稲田防衛大臣の記者会見から

2016.8.18


 ジブチから戻った稲田防衛大臣の記者会見(15日)が公表されましたが、ジブチ訪問については簡単に説明しただけで、残りも脳天気な内容でした。

 南スーダン情勢について「現時点で、PKO5原則は満たしているというふうに思います」「PKO5原則を満たしているということでございます」「このPKOと現在の情勢についての評価については、派遣されている要員からの報告、また大使館、国連からの情報等を総合的に勘案すると、PKO法上の『武力紛争』が新たに生じたということではありませんし、また、『紛争当事者』がいるということではないというふうに思っております」と繰り返しており、現在起きている全面的な内戦は存在していないかのような口振りです。記者もそこまで質問をしていません。

 紛争当事者がいないって、キール大統領がマシャル元第一副大統領を殺そうとしたのにですか?。昨日紹介したように、アメリカの国連大使は南スーダン軍の性暴力に怒っているのと時を同じくして、日本の防衛大臣は南スーダンに紛争はないと断言したのです。米国連大使も稲田大臣も国連の報告書を読んだと言っているのですが、なぜこうも結論が違うのでしょうか?。きっと、核爆弾でも落とさないと紛争状態とはいわないのでしょうね。次の記事で南スーダン情勢を紹介しますから、稲田の見解と比較してみてください。

 治安不安定で施設部隊が活動を行えない、基地内待機の状態であるにも関わらず「施設部隊がやっていることについては、実施計画に基づいて活動を続ける、実施計画を変えるということは現時点で考えているわけではありません」と説明しました。すでに計画通りに行っていないはずなのですが。

 思わず吹き出してしまったのが「私は、今日本を巡る情勢というのは、非常に厳しいものがあるというふうに思います」という部分です。客観的にみて、今の日本の軍事紛争レベルは十段階で10が最大として1か2程度です。それを政治家が表現すると、こういう表現になることが多いのですが、やはり稲田大臣も月並みな表現に徹したということです。

 以下は記者会見の全文です。引用した部分には赤線をつけました。

Q:今回の視察の感想について、お聞かせ下さい。

A:就任以来、国内外を問わず一線で活動し、活躍しておられる隊員の皆さんの活動を視察したいという思いを持っておりましたが、こうしてジブチに来て、日本から遠く離れ、家族を残してこの猛暑の厳しい環境の下で士気高く活躍いただき、また、その成果として、ソマリア沖アデン湾の海賊、非常に成果を挙げて国際的にも評価をされている、そんな皆さんの活躍を見ることができて大変誇りに感じるとともに、様々な活動についても聞かせていただいたところでございます。また、南スーダンの7月の事件の時には、邦人輸送を行なったということで、非常に、わが国のためにも、また、国際貢献という意味からも活躍いただいているということを、実際に肌身に感じることができました。

Q:先ほどおっしゃられたように、南スーダンで邦人輸送などでも活躍されたということですけれども、自衛隊の拠点をジブチに置いておく意義というのを、改めて教えていただけますか。

A:ご承知のとおり、ジブチの拠点的な活用に関しては、平成25年12月に策定された現在の防衛大綱で、「国際平和協力活動等を効果的に実施する観点から、海賊対処のために自衛隊がジブチに有する拠点を一層活用するための方策を検討する」というふうに、防衛大綱にも書かれておりますし、また、平成27年度には、諸外国が海外の拠点を活用している事例等について調査するための委託研究を実施したところであります。防衛省・自衛隊としては、こういった調査結果等も参考にしつつ、今、御指摘になったように、このジブチは、アフリカにおいても、海賊対処という意味においても、非常に重要な役割を担っているところでありますので、今後一層の活用の在り方についても、しっかりと検討していきたいと思っております。

Q:南スーダンのPKOに関して、国連が先日増派を決めましたけれども、それに対して、南スーダンの国連大使は反対を表明しています。日本のPKO法5原則には、当該地域に属する国が、PKOや日本の参加に賛成しているということが入っていますけれども、現状は、PKO5原則を満たしているのでしょうか。

A:まず結論から言いまして、現時点で、PKO5原則は満たしているというふうに思います。まず、当事者国の同意についてですけれども、もちろん南スーダン政府の反応、対応については注視していきますけれども、国連南スーダン共和国ミッション、UNMISSの展開について、南スーダンは、同意は維持されておりますし、今般の地域保護部隊の展開についても、基本的には受け入れておられる。ただ、この詳細については、今後、南スーダンと国連とを始めとする各国間でしっかりと協議をしていかれるものというふうに想定しております。また、もう一つの要件であるところの、紛争の点でありますけれども、このPKOと現在の情勢についての評価については、派遣されている要員からの報告、また大使館、国連からの情報等を総合的に勘案すると、PKO法上の「武力紛争」が新たに生じたということではありませんし、また、「紛争当事者」がいるということではないというふうに思っております。よって、最初に述べたとおり、5原則は現時点で満たしていると考えております。

Q:そうしますと、今の南スーダンの情勢をどのように認識されているのか、また自衛隊の今後の現地の活動をどうされていくか、お聞かせ下さい。

A:今の南スーダンの情勢については、PKO5原則を満たしているということでございます。そして、その上で現在の自衛隊の任務、施設部隊がやっていることについては、実施計画に基づいて活動を続ける、実施計画を変えるということは現時点で考えているわけではありません

Q:終戦記念日に当たっての御所見と、毎年、靖国神社に参拝されていたかと思うのですけれども、今回、できなかったことについて、お話しをお聞かせ下さい。

A:私は、今の平和な日本というのは、いかなる歴史観になろうとも、この国のため、家族を守るために、また、故郷や国を守るために出撃していった多くの方々の命の積み重ねの上にあると思います。私は、そういった感謝の気持ちは、日本人は忘れてはいけないと思っています。

Q:8月15日、終戦の日、戦後70年経って、防衛大臣という立場で、今日を迎えることについてはどのようにお考えですか。

A:私は、今日本を巡る情勢というのは、非常に厳しいものがあるというふうに思います。そのような中で日本は、過去に対する反省の上に立って、戦後70年間、どこの国と戦争をすることも、侵略することもなく、平和に活動を続けてきました。さらには、平和安全法制も成立し、日本国憲法の下でしっかりと国際貢献をしていかなければならないというふうに思いますし、何よりも、力ではなくて、法による支配、そして、法による平和と安定を、アジア、そして世界に広げていく役割を、日本がしっかりと努めるべきだというふうに思っております。そのような中で防衛大臣という、わが国の平和と安定、そして、世界の平和と安定に貢献するための大臣ということで、非常に緊張感をもって、また、その責任の重さを感じながら、職務に邁進していきたいと思っております。

Q:靖国参拝、今年は行かれなかったということなのですけれども、行かれなかったかわりに、玉串料であるとか、何らかの対応というのはとられたのでしょうか。

A:毎年、「伝統と創造の会」で参拝をしておりました。今年も、私はおりませんけれども、「伝統と創造の会」で参拝し、そして、その会として玉串料を奉納したというふうに承知をいたしております。

 

 


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.