海上自衛隊がフィリピン演習に参加へ

2016.4.9


 military.comによれば、日本が護衛艦に分類し、中国がヘリコプター空母と呼ぶ646フィート(約197m)の航空母艦が、来週、領有権の主張に関して中国政府に強いメッセージを送るために南シナ海での合同演習に参加します。

 海上自衛隊の「いせ」の初めての海外派遣はフィリピンのスービック湾(Subic Bay・kmzファイルはこちら)での寄港を含みます。そこでは、米兵約5,000人とフィリピン軍3,500人が今週早くに、4月15日まで続く実弾射撃演習「バリカタン(Balikatan)2016」をはじめました。

 日本、オーストラリア、ベトナム、この地域のその他の国の当局者と共にアシュトン・カーター国防長官(Defense Secretary Ashton Carter)は、軍事協力と取り引きを強化する4月10〜12日のインドとの会合に先立ち、来週、バリカタン演習を視察するためにフィリピンに滞在する予定です。

 フィリピン軍司令部キャンプ・アギナルド(Camp Aguinaldo)での今週はじめの記者会見で、太平洋地域の米海兵隊指揮官、ジョン・A・トーラン中将(Lt. Gen. John A. Toolan)は、長官が強い関心を示していることが2つあると言い、ロッキード・マーティン社の高機動ロケットシステム(the High Mobility Rocket System: HIMARS)をフィリピン軍が最初に撃つことに言及しました。

 アメリカとこの地域の同盟国の陸・空・海の演習が増大されることは、中国の攻撃的行動と南シナ海で人口島と滑走路の建設により高まった緊張を反映します。

 日本の海上自衛隊は、先月日本の港を出た「いせ」が、今月末に地域の同盟国と共にインドネシアが主導する「コモド(Komodo)」海軍演習に参加すると言いました。

 先週、ワシントンで行われたバラク・オバマ大統領(President Barack Obama)との会談で、中国の習近平国家主席(President Xi Jinping)は、中国は「航行の自由」に名を借りた南シナ海での主権侵害を受け入れないと警告しました。

 カーター長官はしばしば、中国は南シナ海での自身の行動によって、自身を孤立させていると警告しました。

 先月、長官は中国の南シナ海での行動のために、ハワイ沖で6月に始まるよう予定される、半年ごとに行われる「RIMPAC」演習に中国軍艦を招待することを再検討すると言いました。

 日曜日、日本の潜水艦「おやしお」と水上艦2隻がスービック湾に到着しました。

 それは15年間で日本の潜水艦によるフィリピンへの最初の寄港でした。

 「いせ」のフィリピン到着予定は友好関係を促進することを狙っていますが、中国をけん制する強いメッセージを送ることであると、防衛省当局者は言います。

 「いせ」は対潜ヘリコプター「SH-60J/K」シーホークを運搬でき、日本のメディアは簡単に「MV-22」オスプレイと統合打撃戦闘機「F-35B」のプラットフォームとして使うよう、容易に適応できると、繰り返し指摘しています。

 バリカタン演習と、南シナ海でのアメリカと同盟国による「航行の自由」海軍演習について、中国外務省報道官、ホン・レイ(Hong Lei)は「恐怖を利用し、時機を逸した挑発は提唱者たちにやぶへびになりそうです」と言い、軍事演習は逆に地域的な平和、安定、発展を促進するべきだと付け加えました。

 ホンは「日本はかつて第2次世界大戦中に中国の島と南シナ海を不法に占領しました。我々は日本が軍事的手段で南シナ海に戻ろうとすることに対して強く警告します」と言いました。

 アメリカが草稿を作った、1946年制定の日本の平和憲法により、日本軍は「自衛」の制限を受けていますが、昨年、安倍晋三首相の支援で可決された法律は、日本が集団安全保障で同盟に参加することを認めました。

 批評家は、オスプレイと垂直離着陸機を搭載するアメリカの強襲揚陸艦に似ている「いせ」が、日本軍が攻撃的な作戦への参加することを禁じるのをかいくぐるために、「護衛艦」とされている点を批判します。


 記事中の「集団安全保障」は「collective security」の訳ですが、安保法は「集団的自衛権」を容認したのであり、「集団安全保障」については定めていません。記者の誤解と思われますが、そのまま訳してあります。

 演習の内容も検討しないと、この派遣の意味は分かりませんが、いまはその時間がないので、その部分は省略します。単純な寄港なら、特に軍事的な関係が深まったとはいえないでしょう。

 中国の批判はごく当たり前の線で、これまでの主張と大差ありません。

 「RIMPAC」から中国を締め出すと、中国は孤立感を強めるでしょうね。ここは残しておいた方がよいと思います。関係を白黒はっきりさせないという手法が有効な場合もありますから。

 


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