軽装甲機動車を配置する意味は何か

2016.10.25


 駆けつけ警護の訓練公開について、さらに続けます。

 映像を見て気になったのは横隊の両横に軽装甲機動車2台を配置することです。側面からの攻撃を警戒してのものと思われますが、有効性には疑問があります。

 暴徒が銃を持っていた場合、跳弾が発生して、隊員を負傷させる可能性はすでに書きましたが、別の懸念もあります。

 軽装甲機動車上部に5.56mm機関銃MINIMIが取り付けられていますが、これをどう使うつもりなのでしょうか?。軽装甲機動車は全高が1.85mですので、MINIMIの銃身は多分2.00mを少し越える位置にあるのでしょう。MINIMIの銃身を地面に向けないと、大抵の人の頭の上しか撃てないのです。MINIMIの銃身を何度地面へ向けられるのかが分かりませんが、どの写真を見ても銃身は水平で、下を向いたものはありません。これで近接戦闘を支援できるのかが疑問です。横隊よりも後ろに置いた方が適切に思えます。そうしないのなら、群集が遠い段階で発砲するしかなく、横隊と共に前進する意味が分からなくなります。

 理論上、地面が水平なら、銃身を1度下げると弾は約115m先に、2度なら約57m先、3度なら約38m先、4度なら約29m先、5度なら約23m先に着弾します。ここから近くは死角ということになりますので、かなり先で撃たないと隊員の援護はできない。MINIMIの出番はないことになります。

 群集を横隊が対応するような接近した段階では、MINIMIは完全に死角で、何の役にも立ちません。群集は銃座によじ登り、銃を奪おうとすらするかも知れません。

 盾を持った隊員が手足が届く場所が攻撃範囲なのに対して、MINIMIは長距離兵器です。それを同じ場所に置くことが正しい戦術なのかが疑問です。

 その他、軽装甲機動車に発煙弾発射機がついていないとか、群集には警告音でしか警告を出せないのか、現地の通訳によるアピールが可能なのかなども気になります。

 

 


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