兵士の薬物問題に悩む米軍

2016.1.19



 military.comによれば、オピオイド鎮痛剤(ヘロインの化学的同等物)を使う現役兵士と退役軍人は、軍事訓練と戦闘が遙かに多く怪我につながることから、民間人よりも遙かに頻繁に利用すると研究は示しました。

 2011年のアメリカ公衆衛生協会の報告は、退役軍人の患者は命に関わる過量率が国の平均の2倍近いことを見出しました。その他の研究は、オピオイド鎮静剤を処方される人々が40倍ヘロインに溺れていそうなことを示します。

 9月、「The Fayetteville Observer」は、過去5年間にフェイエットヴィル退役軍人省医療センター(the Fayetteville Veterans Affairs Medical Center)とウーマック陸軍医療センター(Womack Army Medical Center)で処方されたオピオイド鎮痛剤の量を調べるため、連邦情報公開法に基づく要請を起こしました。要請の理由は中毒を防止する新しい計画が両センターが鎮痛剤の処方量を減らしたかを判断することでした。どちらの病院もまだ情報を提供していません。

 懸念は合法的にオピオイド鎮痛剤を手に入れるのが難しくなると、大抵それらに没頭する退役軍人はヘロインに向かうということです。それは特にフェイエットヴィルで真実でした。そこで鎮痛剤の使用はとても一般的です。米国麻薬取締局の統計は、オキシコドン(鎮痛剤パーコセットの主要成分)とその他の常用性鎮痛剤が、フェイエットヴィルの薬局で2011年にノースカロライナ州のどこよりも多く売られたことを示します。僅かに非力ながらも潜在的に危険な鎮痛剤のヒドロコドンの販売量は国内3番目にランク付けされました。それらの多くの処方はウーマックとフェイエットヴィルの医師によって書かれました。観測筋は2013年に両病院で処方された鎮痛剤の量を「受け入れがたい(訳註 苦い丸薬の意味あり)」といいました。

 これらの統計は2001年に退役軍人省が処方したオピオイド鎮痛剤のヒドロコドンを1,130人の患者に処方したことを示します。2012年までにこれらの処方は11年間で47,586人に増え、4,100パーセントの増加になりました。

 鎮痛剤の処方はフォート・ブラッグ基地(Fort Bragg)で現役兵士にも増加しました。2012年に基地の現役兵士の約3分の1にあたる18,000人の兵士がウーマックを通じて総計46,870個のオピオイド鎮痛剤を受け取りました。同じ傾向は連邦の退役軍人省のシステムを通じて起きていました。

 退役軍人省によれば、オピオイド鎮痛剤を得る退役軍人の患者は2004年と2012年の間に約77パーセント増加しました。2012年、退役軍人省の患者の3分の1が痛みに対処するためにオピオイドを受け取ったと同省は報告しました。彼らは問題を認識して、国防省と退役軍人省は代替の治療方法に変えることで、オピオイド鎮痛剤の使用を重視するのを止め始めました。2013年、退役軍人省はミネアポリス市でオピオイド安全運動を始めました。そこの治療施設8カ所で、運動は高用量のオピオイド使用を50パーセント減らしたことを示しました。

 いくつかのオピオイド削減運動が効果を証明したものの、その他は問題に満ちていました。昨年、麻薬取締局は薬が乱用されないことを確実にするために、退役軍人への鎮痛剤の処方を90日から30日ごとに差し替えることを求め始めました。しかし、公表された報告書によると、退役軍人省施設の未処理の仕事は多くの患者が薬を使い果たす前に医師に会うことを妨害しました。それは鎮痛剤におぼれる退役軍人が街角でより安くて簡単に見つかるヘロインを買うことへ導きました。

 しかしこれまでのところ、少なくとも中毒の専門家は退役軍人のヘロイン使用はフェイエットヴィルでの主要な問題ではないといいます。毎日、約600人が処方のカウンセリングと制御されたモニタリングのためにフェイエットヴィルのカロライナ治療センター(the Carolina Treatment Center)を訪問します。センターは人々をヘロインと処方鎮痛剤から引き離すため、中毒治療とメタドンとその他の薬物の使用からの回復を専門とします。

 院長エイミー・ガーナー(Amy Garner)は、15年前に同センターで働き始めた時、ベトナム帰還兵のグループがヘロイン中毒のコンサルタントと支援を受けていたと言いました。彼女は現在はそうではないと言いました。センターを訪れる日に600人の患者約40人が退役軍人です。ヘロイン中毒はこの40人の2人だけだと彼女は言いました。退役軍人全員が40歳を越えています。

 マイローバー・リース・ホーム(the Myrover Reese home)の所長、グレッグ・ピッツ(Greg Pitts)はその意見に同調しました。「私はそれが退役軍人の間で一般的とは言いません」。

 ケープフィア渓谷医療センター(Cape Fear Valley Medical Center)、行動保健・睡眠センター(Behavioral Health and Sleep Center)の理事、ジョン・T・ビガー(John T. Bigger)は、地元で退役軍人の間にヘロイン使用が増えた統計はないと言いました。しかしビガーは、聞いた話ではそのように見えると言いました。「私が得た説明では、彼らは実際の派遣ではなく大半は訓練で、何らかの形で負傷します。彼らは処方された鎮痛剤を手に入れます。そして除隊する時になると、中毒患者になっているのです」「そして突然、彼らは軍務を離れ、もう処方はもらわないので、ヘロインを手に入れるために街角に行きます」。ビガーは薬物問題と戦うためには早期教育が理想的な方法だと言いました。彼は中毒の下にある問題に対処することも大事だと言いました。それはカウンセリングを通じて達成できます。

 フェイエットヴィル退役軍人省施設の専門家へのインタビューは拒否されました。書面の声明で、センターの広報はオピオイド鎮痛剤を乱用する退役軍人を助けられる資源について概説しました。センターはタバコ、アルコール、薬物を乱用する退役軍人のために薬物乱用治療プログラムと呼ぶ外来治療を提供します。

 2012年、退役軍人省はオピオイド障害の退役軍人のために依存症治療プロトコルを設置しました。その前に、退役軍人たちは別の退役軍人省医療センターから在宅治療プログラムを紹介されました。2013年、薬物乱用プログラムは鎮痛剤に特化したサブプログラム、オピオイド置換治療プログラムを設置しました。そのイニシャティブの中で、退役軍人たちはオピオイド依存症のために食品医薬品局が承認した治療を支援する薬品、サボキソン(Suboxone)を提供されました。

 退役軍人省によれば、退役軍人はオピオイドと他の薬物を自制し、継続する対処技術も教えられました。

 2013年にプログラムが始まってから、退役軍人73人はサボキソンを処方され、57人はより高レベルの在宅治療を紹介されるか、参加を断られました。

 2014年、薬物乱用治療プログラムは退役軍人と家族にオピオイド大量摂取を避けるための教育を拡大しました。この教程は食品医薬品局が承認した薬品、ナロキソン(Naloxone)の情報も提供しました。フェイエットヴィル復員軍人援護局は約100人の退役軍人にナロキソンのキットを処方したと言いました。薬物乱用治療プログラムのトップの看護士は2014年にかかりつけ医と「レストアグループ(Restore Group)」を作るために協力しました。グループは退役軍人にアヘン剤と薬物、アルコールを混ぜ合わせる危険性を教育します。約125人の退役軍人がこのグループを紹介されました。

 ウーマックで、疼痛処理と中毒のの専門家たちは、兵士のヘロイン中毒の切迫した傾向はないものの、支援のための準備された資源は持っていると言いました。薬物乱用が一般的でない理由の一つは、国防省に無作為抽出の薬物テストというしっかりした抑止力があるためかもしれません。現在、薬物使用のテストで陽性反応なのは現役兵士の約2パーセントだけですと、ウーマックで精神医学と中毒を専門とする、ユージン・キム医者(Dr. Eugene Kim)は言いました。キム医師はアフガニスタンとイラクは兵士が処方された鎮痛剤を使う必要がある負傷の一因となったと言いました。しかし、それは兵士たちがヘロインに切り替えたことを意味しないと彼は言いました。「我々はアメリカというパイのスライスですが、これはより大きな社会的な問題です」「民間の世界では、医師が(処方鎮痛剤を)中断したら、金がなければ、ヘロインに手を出すかもしれません」「我々は同じような大きさを軍隊の世界で見ていません」「我々はヘロインへの転向を見ていません」。

 ウーマックの疼痛管理の専門家は、処方鎮痛剤を使う人々を用心深く見ていると言いました。

 ウーマックの疼痛専門家、マイケル・バートズゼッグ少佐(Maj. Michael Bartoszek)は「ハイリスクの者がいれば、彼らは民間人の世界でみたいに押しのけられるのではなく、引き入れられます」と言いました。

 民間人の世界では、オピオイドを処方された患者は中毒にならず、薬剤を売ったり、溜め込まないという約束に署名する書面を与えられます。書面に違反したら、医師はオピオイドを処方するのを止めます。しかし、軍隊の世界では、現役兵士は緊密に監視され、オピオイドから引き離される代替手段を提供されるとバートズゼッグ少佐は言いました。鎮痛剤の代わりに、ウーマックの患者は指圧療法師、ヨガ、水中療法を提供されます。最大の不満は鎮痛剤をもらえないことではなく、代替プログラムに参加するための待機リストだと少佐は言いました。

 バートズゼッグ少佐とドナルド・ウーマックペインクリニックの院長、アルジオ大佐(Col. Donald Algeo)は、ウーマックの患者にゆなるオピオイド使用は過去2年間で約20パーセント低下したと言いました。オピオイド中毒を減らす努力の中で、彼らは兵士を教育し、ナロキソンを処方すると言いました。


 記事は一部を紹介しました。兵士の薬物被害の具体例も記事に載っていますが、それらを書くと分量が倍以上になるので省きました。

 この記事で気になるのはヘロイン中毒に関する軍の見積もりが実状を反映しているのか、嫌なものを見たくない心理による結論かということです。報告されていない、見えない問題が起きていないかが気になります。

 長い記事ですが、身内の問題となると、アメリカ人もこんなに力の入ったレポートが書けるのです。同じ努力をシリアなどの紛争地にも注いで欲しいと感じます。アメリカ人より国際紛争に関心の低い日本人が言える立場ではないかもしれませんが。

 記事を作成するので時間を使いすぎました。コメントはここまでにします。

 


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