ウェストポイントで政治運動疑惑が晴れる

2016.5.23

 少し前の記事ですが、military.comから女性士官候補生が撮った写真が規則違反の問題で議論されたことを報じています。

 卒業前の写真で拳を揚げたポーズをとり、人種と軍服着用時の行為に関して議論を呼んだ黒人女性のウェストポイント士官候補生16人は、ポーズに関しては処罰されないことになりました。

 16人の女性4年生が卒業の準備をする2週間未満に決まった決定は、彼女らが政治活動を制限する軍の規則に違反していないことを見出しました。

 内部調査は候補生たちが政治的な声明を出すつもりがなかったことを見出したと、士官学校の最高責任者、ロバート・キャスレン・Jr.中将(Lt. Gen. Robert Caslen Jr.)は全学生に出した書簡の中でいいました。

 しかし、彼は彼女らは「どのようなシンボルとジェスチャーが誤解され、分裂を引き起こし得るかについて認識の過失」を示し。彼女らは意図と写真の衝撃に対処するための指示を受け入れるといいました。

 オンラインで出回った拳を揚げた写真は、女性たちがブラック・ライブ・マター運動(the Black Lives Matter movement)への支持を表明していたかについて、見た者たちに疑問を抱かせました。この運動は非武装の黒人男性を警察が殺したことへの抗議から起こりました。

 しかし調査は、非公式な学校の伝統に沿った数人の女性たちの写真は、卒業における統一と誇りを表明するためにとっさのジェスチャーを撮影したものであることを見出したと、キャスレン中将は書きました。

 候補生のグループはしばしば、歴史的な写真を真似て、伝統的な礼服を来て写真を撮ります。

 拳を振り上げるのは、1990年のネルソン・マンデラ( Nelson Mandela)の出所からバニー・サンダース上院議員(Sen. Bernie Sanders)の今年の大統領選挙運動まで、何世代にもわたり政治的な抵抗を象徴します。

 それは1960年代に、アメリカ人短距離走者2人に1968年のメキシコ五輪大会の表彰式で、もっと最近ではブラック・ライブ・マター運動の活動家を含めた黒人運動擁護者により使われました。

 一部の観察者は女性たちが制服着用中に不適切に同一視されていたと示唆しました。

 擁護者は女性たちは、勝利を祝ってヘルメットをチームで掲げたり、今年のスーパーボウルのハーフタイムショーでビヨンセが拳をあげたのに似せて、単に卒業を祝っているのだといいました。


 記事は一部を紹介しました。事件の背景に関する記述もありますが、時間がないので省略しました。

 記事には問題となった写真も載っていますが、傍目には何の問題もないように見えます。拳をあげるのは、特にありふれたジェスチャーであり、この写真だけから政治運動ととらえることはできないように思われます。

 以前にも、偵察狙撃隊が部隊名のイニシャルの「SS」という文字を旗に描いたところ、ナチス時代の親衛隊のマークと同じで問題になったことがありました。彼らはそれと知らずにそのマークを使っていたのです。

 しかし、アメリカでは軍人の政治活動には厳しい制限があり、制服を着ている最中に政治的発言をしただけで問題視されます。アメリカ国内では軍隊が警察活動を行えないなど、国内で軍隊解権限を持つことに強い抵抗感が存在します。ここは日本人の米軍に対する認識で大きく欠けているところです。

 日本では、こういう良識があまり理解されておらず、自衛隊高官が在職中から政治的発言をしたり、それについて「自分には表現の自由がある」などと筋違いの発言をしたりします。

 憲法が保障する表現の自由は国民の事由を保護することであり、公務員は憲法を守る立場であって、守られる立場ではないのです。そのため、憲法が保障する自由の一部は制限されるのです。

 アメリカでは現職や退役した軍人が公に大統領を批判する発言をした場合も、必ず謝罪が行われています。最高指揮官を批判するのは軍人として誤った行動と考えられているからです。

 最近、日本では信頼できる組織のトップが自衛隊だという世論調査があるようです。しかし、私は自衛隊には変な現場主義があって、アメリカにあるような政治から一歩退くような姿勢が薄れているのではないかと考えています。

 


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