テポドン2号は本当に進歩したのか?

2016.2.10


 テポドン2号に関して、その後に出てきた報道にコメントします。

 38north.orgがさらにテポドン2号打ち上げの準備をさらに報じていますが、気になる部分だけ紹介します。

 2月6日の商用衛星写真は4台の小さな車列が水平処理棟から発射台へ移動するのを示します。車列先頭の小型車2台は車両を誘導しているようです。3台は、恐らくは銀河4号衛星ロケット(テポドン2号)の3段期待である長さ約9.4mの物体を運ぶ大型トレーラーです。4番目の車両は支援法車両かペイロード部分と思われるトレーラーのようです。

 産経新聞によれば、韓国国防省は9日、北朝鮮が発射した長距離弾道ミサイルについて「安定性の面で改善された」との内容の分析結果を発表した。

 今回のミサイル発射は分析の結果、前回12年12月の発射と極めて似ており、北朝鮮は2回続けて、ミサイルへの搭載物を地球周回軌道に乗せることに成功した。この点について、韓国軍関係者は、少なくともミサイルの構成部品の信頼性が向上したとみており、ミサイル発射の「安定性が改善された」と分析している。

 時事通信によれば、米戦略軍は8日、北朝鮮による事実上の長距離弾道ミサイル発射後に軌道を周回していることを確認した物体二つのうち一つについて、人工衛星「KMS4」として識別番号を付与したことを明らかにした。

 KMS4は、北朝鮮が打ち上げたと主張する地球観測衛星「光明星4号」を指す。

 戦略軍は残る一つの物体も「UNHA3」ロケットの本体として登録した。ミサイルの3段目とみられる。UNHA3は2012年に発射された「銀河3号」を示す。北朝鮮は今回のミサイルを「光明星号」と名付けているが、米軍は前回同様、銀河3号の名称を用いた。

 一方、米国防総省のクック報道官は記者会見で、迎撃システム、終末高高度防衛(THAAD)ミサイルの在韓米軍配備に関し「一刻も早く実現したい」と述べ、数日中に米韓の公式協議が始まると見通しを示した。AFP通信によれば、配備命令が出れば、1~2週間で展開可能という。


 記事は一部を紹介しました。

 報道を見ていると、専門家が一様にテポドン2号の性能が向上したと述べるのが気になります。

 現段階で、私は今回打ち上げたテポドン2号に技術的進歩は見られないと考えています。軌道に関する情報が少ないので、確たることは言えないものの、向上したことを示す証拠は見当たりません。

 機体は前回と同じもので、制御方法はまだジンバル式が使えないことを示していました。1段機体と2段機体は予定より飛びませんでした。これはペイロードの重量を増やしたことや、1段機体の自爆用爆薬を搭載したためかもしれません。3段目は地表に落下させる機能を欠いており、軌道に浮かんだままです。これでは進歩したとは言えません。他国の宇宙開発関係者は笑っていることでしょう。

 逆に可能性を軽く見積もる意見もあり、韓国軍が回収したフェアリングを見て、大きさが小さいから核弾頭は搭載できないと述べた人がいました。ペイロード部分は取り替えることができます。今回は人口衛星ロケットの打ち上げと設問しているのですから、人口衛星用のフェアリングがついているのが当然です。他国の最近のロケットはペイロード部分が3段機体より直径が大きいのが普通です。人口衛星が大型化したからこういう形になったのです。北朝鮮も核弾頭を完成させれば、より大型のペイロードを取り付けることになります。現在でも、飛距離が縮まるのを我慢すれば大型で重いペイロードを搭載できるはずです。従って、テポドン2号に核弾頭を搭載する能力がないとはいえません。

 今回の打ち上げで着目すべきは、準備期間が短く、隠蔽がうまくなったことです。

 それなのに、38northが報じたように、6日に3段機体を発射台に運搬する写真が撮影されたことは、打ち上げを前倒ししたことに関係があるのかも知れません。これまで機体の移動はまったく捉えることができなかったのに、3段機体は日中に運搬するのが観測されたのです。本来はその日の夜に運搬、組み立てて、8日に打ち上げる予定だったのではないかと推測します。それが急な予定変更で、日中に移動することになった可能性があります。トレーラーはゆっくりと動くので、日中ならかなりの確率で捉えられるはずです。

 それまで慎重に隠してきたのを止めたのは、そうまでしても急いだ理由は、自衛隊の展開状況から、PAC-3の展開が一部間に合わないことを狙ったのかも知れません。そうだとすると、金正恩の予定を変える必要があることから、彼が自ら指示した可能性があると考えます。もちろん、これは推測に過ぎません。彼らは我々に手がかりなどくれません。こちらが主体的に判断して行動する必要があるのですが、今回の防衛省の対応はその真逆だったと言えます。


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