タリバンがアフガンに侵入するイスラム国に警告

2015.6.17


 alarabiya.netによれば、タリバンは火曜日、脱走者を多数出し、イスラム国の民兵と戦闘した後でイスラム国の指導者にアフガニスタンで武力闘争を行うことについて警告しました。

 イスラム国は公式にアフガンでの駐留を認めていませんが、アフガンに侵入しているという不安は増しつつあります。

 イスラム国指導者アブ・バクル・アル・バグダッディ(Abu Bakr al-Baghdadi)に宛てた書簡の中で、タリバンはアメリカ人と彼らの同盟者に対する聖戦は一つの旗の下、1人の指導者の下で行われるべきだと主張しました。「イスラム首長国(タリバン)は多数の聖戦士集団は聖戦のためにもイスラム教徒のためにもならないと考えます」とタリバンの副指揮官ムラー・アクタル・モハンマド・マンスール(Mullah Akhtar Mohammad Mansoor)が署名した書簡には書かれています。「遠くからのあなたの決断は宗教学者、聖戦士の支援を失う結果になるでしょう。そして業績を守るために、イスラム首長国は対応を強いられるでしょう」。

 書簡はタリバンのウェブサイトにパシュト語、ウルドゥー語、アラビア語、ダリ語で公表され、その脅威について詳しくは書きませんでした。

 タリバンはここ数ヵ月間で脱走を経験し、一部の武装勢力はNATO軍が撤退する時に自分たちをより強力な部隊と見せるためにイスラム国の旗を用いました。


 記事は一部(主に前半)を紹介しました。

 この動きに関する見方は2つあるでしょう。NATO軍が撤退するので、イスラム国がアフガンに勢力拡大を狙っているのです。これは記事にも指摘されています。

 しかし、私はラッカ陥落後を見据えた動きにも感じられます。ラッカが陥落すると、そこで指導者のバグダッディが死亡するかも知れません。高官たちはラッカから東へ逃げる形になります。クルド軍が順調に前進すると、イスラム国はイラクに逃げ込むことになります。クルド軍は東からも攻めていますが、南方にはイラクに逃げ込むルートがあるでしょう。イラクにもクルド軍がいて、能力が低いイラク軍もいます。さらにアメリカなどが強力な支援を行っています。

 今のところ徴候はないものの、ヨルダンがシリアでイスラム国の掃討に参加する可能性も否定できません。空軍パイロットが処刑された報復をしたいという意向がヨルダンにあるかどうかが鍵になります。一時的にシリア国内のイスラム国を掃討しても、その後、イラク国境にヨルダン軍が部隊を置き続ける必要があるため、この決断は簡単ではないでしょう。

 そうなると、NATO軍が引き揚げるアフガンはシリアの代替地としてイスラム国の選択肢に入ってきます。ここで起きるタリバンとの対立がどのような動きになるのかに注目が必要です。さすがにイスラム国もタリバンには勝てない気がしています。

 それにしても内陸国のアフガンにイスラム国はどういうルートで兵を送り込んでいるのでしょう。イランとパキスタンは除外できそうですから、数カ国ある北部の隣国でしょうか。それが難しいので、金でタリバンを寝返らせている段階かも知れません。

 


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