北朝鮮の潜水艦からのミサイル発射に異論

2015.5.21


 先日紹介した、北朝鮮の潜水艦からのミサイル発射実験について米艦の見解が交錯しています。

 産経新聞によると、米軍のウィネフェルド統合参謀本部副議長(海軍大将)は19日、米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)で講演し、北朝鮮が今月、放映した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の水中発射実験とする映像は加工されたものとの認識を示し、SLBMの取得までは「多くの年数がかかる」と述べました。ウィネフェルド氏は「幸い北朝鮮には私たちを信じ込ませられるような賢い映像編集者はいない」としました。映像に関し、米研究機関などは潜水艦ではない水中の装置から発射されたと分析しています。

 産経新聞の別の記事によると、韓国の聯合ニュースは15日、北朝鮮のテレビが軍による潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験として9日に放映した海上の映像に、タグボートのような船舶が確認されたと伝えた。発射が潜水艦からではなく、えい航され水中に沈められたはしけ船から行われた可能性があるとの見方を示しました。発射をめぐっては、米メディアも潜水艦ではなく別の発射装置から行われたとの米情報当局の分析を報道。一方、韓国の情報機関、国家情報院は潜水艦から発射されたとの見方を示しています。朝鮮労働党機関紙、労働新聞が実験を報じた写真には船舶は写っていないといい、聯合ニュースは「写真を編集した可能性がある」と伝えました。

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 聯合ニュースによると、国会情報委員会与党幹事の李喆雨(イ・チョルウ)議員は14日、ラジオ番組に出演し、国家情報院が前日に同委員会に北朝鮮に関する報告をした際、SLBM発射実験にも言及したことを明らかにしました。北朝鮮の軍事問題に詳しい米国の専門家は、北朝鮮のSLBM発射は潜水艦からではなく水中に沈めたバージ船(台船)からだったとして、北朝鮮側が写真を合成した可能性を指摘しました。しかし、李氏によると、国家情報院は合成ではないとの見解を示し、「今回は潜水艦からミサイルを発射する能力をテストしたもので、150メートル飛んだことはさほど重要でなく、テストが成功したという正確な根拠を持っている」と報告しました。国家情報院は写真で確認できたとも話しました。


 記事は一部を紹介しました。

 先日、私は北朝鮮が発表した写真は合成写真で、ミサイルも合成したものだという見解を書きました(過去の記事はこちら)。しかし、今回の記事ではミサイルは実際に飛ばし、他の部分が修正されているとの見解が出ています。

 私が見た写真は下です。

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 他に、私が見ていない写真が少なくとも2枚あるようです。

写真は右クリックで拡大できます。
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 よく見ると映像は不鮮明で、もう少しよく見るべきだったと反省しました。おそらく、バージ船に斜めにロケットを取り付け、打ち上げたのだろうと思います。その時にロケットを支えるタワー部分が見えてしまい、そこをぼかしているように思えます。

 潜水艦からミサイルを打ち上げる実験をするのなら、近くに水上艦がいるはずはなく、バージ船を曳航するためなのは確実です。

 150mしか飛ばなかったというのが本当かは分かりませんが、もともと、映像を撮るためだけの張りぼてに近いものだったのか、もっと遠くへ飛ばすつもりが失敗したのかのどちらかでしょう。

 韓国が合成ではないと言っているのは、多分、別の映像を合成したのではなく、煙をぼかしただけだから、合成ではないという意味だろうと思います。

 いずれにしても、潜水艦からミサイルを発射する装置は完成していないと考えます。この実験を視察した金正恩が乗っている潜水艦にはサビが見られました。手入れも行き届かない潜水艦を改造して発射チューブを取り付けるなんて考えられません。新しく潜水艦を設計、建造する必要があるはずです。

 


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