クルド軍がタル・アビアッドの東へ進出

2015.6.12


 alarabiya.netによれば、シリアのクルド人戦闘員は木曜日に、同盟国の航空支援の下でイスラム国が支配するタル・アビアッド(Tal Abyad・kmzファイルはこちら)に向けて前進しました。

 人権団体「The Syrian Observatory for Human Rights」はアラブ系反政府戦闘員に支援されたクルド人民防護隊(YPG)はスルク(Suluk・kmzファイルはこちら)を攻撃して、その東部を支配したと言いました。イスラム国とクルド軍の間で一日中激戦が続きました。

 スルクはイスラム国の拠点、ラッカ州の中にあり、タル・アビアッドの東にあります。この街はコバネ(Kobane・kmzファイルはこちら)あら西のカミシリ(Qamishli・kmzファイルはこちら)まで、トルコ国境沿いにさらに東へのルートを開きたいクルド人にとって主要な目標です。

 スルクへの前進により、YPGは現在、タル・アビアッドの東20km、西へ約10kmの位置にあります。

 「クルド人はタル・アビアッドを包囲下に置くことを計画しています」と人権団体の理事、ラミ・アブドル・ラーマン(Rami Abdel Rahman)は言いました。YPGはイスラム国を狙う米主導の空爆の支援を受けていると、彼は付言しました。

 alarabiya.netによれば、ペシュ・メルガ(Peshmerga)として知られるイラクのクルド軍は木曜日にキルクーク(Kirkuk・kmzファイルはこちら)の南部の新しい地域を奪還しました。

 火曜日以降、16回の空爆(バイジ(Baiji・kmzファイルはこちら)付近の5回を含む)でアメリカと同盟軍がイスラム国を狙った後、ペシュ・メルガは北部の石油が豊富な街の地域を奪還できました。バイジ近くの攻撃はイスラム国の4個戦術部隊に命中し、車両3台。建物1棟とIEDを破壊したと統合合同タスクフォースは声明で言いました。別の空爆はタル・アファル、モスル(Mosul・kmzファイルはこちら)、キルクーク、バグダッディ(Baghdadi・kmzファイルはこちら)、マクムール(Makhmur・kmzファイルはこちら)付近を攻撃しました。

 シリアでは3回の空爆がラッカ(Raqqa・kmzファイルはこちら)の民兵グループを狙い、イスラム国の原油集積地であるアル・ハサカ(al-Hasaka・kmzファイルはこちら)とデリゾール(Dayr Az Zawr・kmzファイルはこちら)の付近で1回の空爆を行いました。


 記事は一部を紹介しました。

 スルク占領で、YPGのタル・アビアッド攻略の概略が分かったといえます。西方からタル・アビアッドを攻撃する方針なら、スルクまで占領する必要はありません。タル・アビアッドを占領した後で、攻撃すればよいからです。アブドル・ラーマンが言うとおり、スルクなど周辺の街と道路を封鎖することで、タル・アビアッドを包囲し、干上がらせるつもりなのです。最近の報道ではクルド軍は東西両方から攻めています。東から来た部隊がスルクを占領しているのです。ということは、その北にあるもう一本の幹線道路も封鎖していると考えられます。西側を封鎖するのも時間の問題でしょう。

 タル・アビアッドはトルコ国境沿いの街で、トルコ側のアクチャカレと直結しています。つまり、周辺を包囲してもトルコからの補給線は切れないことになります。トルコはシリア国内の内戦には基本的にタッチしませんが、クルド人を敵視しイスラム国寄りです。

 すると、クルド軍はアクチャカレと接する街北部にくさびを打ち込むように進出し、補給路を断ち、イスラム国民兵の逃げ道も塞き、さらに複数の方向から街へ攻め込み、短期間に街を占領するつもりと考えられます。それほど大きな街ではないので、さほどの時間はかからないでしょう。コバネと違い、街並みが連続しておらず、規模も小さいのです。

 


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