北朝鮮が対米攻撃の宣伝ビデオを公開

2016.3.27


 alarabiya.netによれば、土曜日に北朝鮮は「最後のチャンス」と題し、潜水艦が発射する核ミサイルがワシントンを荒廃させ、星条旗が炎に包まれて終わる新しい宣伝ビデオを公開しました。(ビデオ映像はこちら

 4分間のビデオはアメリカと朝鮮の関係史をゆっくりと流し、ミサイルが雲の中を急上昇し、地球へ進路を戻し、ワシントンのリンカーン・メモリアルの前の道路に直撃するデジタル的に操作されたシークエンスで終わります。

 議事堂は衝撃で爆発し、朝鮮語でメッセージ「米帝国主義者が1インチでも我々の方に動けば、我々は即座に核で彼らを攻撃する」が点滅します。

 ビデオは北朝鮮の宣伝用ウェブサイト「DPRK Today」に公表され、朝鮮戦争の1968年の米スパイ船プエブロ号の捕獲と1990年代の北朝鮮の最初の核計画危機の映像を示します。

 北朝鮮政府はここ数週間で、大規模な韓米合同演習へ対応し、韓国と米本土に対する核兵器と通常兵器の脅威をほぼ毎日述べ、言葉による掛金を上乗せしました。

 脅威は個人的なものへ転じ、金曜日に北朝鮮の金正恩は韓国の大統領官邸への攻撃を想定した長距離砲演習を視察しました。

 朝鮮2ヶ国の緊張は北朝鮮が1月に5度目の核実験と1カ月後の弾道ミサイル実験を装った人工衛星打ち上げ以来、増加しました。

 北朝鮮は、核攻撃の脅威を新しいレベルにして、朝鮮半島の遙か向こうへ展開し、核攻撃の事態において報復する可能性を持たせる潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の能力を獲得することを模索しています。

 北朝鮮はSLBMの成功した実験と呼ぶものをいくつか実行しました。

 しかし専門家は、これらのテストの真偽性を疑問視し、北朝鮮政府は水中のプラットフォームからの「飛び出し」テスト程度のものを行ったことを示唆しました。

 時事通信によれば、北朝鮮軍前線大連合部隊の長距離砲兵隊は26日、韓国の朴槿恵政権に対する「最後通告状」を発表し、金正恩第1書記ら首脳部への攻撃を想定した演習について「公式謝罪」や責任者の「公開処刑」を要求しました。その上で、応じなければ「軍事行動に移る」と威嚇しました。朝鮮中央通信が伝えました。


 alarabiya.netの元記事には長距離砲が砲撃を行う写真が掲載されていて、20門を越える大砲が同時に火を噴く場面が写っています。この写真に見える大砲の配置は通常の砲兵隊の配置と違い、迫力のある写真を撮るために意図的に大砲を並べていることが分かります。

 普通大砲は4門でグループを作り、1門が基準砲となり、目標に向けて照準します。発射位置と目標の位置、高低差から砲身を向けるべき方位と角度が決まります。他の砲は基準砲と同じ方位と角度に照準するので、着弾のパターンは基準砲の周辺に他の砲の砲弾が落ちる形になります。これで目標を爆発で包囲し、破壊するというやり方です。それぞれの砲が自分に最適な方位と角度で発射する方法だと、間違いが起きる危険があるため、こういうやり方を用います。

 写真のやり方だと、この方法はとれないので、これは迫力のある写真を撮るために配置した、命中精度を考えないやり方だということになります。つまり、演習だというよりは、写真撮影のための活動です。

 ビデオ映像は北朝鮮国民をだまし、こういう攻撃が可能だと信じ込ませるためのものに過ぎません。このような能力を北朝鮮は持っていません。

 「弾道ミサイル実験を装った人工衛星打ち上げ」は私の意訳ではなく直訳です。日本政府は「人工衛星を装った事実上の弾道ミサイルの打ち上げ」といいますが、中東のメディア「alarabiya.net」はこのように書いています。

 北朝鮮が潜水艦発射ミサイルを実用化したという話は到底信じられません。たとえ、それに成功しても、それは韓国と日本の脅威にはなっても、米本土には脅威を与えないのです。原子力潜水艦のように長期間水中を航行できない、数日間しか潜航できないディーゼル潜水艦にSLBMを搭載しても、それほど大きな脅威にはなりません。アメリカを射程に入れるところまで見つからずに進出できないからです。

 最近になって、北朝鮮はいきなり原子爆弾の小型化、個体式ロケットエンジン、SLBMの開発に成功したと叫び始めました。これらの技術が一気に実現するとは考えにくいものがあります。通常兵器を搭載した弾道ミサイルではさほどの脅威にはなりません。1発で街の区画を一つ破壊できる程度です。

 北朝鮮が軍事行動をちらつかせても、実際に動員が行われていないのですから、心配は不要です。「DPRK Today」に掲載されている他のビデオ映像を見ても、北朝鮮の実状はかなり厳しそうです。「攻撃はすんでのところで思い止まった」という発表が適当な時期にあるでしょう。

 


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