イスラム国はラマディを攻め落としたのか?

2015.5.18


 イラクのラマディ(Ramadi)に関して矛盾する報道が出ています。

 BBCによれば、政府軍が陣地を放棄した後でラマディがイスラム国の手に落ちたと当局者は言います。警察と軍隊は数日の激戦の後で混乱しつつ却しました。ハイダル・アル・アバディ首相(Prime Minister Haider al-Abadi)は持ち場を守るよう命令し、シーア派民兵をラマディへ派遣したと言いました。

 イスラム国とされる声明は戦闘員が街全体を一掃したとしています。声明はイスラム国が兵士が放棄した戦車とミサイルランチャーを共に第8旅団の基地を占領したと言いました。

 アンバル州知事官房に近い筋は、ラマディは現在、イスラム国の完全な支配下にあり、すべての政府軍は撤退したと言いました。陸軍当局は、ほとんどの兵士はラマディの東にあるカリディヤ(Khalidiya)の軍基地へ撤退したと言いました。政府軍は弾薬が尽き掛け、イスラム国の大規模な猛攻を撃退できなかったと、当局者は匿名を条件に言いました。

 ソーシャルメディアに投稿された映像は兵士がぶら下がり、マラディから急いで離れる軍車両を示しました。レポートはイラク軍が日曜日の連続的な自動車による自爆攻撃の後で逃げたと言いました。ほぼ同時の4回の爆発がラマディの南部、マラーブ地区(Malaab)を守る警察を攻撃しました。後に、爆弾を満載した車を運転する自爆犯3人以上が州の軍司令部、アンバル作戦司令部(the Anbar Operation Command)の入口へ入りました。

 それより早く、アバディ首相は政府派軍隊に、陣地を維持し、彼らを保護して、ダーイシュ(イスラム国)がラマディの他の地域に及ぶのを許さないよう命じました。「陣地を守り、別の部隊と国民動員部隊の支援を待つ地上軍を助ける連続的な航空支援があります」と彼は言いました。シーア派民兵は政府がティクリート(Tikrit)を奪還するのに重要な役割を果たしましたが、広範囲にわたる暴力を略奪の報告の後で街から引き揚げていました。

 米国防総省はラマディの損失はイスラム国にとってプロパガンダの強化となりますが、イスラム国に戦術的優位は与えないと言いました。「街は何ヶ月間も包囲されていました」「我々がそれを失うのなら、あとで取り戻す必要があるだけです」。

 アンバル州評議会副議長、フェレ・アル・ラサウィ(Faleh al-Issawi)はラマディ内外での戦闘の最後の2日間で、弾薬が尽きた警察官と十字砲火に捕まった民間人を含めて500人以上が殺されたと言いました。国連移住機構によると、同じ期間に約8,000人が追い出されました。

 military.comによると、イラクの米軍最高指揮官はイスラム国による攻撃がラマディとバイジ(Baiji)での一進一退の戦いで前進したと認めたものの、イスラム国は守勢に立っていると言いました。

 ラマディが陥落したという矛盾する報道の中、トーマス・ワイドレイ海兵准将(Marine Brig. Gen. Thomas Weidley)は、自爆犯、迫撃砲、小火器を用いたイスラム国とシリア人戦闘員の一連の攻撃の後、バグダッドの西70マイルにある人口90万人の街の状況は劇的で流動的だと言いました。「イスラム国による前進がいくらかありますが、ラマディ地域は競合状態のままです」と、「生来の決意作戦」の共同統合機動部隊参謀のワイドレイ准将は言いました。「現在、激しい戦いとなっています」。

 巨大精油所を擁するバイジの状況も「激しく競合しています」とワイドレイ准将は南西アジアの非公開の場所から国防総省への音声ブリーフィングで言いました。ワイドレイ准将はイラク軍戦闘員約400人がバイジの中で包囲されていて、空中投下で補給を受けていると言いました。イスラム国戦闘員は南へ通じる幹線道路で政府軍の救援隊を攻撃しているとも報じられています。准将は民兵たちは精油所外縁を突破し、イラク軍を攻撃し続けるためにいくつかの精油所施設を一時的な支配を維持していると言いました。

 ラマディでは住民がイスラム国が街のモスクから勝利の声明を流していると言いましたが、州知事のソハイブ・アル・ラウィ(Sohaib al Rawi)はツィッターで「ラマディの状況はひどいものの、街は陥落していません」として、イスラム国との戦いは続いていると言いました。

 イスラム国の前進に関わらず「我々はダーイシュがイラクの至るところで守勢に回っていると確信します」と准将は言いました。「我々は作戦を通じて前進の期間と後退の期間があると考えます」。先月だけで、バイジは176回、ラマディは165回の空襲を行いました。


 記事は一部を紹介しました。

 ラマディはまだ陥落したとは言えないのが実状です。これは言葉の定義による表現の違いであり、誰もが自分から見たものを説明していて、嘘をついている人はいないのです。

 アンバル州知事官房筋は、市内で見た通りのことを言っているのであり、彼らから見て政府軍は撤退したと見えるのです。これはイスラム国も同じです。市内に政府軍がいないのだからラマディを奪ったと考えます。第8旅団が巨大な基地を捨てて撤退したのだから当然です。先月、イラク軍はラマディを占領したと報じられました(過去の記事はこちら)しかし、米軍は周辺地域の兵数まで考えて総合的に判断します。その視点からは、ラマディへの反攻は十分に可能なので競合状態という判断になるのです。

 カリディヤの東にあるハバニヤ(Habbaniyah)には空軍基地があります。おそらく部隊はここに撤退したのです。ここでシーア派民兵が加わって再編成し、反撃をする計画です。

 バイジの現状は意外ですね。ここも競合しているのですね。


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