イスラム国がラッカに対する攻撃を懸念か

2016.5.15


 military.comによれば、米情報機関は、イスラム国が自称首都に対する差し迫った攻撃があると信じ、兵士と装備をラッカ(Raqqa)の内外で再配置するイスラム国の徴候に気がつきました。

 国防総省はラッカの防衛力強化とイスラム国の指導者、アブ・バクル・アル・バグダッディ(Abu Bakr al-Baghdadi)の安全に関する懸念を表明したソーシャルメディア上のおしゃべりにも気がついていたと、生来の決意作戦の報道官、スティーブ・ウォーレン陸軍大佐(Army Col. Steve Warren)は言いました。

 「何を意味するかはともかく、我々はこのラッカでの緊急事態の宣言を見ています」と彼はバグダッドから国防総省につながるビデオ会見で言いました。

 ウォーレンはラッカに対する攻撃が差し迫っているとか、攻勢のための増強が完成に近い徴候はないとしましたが、「我々は敵が恐れを感じていることを知っています」と付け加えました。

 「彼らはシリア・アラブ同盟に加えてシリア民主軍が両方とも彼らの東と西に移動するのを見ます」。

 「これら地域両方はますます治安が安定し、シリア民主軍はますますこれらの地域で彼ら自身の戦闘力を発生できるようになっています」。

 ウォーレン大佐は、ここ数週間のテログループが行った一連の複合的攻撃とバグダッドでイスラム国が犯行声明を出した爆弾事件の急増にも関わらず、イスラム国がシリアとイラクで守勢のままだと言いました。

 最新のイラク軍に対する反撃で、アンバル州(Anbar)のラマディ(Ramadi)の北部と西部のイスラム国戦闘員は政府軍兵士少なくとも20人を殺した拠点を攻撃するために歩兵に引き続いて自爆トラックの爆弾を使いました。

 先週、類似する戦術を用いるイスラム国戦闘員はモスル(Mosul)の北、テレシュコフ(Teleskof)をすばやく占領し、海軍シールズのチャールズ・キーティング四世(Charles Keating IV)が殺された銃撃戦を起こしました。

 シリア戦線では、ホワイトハウスはパルミラ(Palmyra)を奪還するためにイスラム国が再開した動きを阻止するために、ロシアとシリアの努力を支持するいつもと違う立場をとりました。

 「彼らは依然として大きな脅威、危険な敵のままです」とウォーレン大佐はイスラム国戦闘員について述べましたが、彼らはアメリカの空爆作戦で薄く引き延ばされ、もはや集団を補充できる率で外国人戦闘員を徴用できないと強調しました。

 1月にイラク軍が奪還したラマディ近くでの攻撃に関して、ウォーレン大佐は「攻撃者すべては今や死んでいます。不成功の攻撃でした」と言いました。


 これはよい徴候です。イスラム国が周辺で驚異を感じ、守りに入っていることを示しています。まだ、攻勢の準備が整っていないのに、彼らはそう感じているのです。

 これはあるいは、イスラム国の勢力が予想以上に弱くなっていることを示すのかも知れません。

 ウォーレン大佐の言葉では、外部からの増強もほとんどなくなっているようです。いよいよイスラム国が衰退する時期を迎えたことになります。あとは終わりがどれだけ早く来るかと、北アフリカへの転戦を防げるかが焦点となります。

 イラクでは問題は比較的単純です。イラク軍が西部の国境までイスラム国を押し戻し、北部ではクルド軍との共同作業でイスラム国を包囲殲滅します。クルド軍とイラク軍がもめ事を起こさなければ戦いはうまくいくでしょう。

 シリアではもっと複雑です。多数の派閥からなる反政府派だけでなく、シリア軍が存在し、戦いはさらに複雑になります。テロ組織にもイスラム国とアルカイダの派閥があります。イスラム国を殲滅したらアルカイダも倒し、さらにはシリア軍と戦う必要があります。そこでロシアがまた支援に乗り出すかも知れません。ここで大国間同士の大きな戦争に発展する余地が残されています。これは避けなければなりません。

 シリア北部コバネのクルド軍に対する空爆支援を始めた時は、消極的、批判的な意見が非常に多かったのですが、当サイトではそれを支持してきました。その成果がようやく実り始めたということです。

 その背景には民間人に対する誤爆という問題も起こりました。犠牲者の数は少なくありません。 しかし、これなしにイスラム国を衰退に追い込むことはできませんでした。

 このように戦争には利点と欠点があります。いまの日本(大日本帝国でもそうだったかも知れませんが)では、戦争が絶対正しいとか、絶対間違っているという主張が目立ちます。どちらも戦争を見る目としては誤っています。戦争が引き起こす事柄はすべて正視しなければなりません。正しい目的があると考えられる戦争にも、受け入れがたい問題はあるものなのです。

 


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