北朝鮮が潜水艦と砲兵で韓国を威圧

2015.8.23


 聯合ニュースによると、韓国と北朝鮮が軍事的緊張の解消に向け高官協議を開催中に、北朝鮮軍の潜水艦数十隻が基地を離脱したことが23日、確認されました。

 韓国軍関係者によると同日現在、北朝鮮潜水艦の70%が東海と黄海の基地を離脱し、韓国軍の監視設備に識別されていません。こうした状況は北朝鮮が南北高官協議開催を韓国に提案した21日以降に把握されました。北朝鮮軍が保有する潜水艦は70隻余りで、現在、韓国軍の監視網から消えた潜水艦は50隻余りに達します。北朝鮮潜水艦の基地離脱率がこれほど高まったのは朝鮮戦争以降で初めてです。同関係者は「北の潜水艦の基地離脱率は普段の10倍に上る。これは非常に深刻な状況だ」と話しています。韓国軍は、北朝鮮軍による挑発の尺度として潜水艦の基地離脱率を重視しています。同関係者は「南北高官協議が開催中であるにもかかわらず、このような威嚇的な動きを見せているのは二重の態度と指摘せざるを得ない」と述べました。北朝鮮潜水艦の特異な動きは南北高官協議で北朝鮮が有利な立場に立つための戦略的圧迫、または高官協議決裂の可能性を念頭に置いた挑発の準備との見方も出ています。

 韓米両軍は北朝鮮潜水艦の動きを注視しています。韓国軍も北朝鮮軍が黄海上の南北軍事境界線にあたる北方限界線(NLL)を超えて挑発する可能性に備え、駆逐艦や哨戒機P3Cなど対潜水艦戦力の活動を強化しました。

 また、同関係者によると、南北高官協議開催前に比べ、北朝鮮の最前線地域の砲兵戦力が2倍以上増加しました。坑道の外で、命令が出れば即刻射撃できる状態の戦力が普段の2倍以上であることを意味します。


 記事は一部を紹介しました。

 インターネットを見ると、北朝鮮が本当に韓国を攻撃するのではないかとの意見が散見されます。しかし、この北朝鮮の態勢は全面戦争のそれとはまったく違います。

 本当に戦争をするのなら、北朝鮮軍全体に動員の動きがなければなりません。潜水艦や砲兵だけで戦争はできません。空軍の動きはまったく報じられていませんし、機甲部隊が前線へ配備されたとも聞きません。つまり、恫喝のためだけの動きなのです。それもできるだけ燃料を節約した動きです。北朝鮮は大量の戦車を動かして見せることもできないのです。

 潜水艦は出港して潜水すると姿を隠せます。だから、いつ攻撃してくるか分からないという不安を演出できます。しかし、潜水する時間には限界があります。会談が長引くと、潜水艦は浮上してバッテリー航行からディーゼル航行へ切り替える必要があります。北朝鮮の潜水艦はロシア製の旧式ばかりです。韓国軍は哨戒活動を強化して、すでに北朝鮮の潜水艦を探知し、追いかけているかも知れません。潜水艦に攻撃させるには、事前に決めた時刻に水面近くまで浮上し、無線による命令を受信しなければなりません。この際に探知される可能性もあります。

 砲兵は逆に姿を見せて、配置についたところを敵に見せられます。韓国軍に砲座についていることを偵察させ、拡声器を攻撃できると見せかけられます。しかし、拡声器を破壊したいのなら、最初に数十発の砲弾を拡声器がある場所へ撃ち込めばよかっただけの話です。北朝鮮はそれをすると韓国が報復攻撃に出たり、経済制裁を科すと心配しているのです。

 潜水艦も砲兵も、一方的に撤退させられる武器です。恐らく、潜水艦は一定期間水中に潜伏し、決められた時刻に浮上して無線を傍受し、その後、帰投するよう命令されています。砲兵は武器庫に仕舞うだけです。当初予測された特殊部隊を投入すると、戦闘になり、兵士が殺傷され、あるいは捕虜になるかもしれません。そうした心配がないところで恫喝している訳です。潜水艦で韓国軍の艦船や民間船を攻撃すると、その報復が心配です。砲兵も韓国軍の砲が能力が上です。

 なにより、本当に潜水艦と砲兵で攻撃すると、現在進行中の会談は韓国側が席を蹴って中断されます。そうなると困るのは北朝鮮です。韓国軍が報復攻撃を行うだけでなく、拡声器による宣伝放送を再開します。事態は最初よりも悪化することになり、金正恩は面子を失います。北朝鮮は地雷の件は認めなくないようですから、何度か会合を繰り返し、一方的に会合を打ち切るような形をとるかも知れません。それは潜水艦のバッテリーが続く時間が目処かなとも思います。

 


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