クルド軍がアル・アビアッド奪還作戦を始動

2015.2.11


 alarabiya.netによれば、シリアのクルド軍はトルコ国境のもう一つの戦略的な街、タル・アビアッド(Tal Abyad・kmzファイルはこちら)を奪還する目標を立てました。

 コバネ(Kobane)から約65km東のタル・アビアッドは、ラッカ州(Raqqa)の大半がクルド人の街で、イスラム国がトルコから越境するのに使っています。

 人権団体「the Syrian Observatory for Human Rights」のラミ・アブドル・ラーマン(Rami Abdel Rahman)は「コバネのあと、次なる戦いはタル・アビアッドです」と月曜日に言いました。「クルド・ラッカ革命旅団が月曜日にラッカ州の境界に到着しました」。

 ラッカの活動家はタル・アビアッド周辺の村落を巡る戦いはすでに始まっており、人々はトルコ国内へ逃げていると言いました。

 「タル・アビアッドは、この地域にトンネルを掘り、街の郊外に要塞を建設するイスラム国にとって重要です」とナエル・ムスタファ(Nael Mustafa)と自称する活動家は言いました。「戦いは長くかかりますが、はじまりました」。

 アレッポ州(Aleppo)の別の戦線で、「ミンビジ(Minbej)とジャラブラス(Jarabulus)の拠点を防衛するためにイスラム国は増援を送った」とアブドル・ラーマンは言いました。

 一方、イラク北部のモスル(Mosul)近くで、空爆に支援されたクルド軍がイスラム国から領域を奪還したと、米軍が月曜日に言いました。


 記事は一部を紹介しました。

 驚かされました。イラク北部のクルド軍がそこまで増強され、イスラム国と戦う力を得ていたとは。しかも、狙いが適切です。

 イスラム国が作戦立案が下手なのに比べて、クルド軍のやり方は適切で、手堅く、感心させられます。

 タル・アビアッドはアクチャカレのシリア側にある街です。アクチャカレは、先日、後藤健二氏の解放が行われる可能性があった検問所がある街です。ここから真っ直ぐにラッカに向けて幹線道路があります。ここが陥落すれば、クルド軍はラッカに進撃できるのです。

 しかも、トルコからラッカへの物資の流れも断ち切れます。イスラム国の補給が困難になり、地元の貿易商たちの仕事も減ります。さらに遠回りで物資を運ぶことになり、運賃の値上げが考えられます。

 イスラム国は守勢に回ると、意外と弱いかも知れません。

 しかし、心配されるのは、イスラム国に税金を払って居住を許された地元民の運命です。劣勢になると、イスラム国は地元民に自爆攻撃をさせたり、兵士として使おうとするようになるでしょう。それらを住民が拒めば、処刑されるだけです。先日、モスルでイスラム国が住民を処刑したと報じられていますが、それはこうしたいざこざが起きた可能性があります。今後、そういう事件が増えていくはずです。

 それにしても、当サイトがラッカ戦の話をする頃になって、ようやくマスコミはモスル奪還の話をするようになったのに呆れています。率直に言って遅すぎます。シンジャル奪還辺りから、モスル奪還が可能になったことは予想がついたはずです。

 別件を付記しますが、イスラム国がヨルダン人のモアズ・カサスバ中尉の処刑を発表するのが遅かったのは、単に長い映像を制作するための期間のためだったと、私は結論しました。他に特に意味があるとは思えません。このタイムラグを、イスラム国は日本人人質交渉にも流用したのです。日本人なら、処刑したら、すぐにその事実だけでも公表したでしょう。この辺の感覚は日本人と彼らとでは、かなり違うようです。

 


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