アフガン軍への装甲車提供が棚上げに

2016.7.8


 alarabiya.netによれば、2014年にNATO軍の戦闘支援なしでタリバンを戦う準備をする中、米当局は装甲車両数百台を提供する計画を棚上げしました。

 約300台の車両を提供しないという決定(多くは予算的な理由と思われる)は、地元の軍隊が彼らを基地の外に出して、米主導で前進し、強力な武装勢力との戦いの中に入れようと奮戦する時に泣き所のままです。

 2002年以降、アメリカは撤退を見据えて、アフガン軍を訓練し、装備するために680億ドル以上を割り当てました。

 それでも深刻な人員とハードウェアの不足があります。

 議会で情報局長に承認される前、マソーム・スタネクザイ国防大臣代理(Masoom Stanekzai)は、アフガン政府は未だにより多くの装甲車をアメリカから得ようとしているといいました。

 米政府がアフガンが要求していない輸送トラックの大量出荷を承認した後、スタネクザイは同盟国の指揮官に個人的な書簡を送り、その中で彼は機動攻撃部隊車(Mobile Strike Force Vehicles: MSFV)を含む装甲車がさらに必要だと書きました。

 「我々が直面する戦いの種類では、MSFVはハンヴィーよりも効果的です」と彼は言いました。

 アフガン人の視点では、最も重要なのはMSFVのV字型の外装と追加された装甲です。それは、特に武装勢力が好むIEDからより兵士を守るために広く採用されたエンジニアリングの進歩を反映します。

 大半の地元軍がハンヴィーとピックアップで移動するのに対して、同盟軍の兵士は重装甲車に乗らずに基地を出ることは滅多にありません。

 発注が2013年に破棄され、アフガン軍は前々から600台のMSFVを持っており、それらはアフガンの最も危険な地域の多くで未だに使われています。

 その時、米軍のプランナーは約300台以上の必要を認め、議会に費用をまかなうために9億ドルの要請を送りました。

 「それはアフガン軍に正規の歩兵部隊よりもさらに機動性、生存性、致死性を提供します」と国防総省は議員たちへの売り口上の中で書きました。

 議会は資金を承認しましたが、発注は2014年に保留にされました。

 その直後、アフガン軍参謀長シュール・モハンマド・カリミ(Sher Mohammad Karimi)は、同盟軍の指揮官へ、軍がよりよい装甲車を必要としていると概説した覚書を送りました。

 「地雷は昨年、アフガン軍の犠牲者の90%近くを占め続けたままで、我々はこれが予想できる将来において、我々の敵が好む戦術であり続けると予期します」と彼は言いました。

 結局、米軍は、アフガン軍の長期的な安定性と費用の負担能力を全般的に懸念して、MSFVの発注を破棄しました。

 その代わり、米当局は装甲を強化した装甲車を提供する方法として、さらにアップグレードされたハンヴィーを提供する決定をしました。

 アメリカの顧問はアフガン軍に基地を出て、より攻撃的な作戦を始めるよう迫っていました。

 アフガン軍の指揮官は、より機動的な軍隊を作るこれらの努力は、米軍が10年近く戦闘に広範に使っていないハンヴィーのような軽装甲車両への過度の依存により台無しにされていると言います。

 米当局は、アフガンとイラクで、何千ものアメリカ人の命が、ハンヴィーからよりIEDに耐えられる対地雷・待ち伏せ防護車(MRAP)に切り替えることで助かったと言っています。

 これはアフガン軍でも同じで、彼らは昨年、15年間のアフガン戦で同盟軍の兵士が被ったのよりも多くの死者を出しました。

 カリミ参謀長は2014年の覚書で「同盟軍が同じ脅威の現実に基づいて改善された装甲車を過去10年間、その軍隊に提供したことに気がついています」と書きました。

 カリミ参謀長は、MRAPレベルの防護を持つMSFVはアフガン軍をより小型で、柔軟な戦闘部隊にさせると言いました。

 アフガンで3500人以上の国際部隊の兵士が死に、少なくともその中の1,400人はIEDによって殺されました。

 昨年、アフガン軍兵士、警察官7,000人が殺されたと推定されます。

 国防総省によれば、IEDの犠牲者の数は彼らがよりよい防護手段を得てから、少しずつ減っているものの、直接的な射撃に次いで二番目の一般的な攻撃のタイプのままです。

 IEDは軽装甲車に乗っている兵士に被害を与えることもできます。

 必要性を評価している米当局者は、アフガン軍により多くの装甲車を配備して支援しようとしており、よりよく対処できるようにする努力の中で、半分近くまで軍の保有台数を減らそうとしています。

 「我々は彼らがいる戦いのために何が必要かを継続的に評価します」と、アフガンの軍事支援を監督するダニエル・ヒューズ少将(Major General Daniel Hughes)は言いました。

 MSFVと同種の車輌は大型で、操作しにくく高価なため、それ自身が欠点を持っています。

 ヒューズ中将はMSFVは、アフガンでの限定的な使用に非常に特化された車輌で、アフガンのMSFVはすでに防御的にのみ使われると指摘しました。

 プランナーは今年、更新するハンヴィー1,600台を発注するのを選びました。これはMSFV1台より100万ドル安く、約280,000ドルだと、ヒューズは言いました。

 損失分を更新するために、昨年、約50台の追加のMSFVが発注されました。

 米軍指揮官は最初、戦闘の必要性を考慮しますが、最終的にはワシントンが承認した予算に従って利用可能なものを提供するだけです。

 「私は将軍『ノー』です。私は財政的な現実を加味します。すべてにイエスとはいえません。この最終的な目標はアフガン人が自分の軍隊を支えることですから、財政的な部分に監視して評価しなければなりません」。


 記事は一部を紹介しました。

 MSFVはMRAPのコンセプトで設計された装甲戦闘車です。M1117装甲警備車のような車輌を指します。

 駐留米軍の削減がタリバンの攻撃増加で保留にされたという報道があったばかりです。(関連記事はこちら

 タリバンによって一年間で7,000人も殺されたというのは驚異的な数字です。米軍を撤退させられないのも道理です。

 アメリカとアフガンの国家予算両方の問題があるように記事は書いています。ハンヴィーだって安くはありません。アフガンの軍事予算は年間72億ドルです。

 アメリカの決定の是非は、もっと多くの情報を検討しないと出せません。しかし、MSFVを多数提供してタリバンを弱体化させても、また復活してしまう可能性が高いことが、決定の根幹にあるように思えます。

 


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