反対勢力が首都ジュバへの攻撃を示唆

2016.10.31


 南スーダンの反対勢力と政府軍の総力戦がかなり差し迫っている可能性があります。

 sudantribune.comによれば、30日、レイク・マシャル(Riek Machar)が率いる反対勢力は西エクアトリア地域(Western Equatoria)のグレーター・ムンドリ地区(Greater Mundri)での戦闘で、政府軍兵士99人を捕らえました。

 マシャルの報道官、ジェームズ・ギャトデット・ダク(James Gatdet Dak)は日曜日に、反対勢力軍がムンドリ郡のカデベ軍事基地(Kadibe)を占領した時に最大99人を捕らえたといいました。

 東ムンドリ郡のコミッショナーは木曜日に、カデベが2日間にわたり反対勢力軍に支配されたものの、最後には政府軍に追い払われたといいました。

 「我が軍はサルバ・キール政権(Salva Kiir)の兵士99人を捕らえました。ウェズレー・ウェレバ将軍(General Wesley Weleba)の全体指揮下にある勇敢な軍隊は、ムンドリのカデベの軍事基地を占領した時に彼らを捕まえました」とダク氏はいい、大量の武器と弾薬も手に入れ、持ち去ったと付け加えました。

 彼は、この地域で捕らえた政府軍兵士49人は、カデベ基地で訓練中だった新兵だったと付け加えました。

 報道官は、彼らの軍隊がヤンビオ郡(Yambio)の警察署を占領し、店舗の弾薬すべてを手に入れたと主張しました。

 ムンドリとヤンビオの当局者はどちらも、カデベでの戦闘と弾薬が反対勢力に奪われたことを認めました。

 ムンドリとヤンビオはどちらも、首都ジュバの西に位置します。

 彼は、戦闘は反対勢力が地域を占領したとされる中央エクアトリア(Central Equatoria)で、ジュバの南にあるラニヤ郡(Lainya)周辺、東エクアトリア(Eastern Equatoria)でジュバの東のエルサレム地区(Jerusalem)でも起きたと説明しました。

 ダク氏は、戦闘は上ナイル州(Upper Nile)とユニティ州(Unity)の多くの場所で対立する軍隊の間で起こり、石油を生産する州の州都、マラカル(Malakal)とベンティーウ(Bentiu)の両方を占領するのは時間の問題だといいました。

 彼は、和平協定を復活させるために政治的解決がみつからないなら、彼らの軍隊がすぐにジュバに移動し、ジョングレイ州(Jonglei)の州都、ボル(Bor)と共に占領すると主張しました。

 「もし、来る数週間で和平合意を復活させる政治的解決がみつからないなら、我が軍は準備し、指導層から法と秩序を回復し、国に平和と安定をもたらすために首都ジュバを占領するよう命じられるでしょう」と彼はいいました。

 彼らが武器と弾薬を貯蔵し、対立する軍隊の動きが探知されるとされる中、両サイドは数週間から数ヶ月で総力戦を準備しているようです。


 記事は一部を紹介しました。

 この記事は非常に重要です。大規模な戦闘が差し迫っている可能性を認めなければなりません。

 先に、これからの数ヶ月間は乾期で、大軍の移動が容易なことから戦いの季節であると書きましたが、両軍ともそのための準備をしているようです。国連が武器禁輸を決定すると、武器弾薬の入手が困難になる可能性もあり、決着をつけるなら、今回の乾期の間ということになります。当然、予想されたことでした。

 ダク報道官が意図的に反対勢力の力を誇張して、政府に圧力をかけている可能性もありますが、本当なら、7月の戦闘とは比べものにならない強度の高い戦闘が、派遣部隊がいる首都で行われる可能性があります。

 7月の戦闘でも、平和維持軍は出動できず、基地防衛に徹しました。来る戦闘は政権奪取のための戦いであり、政権維持のための戦いです。熾烈になるのは当然です。

 両軍とも、国連軍を直接の標的にする余裕はありません。ほっておけば中立を保つ国連部隊は放置して、対立する敵軍にのみ攻撃をしようとするでしょう。

 しかし、何が起きるか分からないのが戦場です。流れ弾や不正規弾などが部隊敷地内に着弾する可能性があり、場合によっては、兵士が侵入することもあります。直接狙った場合でなくても、大きな被害が出るのが戦闘です。シリアの空爆で民間人多数が巻き添えになっていることを考えれば理解できることです。武装ヘリコプターが撃った銃弾やミサイルが部隊敷地内に着弾すれば、死傷者が出ます。

 反対勢力がダク氏があげた街すべてを占領したとすれば、それは反対勢力の戦略的勝利だといえます。本当にここまで状況が進んでいるかは分かりませんが、少なくとも戦闘が起きているとしてあげた州は首都を囲むように位置していて、それぞれから同時に首都に攻め上れば、政府軍は分散防衛を強いられ、苦しい戦いとなるかも知れません。

 こういう分析を日本政府がしているのかは知りませんが、まさに外務省の海外情勢音痴が露呈しているといえるのではないでしょうか。かつて、後藤田正晴氏が「外務省の情勢分析は的中しない」と断言したことが繰り返されていると、私は考えます。

 


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