キール大統領、国連軍派遣を非難へ転じる

2016.8.11


 sudantribune.comによれば、サルバ・キール大統領(President Salva Kiir)が率いる南スーダン政府は、ジュバ(Juba)で現在の政府を転覆させるために政権交替をしようと活動していると非難しました。

 ジュバに治安と防護を与え、和平合意の実行を助けるため、すべて軍事的能力を持った兵士4,000人を派遣する試案へ怒りを持って応じました。

 「国連事務総長は南スーダン政府とその指導層に対して、最近のルワンダのキガリ(Kigali)での第27回アフリカ連合サミットに、彼の政権交替戦略に有利になるようアフリカ連合の決定に影響を与える明白な意図をもって侵入(intrusion)したことを含め、継続的に否定的な見解を増しています」と、8月8日の国連草案への回答文は言いました。

 マーティン・エリア・ルムロ内閣総務大臣(the minister of cabinet affairs Martin Elia Lomuro)が署名し、キール大統領が指名した委員会が準備した返答は、南スーダンの状況に関する報告は中立的権威により作られ、検証されなければならないと要請します。

 回答文によれば、この試案はアメリカが提案した同国に対する国連の委任事項更新の見直しを概説しており、2016年8月5日のIGAD及び諸国首脳と政府コミュニケが含む条項の効果を失わせ、地域的権威としてのIGADを弱体化させることを意図しています。

 「アメリカ合衆国とUNMISS委任事項更新の試案は、国連加盟国としての南スーダンの主権をひどく弱体化させます。国家統一の暫定政府はこれらの提案に強く反対します」と、回答文は付け加えました。

 ジュバに兵士を派遣するために、国連は金曜日に草案を審議して、可決する予定です。


 記事は一部を紹介しました。

 やはり、キール大統領は外国部隊の派遣に納得せず、一時は支持するとしたものの、反対に転じました。当然の成り行きです。

 国連事務総長がアフリカ連合の年次総会に参加するのは毎度のことなのに、「侵入」なんて言葉を使うほど、南スーダン政府は焦っています。

 国連はキール大統領の派閥に問題があることを理解し、政府軍の押さえ込みに入っています。

 その先頭に立つのはアメリカで、南スーダンの状況を素早い分析して、対応策を打ち出したのです。それは近隣諸国の軍隊を首都に展開することです。

 (外務省によれば)アメリカと価値観を共有するはずの日本政府が、南スーダンは紛争状態になく、首都は平穏としているのは皮肉でしかありません。価値観なんか共有していません。

 対策も打ち出せず、棒立ち状態。打開策を描ける人物は外務省にはいないということでしょう。米国務省からすれば、日本外務省は「君たち、なにやってんの?」というところです。この器量で国連常任理事国を狙っているのだからお笑いです。

 首都付近の政府軍は1万人程度とされます。4千人の部隊が展開すると、戦力比の関係で政府軍は動きがとれなくなります。反対勢力軍も勘定に入れると2対1を下回るでしょう。優勢ではあるものの、かなりの出血を強いられるのは当然。この派遣兵数を見て、キール大統領は慌てて反対に転じたのでしょう。

 国連部隊を攻撃したら、今のところ不介入を宣言しているアメリカが無人攻撃機を差し向ける可能性があります。政府軍の虎の子、戦車、装甲車、重砲、武装ヘリコプターが、反対勢力の射程外にいるのに次々と破壊されはじめる可能性を考えなければなりません。

 自衛隊はキール大統領が主に支配する地域で建設作業を行っています。この状況で作業ができるとは思えません。

 さらに、この状況で駆けつけ警護を行うのは、全面戦争への介入にほかなりません。ごく小規模な戦闘を想定した駆けつけ警護なのに、キール大統領の軍隊の熾烈な攻撃にさらされます。想定を越えた戦闘になるという危機感は日本政府にはありません。

 キール大統領が国連軍を敵視するのは今に始まったことではありませんが、それは一層強まっています。

 大手マスコミを押さえているから、都合の悪いことは報道されません。仮に自衛官が戦死しても、運が悪かったのだろうで終わってしまうでしょう。戦死・戦傷者に世間が冷たいのは、日本だけでなく、アメリカでも見られる不思議な現象です。

 最悪の結果を想定するしかありません。

 


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