オバマ大統領がテロ対策を打ち出せていない?

2015.2.21


 FNNによると、アメリカ・ワシントンで開かれていたテロ対策を話し合う国際会議が19日、閉幕しました。

 世界60の国や機関の代表が出席した会議では、若者のテロ参加阻止などを目指す共同声明が発表されたが、早くも、具体策に乏しいとの指摘が出ています。オバマ大統領は「アルカイダや『イスラム国』など、テロリストのゆがんだ思想、イスラム教を暴力の正当化に利用する試みと対決しなければならない」と述べました。オバマ大統領は、最終日の演説で、過激派組織「イスラム国」などの思想に感化されて、テロに加わる若者らを国境で食い止めるため、各国が連携することが重要だと呼びかけました。

 また、日本の中山外務副大臣は、日本人人質殺害事件を強く非難し、新たに、中東・アフリカ地域のテロ対策に、およそ18億4,000万円の支援を行うと表明しました。

 しかし、ニューヨークタイムズ紙が「アメリカはいまだ、テロとの戦い方を見つけられずにいる」と酷評、そのほかのメディアも「大統領は弱腰だ」と非難するなど、会議の成果に冷めた視線を送っています。
今回の会議は、パリでの銃撃テロ直後、各国首脳の行進に参加せずに批判されたオバマ大統領が、挽回に向けあわてて企画したともいわれており、具体策に欠けた印象は否めません。


 毎度お決まりの記事が紙面を繰り返すものですが、この記事もその一つです。

 単に、米主要紙の論説に乗っかっただけです。

 オバマが方針を示していることは、この記事が証明しているというのに。「テロに加わる若者らを国境で食い止めるため、各国が連携することが重要」。これに替わるテロ対策なんかありません。

 軍事的手法はあくまで当座の対処に過ぎません。いま、シリアとイラクに巨大なイスラム国の領域を認めてしまうと、彼らはそこから巨額の利益を生み出し、次なる領域へと踏み出すだけです。それを阻止して、とりあえず彼らの成長を止めるのが狙いです。傷口を圧迫して出血を止める応急措置のようなものです。

 安倍総理は軍事的手法こそ、テロと戦う道と考えているようです。彼は人道支援も対テロ対策だと言ってしまいましたが、これも応急措置だといえます。

 重要なのは、若者などの間にあるイスラム国に対する憧れを消滅させることです。イスラム国はイスラム教の教義に従っていないことを理解させることです。そして、彼らに仕事を与えることが重要なのです。このことは、米国務省の公報がテレビ番組に出演した際に、実際に述べていることです。

 番組中、国務省公報のマリア・ハーフ(Marie Harf)は、イスラム国の兵士を殺すことで戦いに勝つことはできないと述べています。イスラム国に参加する原因をなくすこと、仕事を提供することがが重要だと説いています。

 この考え方がアメリカでは人気がないのです。それはテロリストに媚びることだと考えられています。「なぜ、我々の金を使って、テロリスト志願者たちに、考えを変えてもらうために、仕事を見つけてやらなければならないのだ」というのが、アメリカの世論です。

 しかし、経済の安定が長期的に続けば、絶望して、テロに走ろうと考える者が減るのは間違いがありません。中東からアフリカにかけて、一部の国はまったく出口が見えない貧困に喘いでいます。イスラム国がシリアとイラクから追い出されるのは間違いないとしても、次はアフリカに拠点を構えようとすることは論を待たないのです。

 それなしには軍事的手法しか選択肢がありません。共和党なら、とっくにそうしているでしょう。2003年のイラク侵攻が、その典型です。しかし、オバマ大統領は驚くほど抑制のとれた軍事作戦を行っています。過去に例を見ないほどですが、これはいずれ効果を発揮すると、私は考えています。実際には、すでに効果を出しているのですが、今はまだその途中なので、成果のように見えないだけです。

 つまり、この記事は軍事的手法を採るべきというアメリカの世論を指示する内容なのです。きっと、記者はそれを自覚していないでしょう。

 


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