題があることが想像されます。

 GORAE級(sinpo級とも呼ばれます)は精々2発の弾道ミサイルしか発射できません。米海軍のオハイオ級原潜は24発も弾道ミサイルを搭載しています。実験用とはいえ、ここで研究した発射チューブが配備される潜水艦で使われるはずです。GORAE級の全長は65.5mと小型で、展望塔の部分に発射チューブがあることが分かっています。船体部分にミサイルを格納できるように、もっと大きな原潜を開発する必要があります。

 さらに水圧がかかる水中での発射は、常に潜水艦に危険をもたらすものだという問題があります。何らかの異常が起きると、それはそのまま潜水艦の沈没を招きます。つまり、折角建造した潜水艦を一度のミスで失う危険性があるということです。

 潜水艦が完成しても、ディーゼル型しかないため、数日間しか潜航できず、原潜のように出航後の動きがつかめないという可能性は低いでしょう。日本とアメリカの協力で、潜水艦を探知して撃沈することは可能です。しかし、西海岸側に配備されると、韓国と中国の領海に近いので、海上自衛隊は接近しにくいため、実はここで韓国軍と米軍の協力が必要が出るかも知れません。

 なお、聯合ニュースでは今年4月の発射実験のミサイルの燃料を個体式だと報じていることが分かりました。昨日は液体燃料のように説明したので、その部分は削除しました。

 


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