7月の戦闘で自衛隊宿営地近くに砲撃

2016.11.28


 朝日新聞によれば、南スーダンの首都ジュバで7月に起きた政府軍と反政府勢力の大規模戦闘で、国連平和維持活動(PKO)に参加する陸上自衛隊が駐留する国連宿営地の建物などに被害が出ていた。自衛隊の宿営地と近接するバングラデシュ隊のエムラン・ブイヤ隊長(39)が、朝日新聞の取材に明らかにした。

 隊長によると、2日間にわたり、自衛隊の宿営地近くで建設中の9階建てビルの方向から砲撃があった。「バングラデシュ隊の宿営地に砲撃してきた。国連施設内に逃げてくる女性や子どもらが危険にさらされていたので応射した」

 隊員は単発式の銃で計44発応射。バングラデシュ隊の宿営地では隊舎の一部が壊れたほか、監視所、車両の窓などが破損したという。「人がいたら、致命的な結果になっていた」「相手はよく見えず、砲撃音から方向がわかった。我々を意図的に狙ったとは思わない」などと述べた。

 バングラデシュ軍は、自衛隊と同様に道路整備などを担う施設部隊約270人を派遣する。7月の戦闘は、現在の部隊に交代して1カ月後に起きた。「その前は平穏だったので、戦闘は想定外だった。隊員や市民に被害が及ばないようにすることを考えた」と語った。

 南スーダン政府軍によると、建設中のビルには反政府勢力が立てこもった。戦闘で政府軍5人、反政府勢力23人が死亡した。反政府勢力は弾丸を撃ち尽くし、避難民を装って隣の国連宿営地内に逃げ込んだとしている。

 自衛隊の宿営地は、バングラデシュ隊の宿営地から数百メートル離れている。自衛隊は7月下旬、敷地内に流れ弾とみられる弾頭が複数落下していたと発表したが、当時の状況の詳細は明らかにしていない。


 記事は一部を紹介しました。

 記事だけでは、状況がはっきりしませんので、記事の図からさらに分かりやすい図を作成しました。

図は右クリックで拡大できます。

 この衛星写真は今年8月30日に撮影されたものなので、7月の戦闘時と環境はほぼ同じです。

 赤い線で囲まれたのが自衛隊宿営地、青い線がバングラデシュ軍宿営地、緑の線が砲声が聞こえた方向にあった建設中の建物です。

 建物の一番近いところで、自衛隊は約60m、バングラデシュ軍は約300mです。明らかに自衛隊の方が近くで、小銃の有効射程範囲内です。隣接する建物から攻撃があったとすれば、これは日本国民に報告すべき事項だったといえます。その建物で政府軍と反対勢力軍が戦闘を行い、死者が出ているのです。通常、アメリカでは米軍基地にこれほど近い場所に敵が進出したら報道されます。これだけの危険があっても、政府は国民に何も知らせようとしません。

 砲弾の種類は不明ですが、迫撃砲かRPGかのいずれかでしょう。屋上に迫撃砲を据え付けて、空港施設を狙うつもりだったのかも知れません。これはバングラデシュ軍や南スーダン政府に聞けば分かるはずですが、記者はなぜかやっていません。攻撃があった日も明記しておらず、何か遠慮したかのような書き方です。記者がそのまま書くとまずいものをつかんだ可能性も十分にあります。

 あるいは、政府軍兵士が国連施設内に逃げ込んだ避難民を狙ったのかも知れません。この場合、RPGが使われた可能性が高まります。

 防衛省は7月下旬になって、ようやく流れ弾が敷地内に着弾していたと発表しましたが、戦闘は7日から起きており、その際に着弾したと考えた方がよさそうです。騒ぎが収まってから発表するという、いつもの悪い癖を繰り返しているのです。こんな広報の態勢では、有事に対応できないでしょう。

 目と鼻の先の建物で数十人の兵士が銃撃戦を行い、火砲もあったかも知れないという状況です。

 国連施設を直接狙ったのではないから危険はなかったとはいえません。反対勢力が避難民を装って、国連施設に逃げ込み、南スーダン軍が押しかけて引き渡しを求める可能性がありました。実際、政府軍が国連施設内を砲撃した事例が報告されています。日本国際ボランティアセンターのブログが実体をよく報告しています(該当記事はこちら)。

 反対勢力が首都に攻め上れば、戦闘の強度、規模はこれでは済みません。実際、そういう場合に国連軍は何もできないだろうという予測しか立ちません。



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