米特殊部隊がクルド軍の記章を着用

2016.5.29


 military.comによれば、シリアで米特殊部隊がトルコがテロ組織の分派とするクルド人反政府グループの記章を着用するのを止めるように命令されました。

 「これらの記章を着用することは許可を受けておらず、不適切で、是正措置が取られました。我々はNATO軍の同盟国トルコへ同じように伝えました」と生来の決意作戦・合同統合任務部隊の報道官スティーブ・ウォーレン陸軍大佐(Army Col. Steve Warren)は言いました。

 ウォーレン大佐は記章を外す命令は合同統合任務部隊指揮官、ショーン・マクファーランド陸軍中将(rmy Lt. Gen. Sean MacFarland)から直接出されたと言いました。

 「是正措置」は記章を外すことを超えた戒告やその他の懲戒処分を含みません。

 ウォーレン大佐は命令はフランス通信社が、地元指導者によってアメリカ人と特定された、数名の十分な武装装備を持つ兵士が最前線やその後方にシリア民主軍(SDF)と共にいた写真を報じたあとに出されたと発表しました。

 写真中の少なくとも1人がクルド人民防護部隊(YPG)の記章を着用していました。

 ウォーレン大佐は写真中の全員が米特殊部隊の兵士であることを確認しました。

 アメリカはYPGを空爆と補給で支援していますが、その戦闘員はシリア内戦で最も効果的な組織の一つで、トルコはクルド労働党(PKK)の軍事部門と名付けています。

 トルコもアメリカもPKKをテロ組織としました。

 トルコ外務大臣、メブルト・カブソグル(Foreign Minister Mevlut Cavusoglu)は金曜日、アメリカがPKKと共にYPGをテロ組織と呼ぶことを拒否した件で二つの顔を持つといいました。

 「もし彼ら(米当局)が『我々はYPGとこれらのテロ組織は別物だ』というのなら、私の答えはダブルスタンダードで二つの顔を持つということです」とカブソグルはトルコの国連サミットで言いました。

 「米兵がテロ組織のYPGの記章を使うことは受け入れがたいです」と彼は言いました。

 しかし、YPGは傘下グループSDF(アラブ人とキリスト教徒の戦闘員も含む)を支配していて、シリア北東部でコバニ(Kobane)の防衛、ラッカとモスルの主要な接続地でイラクにおけるイスラム国の拠点、シャダディ(Shaddadi・kmzファイルはこちら)の解放でイスラム国に対する勝利をあげました。

 YPGを軽んじてはいませんが、ウォーレン大佐はマクファーランド中将が、我々の焦点はSDF、特にシリア系アラブ人に助言と支援を与えることを明らかにするよう望んでいると言いました。

 YPGの記章を取る命令にも関わらず、特殊部隊界はこうした記章を、世界中で地元のパートナーの部隊を訓練し、助言し、支援する中で着用する、長らく誇りとする歴史を持っていることを認めました。

 YPGの場合、政治的な感覚がそれらを着用することに反対したと彼は言いました。

 写真は、特殊部隊の兵士が最前線、軍事用語では前進線(the Forward Line of Troops: FLOT)やその後方にいるかどうかに関してもう一つの論争を巻き起こしました。

 写真はラッカから30マイル(48km)のファティサ(Fatisah)の近くで撮影され、いくつかの公表された報道ではラッカから18マイル(30km)としています。

 交戦規定では、イラクとシリア両方の米兵は戦闘の役割から除外され、彼らをFLOTの後方に置き続けるために訓練・助言・支援任務に限定されています。

 地元部隊と共に移動する中で、米特殊部隊兵士は自分自身を接触が起こりそうにない場所にいることになっていること、どこかへ行く前に、どこに行くにしても敵と接触しそうにない場所であることを確実にすることになっていると、ウォーレンは言いました。

 一般則は米兵は敵から離れて少なくとも地形特徴に留まるべきとしていると、ウォーレン大佐は言いましたが、彼はイラクとシリアでは最前線は流動的であることを認めました。

 彼が知る限り、シリアの米特殊部隊はまだ地元グループを支援する活動の中で発砲していないと、ウォーレン大佐は言いました。


 記事は全体を簡単に紹介しました。

 軍隊はある程度は服装に関する自由が許されていて、記章などを選ぶことができると聞きます。しかし、今回は別の軍隊の記章を着用したのであり、自軍の中で記章を決めるのとは話が違います。

 これは陸軍の他の部隊では起こりにくい話です。特殊部隊は地元軍と共に行動する場合が多く、その行動規範は他の部隊と違っています。団結心を示すために、地元軍の記章を着用するという、国際法にとっては危ういことをやる場合がある訳です。

 今回はトルコからの批判を浴びたので、着用を止めたということです。

 似たような問題が自衛隊を海外に派遣した場合にも起こり得ることは理解しておく必要があります。この種の問題は時として深刻な事態を招きます。

 


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