外傷性脳損傷の統計が公表されない理由

2015.8.21


 military.comによれば、現役・退役軍人の外傷性脳損傷(TBI)の研究を監督する米国防省は敵を利し、アメリカ国民を混乱させるとの懸念から、正確な統計を公表してきませんでした。

 メリーランド州の国防・退役軍人脳損傷センターの副所長、キャシー・ヘルミック(Kathy Helmick)は、データは作戦上の機密事項と考えるため、当局は滅多に派遣中にTBIを被った個人的に対して数字を提供しないと言いました。

 国防総省は、敵に利を与えうる情報を開示しないことを含めて作戦機密(OPSEC)を決定します。

 「大きな隠蔽はありませんでした。いくつかの点で(センターに)選択があっただけです」と、先週、議会調査局がイラクとアフガニスタンの犠牲者に関する報告書を公表したのに続いて、ヘルミックはMilitary.comに言いました。その外の当局がそうした数字を公表する責任を負っているとヘルミックは言いました。

 当局から話すことを認められないために背景を説明したもう一人のセンター当局者は数字を大衆に伏せ続けることを犠牲者の数を報告しないことになぞらえました。

 「我々は敵が効果をあげていると知って欲しくないので、(それらを)何度も報告していません。それがOPSECでは普通です」「私はそれをこのように考えます。もしあなたが求めれば手に入ると。我々は進んでこの情報を提供しないだけです」「それはウェブサイト上で共有する必要がないことを年次報告に載せる人や会社に似ています」「人々には証券取引委員会の記録の中に、彼らがウェブサイトに載せたくない事柄を持っています。それを見つけることができます。それは求められますが、簡単に見つけられるように望めるものではないのです」。

 ヘルミックはMilitary.comが要請したデータは要請された6年間で2回目と3回目だけが選ばれたと言いました。

 センターはTBIデータを作戦機密事項に指定するよう要請していないものの、彼女はアメリカがイラクとアフガンで戦闘活動を止めたら指定を止めるよう正式に要請できるかも知れないと言いました。

 センターはデータが誤解されるかもしれないと言います。

 数字が大衆に誤解される懸念からセンターが数字を公開しないもう一つの理由は、派遣関連のTBIが戦闘関連と関係づけて結論されかねないということです。

 TBIは戦域で単純な落下やその外の非戦闘事件で起こり得るとヘルミックは言いました。軍配は帰還から30日以内のTBIを派遣関連とみなします。「帰宅して、屋内の配管で頭を打ったら派遣関連と呼ばれます」と彼女は言いました。

 Military.comに提供された数字は2001年から2015年第一四半期までに全世界に配備された全軍において、316,341件のTBI案件を示しました。その内、47,925件が派遣関連に指定されました。これは戦域や帰還後30日以内に負傷したことを示します。

 累積的に、配備関連のTBIは報告された期間全体のTBIの約14%を占めます。

 イラクとアフガンの作戦が最高潮の間、パーセンテージは2007年に約26%に増え、2011年までに一度だけ、2009年に18.6%だった時、23%を下回りました。2012年、アメリカがイラクで戦闘活動を終わり、アフガンから撤退する前年、派遣関連のTBIは16%に下がりました。その後、率は2013年に10%へ、2014年に5%へ下がりました。2015年第一四半期は0.8%でした。


 記事は一部を紹介しました。

 TBIの件数を公表していなかったという話は意外でした。これまでその種の数字は何度も見た記憶がありました。しかしそれはPTSDの数字だったかも知れません。こんな風に米軍の傷病に関する数字は報道記事でかなり見ることができます。TBIについて積極的に公表しないとしても、全体像を把握するくらいはできるのです。

 翻って自衛隊の場合、こういう数字の公表はどうなるのかという疑問があります。記事にあるように、負傷の件数を公表することは敵を利する可能性があります。だからといって、完全に機密にできる性質の情報とは思えません・そこで、要請があれば開示するという方針がとられているのです。日本では機密保護の理由で、政府がこれを完全に隠してしまう可能性が高いといえます。これに反論するには国防・退役軍人脳損傷センターの方針はよい材料となるでしょう。

 センターの方針も率直に言うと疑問が残ります。敵を利するにしても、その度合いは非常に小さいのです。IEDで米兵をTBIに陥らせることが効果的だからIEDによる攻撃を増やし、それが闘争上、非常に有効という状況は起こらないと思えますし、世間を混乱させるとの配慮も十分に説明することで防げそうです。要するに、恥ずかしい部分なので隠したいという意識が米軍にあるように思われます。

 


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