国連安保理が南スーダン派遣団増強を可決

2016.8.13


 sudantribune.comによれば、国連安保理事会は第三勢力の外国部隊を南スーダンの首都、ジュバ(Juba)に派遣する件で投票を行いました。

 部隊の委任事項は、SPLM-IOの指導者で元第一副大統領のレイク・マシャル(Riek Machar)と、その他の反対勢力グループをを守ることを含めて、民間人の保護を優先し、内容の乏しい和平プロセスを強化するために活動します。

 ニューヨークでの金曜日の決議は、現在の国連南スーダン派遣団(UNMISS)の部隊レベルを、現在の12,000人から、大半がジュバに配置される地域国防護部隊4,000人を含めた17,000人へと向上させます。

 支援団体「the Enough Project」の理事、ジョン・プレンダギャスト(John Prendergast)は、「高いリスクの地域にいる民間人の保護を強化することは、南スーダン危機への国際社会の対応への重要な向上です」と述べて投票を歓迎しました。

 しかし、彼はこの部隊が妨げられずに派遣されること、人道支援のためのアクセス、和平合意の実行を確実にするために、国際社会の圧力を増やすことを要請しました。

 「国際的な力を強化する最前の方法は、妨害者へ狙いを絞った制裁を実施し、武器禁輸を進めることです。脅威はもはや戦争を推し進める者を慌てさせるものではありません」と彼はさらに強調しました。

 決議はIGADと地域の数カ国(IGAD Plus)が採択した8月5日のコミュニケの決定を反映します。

 コミュニケの中で、IGAD Plusは先に、国連安保理に「UNMISS部隊全体の指揮官に直属する指揮官の直接命令の下で明確な責任を担う、ジュバを拠点とする地域国防護部隊の派遣を含めて、修正された委任事項を与えてUNMISSの任務を緊急に拡大すること」と要請しました。

 エチオピアの首都、アジスアベバ(Addis Ababa)で公表されたIGADの書面は、部隊派遣を原則として受け入れる南スーダン政府の立場も指摘しました」

 国連安保理の決議は、ジュバ周辺とその外で進行中の戦闘の即時停止を要請し、さらに、南スーダン政府が地位協定で定めたとおりにUNMISSに従うことを求めました。

 飛行と必須の補給品の輸送、UNMISS職員などへの脅迫、傷害、拘束のような敵対行為を含めて、派遣団の移動の自由が厳しく制限されていることに関係する事件についての報告があります。

 地域の部隊は、スーダン、ウガンダが派遣団から引き揚げ、エチオピア、ケニヤ、ルワンダから派遣された部隊が含まれる予定です。

 国連での交渉の間、メンバー国は決議案の他の要素について疑問も提起しました。ロシアを含めた数カ国は、ジュバにどんな手段が受け入れ可能だとしても設け入れる用意があることを示し、南スーダンの主権について懸念し、南スーダン政府が計画を支持することを確認するよう求めました。


 記事は一部を紹介しました。

 これだと、自衛隊は増強される部隊にむしろ守られる形で、駆けつけ警護なんかできそうにありません。

 日本も国連に大使を派遣しているのですから、この展開は外務省に伝えられているはずです。武力紛争になったため、国連軍に戦闘部隊を増強するのです。工兵隊である施設隊は一兵も含まれません。

 国連部隊の目的がマシャルが指揮する反対勢力軍と民間人の保護であることは明白です。彼らが弾圧されていると、国連は明確に認識しています。極めて強い対立が生じているところへ、本来は戦闘を目的としないで派遣している部隊が巻き込まれることになります。

 南スーダンへの派遣は合法だと言い切り、何ら方針を変えないどころか、駆けつけ警護の実施に向けて準備を進める政府は正気とは思えません。

 最悪の場合、痺れを切らしたキール大統領が国連軍の排除を政府軍に命じます。その場合、国連軍指揮官は自衛隊の警護部隊に出動命令を出すでしょう。軽歩兵の装備しか持たない自衛隊が、重武装の南スーダン軍と戦闘することになります。

 まったくの部外者よりも地域の軍隊の方が適切に対処できるという判断から地域国から部隊を派遣しているのに、現地の情勢に疎い日本の部隊が戦いの矢面に立たされる可能性が出てきました。

 何回でも言いますが、派遣を決めた当時の民主党政権が馬鹿で、それを継続している自公政権も馬鹿なのです。外務省が描いた話に乗っただけの無能な政治家しかいないから、こうなるわけです。

 かつて日本の安全保障といえば、自民党には後藤田正晴氏がいました。後藤田氏は外務省の能力について、こう述べています。

 今いちばん欠けているのは、外国の治安情報でなしに政治情報なんです。外務省の情報なんて当たったためしがないんだから。新聞や刊行物を翻訳して持ってきているようなものだからね。(『カミソリ後藤田回顧録 情と理』上巻 文庫版p177)

 当サイトは新聞情報中心ですが、かなりの部分で妥当な分析をしていると自負しています。問題は情報源の種類ではなく、客観的な視点で情報を見るかでしょう。外務省は自分に都合がよい情報だけ集めて満足しているのです。

 


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