イスラム国の福利厚生が空爆で激減か

2016.2.17


 military.comによれば、イスラム国は資金不足に直面し、全領域で給料を大幅減額し、ラッカ(Raqqa)の住民に公共料金を闇市場のドル建てで支払うよう求め、拘留者を一人あたり500ドルで釈放しています。

 昨年秋から彼らの資金を数百万ドル損ねた同盟国の空爆とその他の手段のおかげで、自身の通過を鋳造したことを誇った過激派は支出の支払いで苦労しています。よい給与と新婚・出産ボーナスで民兵に忠誠を確立したものの、イスラム国はエナジードリンクとスニッカーズの無償配布のような小さな特権すら提供するのを止めています。

 脱出者と未だその統治の下にある者たちによると、都心で生活必需品が減少し、物資不足と広範なインフレを招いています。数週間にわたって集められたインタビューには、ラッカに家族と知人のつながりがある脱出者3人、モスル(Mosul)の住人、イスラム国はリビアを含めて代替の資金の流れに取りかかっているというアナリストが含まれました。

 シリアの拠点ラッカでは、街から逃れた人々によれば、イスラム国は12月から半減され、電気は制限され、基本的物資の価格は手が届かないほど値上がりしました。

 「民兵たちだけでなく、裁判所から学校まで公務員は給料を50%に削減されました」と現在トルコのガジアンテップ(Gaziantep)に住み、街と緊密に連絡するラッカの活動家は言いました。しかし、それは空爆と戦いで武器の損失を交換し、戦闘員に真っ先に金を払うための金を必要とするイスラム国のギャップを埋めるのには十分ではなさそうです。イスラム国の書面を明らかにした「the Middle East Forum」の研究者、アイメン・ジャワド・アル・タミミ(Aymenn Jawad al-Tamimi)によれば、これら2つの支出はイスラム国の予算の3分の2を占めます。

 アブ・アフマド(Abu Ahmad)という仮名のラッカの活動家によれば、この2週間で、イスラム国は税金、水道と電気料金の支払いにドルだけを受け取るようになりました。「すべてはドルで支払われます」と彼は言いました。彼の説明は、アフマドと同じく、まだ市内にいる家族と知人のネットワークに頼るもう一人の元ラッカ住民により強まりました。

 アル・タミミはラッカでの戦闘員の給与削減を発表する指令を見つけました。「イスラム国が直面する特別な状況のため、すべてのムジャヘディンに支払う給与を半分に削減すると決定しました。この決定からは地位が何であれ、誰も免除されることは許されません」

 これらの状況は、かつての主要な収入源、石油の世界的な価格の劇的下落、現金貯蔵庫と石油インフラを狙う空爆、補給路の切断、そして決定的なのはイスラム国の支配地域での公務員への給与支払い停止を含みます。

 マンビジ(Manbij)、ジャラブラス(Jarablus)、アル・バブ(al-Bab)を含めたイスラム国が主要都市を支配するアレッポ州(Aleppo)でのロシアが支援するシリア政府の攻勢もイスラム国に対する圧力となっています。政府軍と同盟する民兵はイスラム国の要塞とみなされる街へ向けて前進し、多くの民兵に自分の家族をラッカに送らせました。

 アル・バブからの脱出者は、当地の低レベルの戦闘員は不平を言い始め、町の人々はイスラム国がシリアとイラクの石油施設、補給路と財源を遮断する破壊的な空爆について話すのを耳にしたと言いました。ファーストネームのオーサマ(Oussama)という仮名の住人は、アル・バブの住民数十人がイスラム国からの命令を無視して脱出したと言いました。

 「欲求不満が感じられます。彼らの士気は下がっています」とオーサマは戦闘員たちについて述べました。

 現在ベイルート(Beirut)に住む元ラッカの住人は、野菜と砂糖の留まることを知らない価格をカバーするためにドルで送金していると言いました。住人は妻と赤ん坊がまだ街に住んでおり、安全のために名前が使われることを望みませんでした。現在、トルコのがガジアンテップに住む別の元住人の一人は、モスルへの道路は昨年後半に遮断され、価格は素早く上昇し、ガスは25%、肉は約70%、砂糖の価格は2倍になったと言いました。

 昨年、イスラム国がゆっくりと地歩を失ったイラクでは、9月にイラク政府が、この地域に囚われた人々へ支払われる人道的なコストに関して数ヶ月間迷った後、イスラム国の支配下にある領域の中で政府職員の給料を削減しました。イラク当局はイスラム国が20〜25%の範囲で給料に課税したと見積もり、アナリストと政府は現在、毎月最低1000万ドルを損失したと見積もります。この金の損失と米主導の現金倉庫の爆撃の間で、米当局者はイスラム国の富みを減らすことができたと楽観視します。

 「我々は彼らの資金の流れに若干の影響を及ぼしているのを見ています。さらに、彼らが財政を管理する様々な違法な手段のために、丁度いくらかかを把握するのは困難ですが、我が軍が現金保管庫を破壊する努力をするのを見ています。そして、私はそれが明白な影響を出すという我々の希望と予想であると考えます。その規模に関しては、私はいうのが困難と思います」と、オバマ大統領の対テロ顧問のリサ・モナコ(Lisa Monaco)は言いました。

 イラクのファルージャ(Fallujah)では、かつては月に400ドルを稼いだ戦闘員にはまったく支払われておらず、住人によれば、食糧は1日2食に減らされました。匿名を希望する住人の説明は、住人は1,000ドルを払えば街を離れられると述べたファルージャに囚われたもう一つの家族により裏づけます。

 イスラム国はファルージャの住民に500ドルで拘留者を釈放することも認めたと、ファルージャにいる家族はAPに言いました。

 モスルの住民はイスラム国は厳格な服装規定を守らない市民に、かつてのように鞭打ちではなく罰金を科し始めたといいます。すでにイスラム国は価値のある物は何でも没収したので、彼らはこれが財政問題に対する対応だと考えていると言います。

 米当局者は、戦闘員はより移動と出費を制限されると言いました。しかし、イスラム国は未だに厖大な領域を支配し、シリア政府は彼らに対して僅かに獲得をみただけです。一方でイスラム国は彼らを支援するかどうかで迷う者たちにその脅威と支払いの組み合わせを維持します。

 「The Soufan Group」は1月27日の分析で、イスラム国は、空爆に直面しない、より圧力の小さいリビアで代替の資金の流れを模索していると言いました。そして、ラッカの脱走者が言ったにも関わらず、戦闘員は未だ食糧カゴと無料の電気を手にしているものの、スニッカーズとエナジードリンクはもらっていません。

 アル・タミミは「私はこれがイスラム国に致命的とは思いません」と言いました。「私はまだ、内部の反乱が結果になりそうだと思いません。それはより段階的な腐敗と衰退のシナリオのようです」。


 重要な記事なので全体の抄訳を紹介しました。

 この記事は国際的な同盟がイスラム国の財政を圧迫していることを意味します。そこで、リビアへ転戦するのではないかという可能性は、当サイトでも以前から指摘していますが、現実味を帯びてきています。通貨の設定も無意味だとしてきましたが、ドルの方が強いのでは、到底、イスラム国はアメリカに勝ったとは言えないでしょう。おまけに、スニッカーズやエナジードリンクのような、西欧文化を象徴するような物品を戦闘員に配布していたとはお笑いです。

 これだけの資金不足が起きると、イスラム国はその規模を縮小することになりそうです。

 まず、本来のメンバーではなく、中央アジアから資金援助の見返りのために参加したテロリストたちは、目的の資金援助が困難になれば、自分たちの国へ帰るでしょう。

 イスラム国が領地を失うことは住人からとる税金も減るということです。なので、あまり大きな後退はできません。反イスラム連合はそこにつけ込むことです。支払いを減らすことで領地はそのままにできますが、士気は落ちます。脱走も増えるでしょう。戦闘力が落ちることで、最前線ではさらに領地を失うことになります。カニが一本ずつ脚をもがれていくような感じで、勢力は衰えていきます。それを促進するような戦略が必要です。そして、リビアへの転戦を防止することです。

 ようやくイスラム国を封じ込めることで前進をみた感じがします。

 


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