硫黄島の写真に写っていた海兵隊員に新説

2016.5.4


 military.comによれば、米海兵隊は、アマチュア歴史マニア2人が写真について疑問を提起した後で、第2次世界大戦の象徴的な写真の一つ、硫黄島で星条旗を揚げるのを示す男たちの一人を間違って特定したかについて調査を開始しました。

 海兵隊はオクラホマ州のエリック・クレリ(Eric Krelle)とアイルランドのウェクスフォードのスティーブン・フォーリー(Stephen Foley)が一人の男について疑問を提起した1年以上後に調査を発表しました。

 2014年11月、オマハ・ワールド・ヘラルドは彼らの主張について報じ、土曜日は海兵隊が問題を注視していることを報じた最初となりました。

 AP通信のカメラマン、ジョー・ローゼンソール(Joe Rosenthal)1945年2月23日、激戦の中、擂鉢山で写真を撮りました。

 ローゼンソールは男たちの名前を手に入れませんでしたが、写真はすぐにアメリカで賛美され、ルーズベルト大統領は軍に男たちの名前を特定するよう軍隊に言いました。

 若干の混乱の後に、海兵隊は男たちをジョン・ブラッドレー(John Bradley)、レイニー・ギャグノン(Rene Gagnon)、アイラ・ヘイズ(Ira Hayes)、ハーロン・ブロック(Harlon Block)、マイケル・ストランク(Michael Strank)、フランクリン・スースリー(Franklin Sousley)と特定しました。

 海軍衛生下士官だったブラッドレーを除く全員が海兵隊員でした。

 ブロックとスースリーは写真がアメリカで配布される前に硫黄島で戦死しました。

 月曜日、海兵隊は声明で「海兵隊は、硫黄島での二度目の国旗掲揚のジョー・ローゼンソールの写真に関連した民間団体が提供した情報を調査しています」と言いました。

 隊員6人の身元は何十年も受け入れられてきましたが、ワールド・ヘラルドは、フォーリーに手術から回復する間に時間がたっぷりとあり、写真に矛盾がある可能性に気がつき始めたと報じました。

 彼は海兵隊第5師団を記念するウェブサイトを運営するクレリの援助を得ました。

 その日に男たちを撮った他の写真と共に有名な写真を調べたあと、彼らはブラッドレーと特定された男が実際にはデトロイト出身の一等兵、ハロルド・ヘンリー・シュルツ(Harold Henry Schultz)であると特定しました。

 シュルツは1995年に死にました。

 クレリとフォーリーが特定した矛盾な以下の通り。

  • ブラッドレーは有名な写真で折り返しのないズボンを履いていますが、その日に撮られたほかの写真は彼がきつめの折り返しありのズボンを履いていました。
  • 有名な写真にはヘルメットの下に帽子のひさしが見えますが、その日に撮られたブラッドレーの写真にはありません。
  • ブラッドレーと特定された男は弾薬ポーチがついた弾薬帯を着用し、ベルトにワイヤーカッター2個を吊しています。ブラッドレーは海軍衛生下士官として、M-1ライフル銃ではなくピストルで武装し、ワイヤーカッターは必要ではありません。その日の他の写真は、彼が弾薬ポーチのないピストル用ベルトに見えるものを着用しているのを示します。

 ブラッドレーの息子、ジェームズ・ブラッドレー(James Bradley)は国旗掲揚に関するベストセラー本『父親たちの星条旗』を書き、それは後にクリント・イーストウッド(Clint Eastwood)により映画化されました。

 ブラッドレーは海兵隊が男たちの身元を調査していると聞き、ショックを受けているとAP通信に言いました。


 記事は一部を紹介しました。

 知らない人はいない写真に新説が出ました。私にもショックな記事です。今まで写真に写っている人物に疑問を感じたことはありませんでした。

 しかし、見出された証拠は明白に見えます。

 衛生下士官はジュネーブ条約で自分や患者を守るためにしか攻撃を許されておらず、武器は拳銃だけと決まっています。弾薬ポーチはライフル銃の弾薬用と考えられますから、衛生下士官が身につけるとは考えられません。激戦の中、同じ日に同じ兵士がこうも着衣が変わるとは考えにくいのです。ワイヤーカッターも同様に、衛生下士官には不要です。

 写真の男がシュルツと特定した理由は書いてありませんが、説明がかなりの量になるので省いたのかもしれません。

 2014年のオマハ・ワールド・ヘラルドの記事はまだ読んでいませんが、明日にでも内容を確認したいと思います。(記事はこちら

 しかし、こういうことはあるものだということを私は経験的に知っています。

 当サイトにも、そうした事例を掲載しています。映画『不屈の男 アンブロークン』の原作に日本軍の爆撃機が漂流中の米兵を攻撃したことをでっち上げと主張する人たちがいます。しかし、私の調査で、日本軍の報告書に攻撃の事実が記載されていることが明らかになりました。なんでも調べてみないと分からないものなのです。(記事はこちら

 松本サリン事件では、テレビレポーターが、現場近くの家に家宅捜索に入るのを決めたが、事件に関係あると決まったのではないと言った時、私は胸騒ぎを感じました。レポーターは言葉とは逆のことを考えているように思えました。当初、科学マニアが実験に失敗して事件を起こしたかのような説明がありました。ならば、家宅捜索をすれば、実験機材が見付かるはずですが、庭木の管理用の農薬しか出なかったのです。この時点で犯人は別にいると考えなければならないのに、修正されませんでした。

 北海道で起きた恵庭OL殺人事件も明白な証拠がないことにすぐに気がつかなければなりませんでした。女性が帰宅中にいなくなって殺されたのです。力仕事が必要なことから男性が犯人のはずなのに女性が逮捕されました。

 こういうことは即時気がつくべきことです。後で分かったでは遅い。残念なことに、日本では疑似科学的な考え方で満足してしまう人が多い。熊本地震で南九州の電力が不足する、だから原発止めるなと騒いでいる人がいますが、そんな危機があるなら、すでに九州電力が騒いでいるはず。理屈はしっかりと立てないといけません。

 


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