シリア政府が外国地上軍の国内進入を拒絶

2015.2.10


 alarabiya.netによれば、ヨルダンのラニア女王(Queen Rania)は、国がイスラム教を乗っ取った者たちとの対決の中にいると言いました。

 女王はドバイのアラブ首長国連邦のサミットでビデオメッセージを通じて演説しました。女王はイベントに出席する予定でしたが、ヨルダンはまだパイロットの残忍な死を弔っていると言いました。

 「我が国は我らの息子、モアズ・アル・カサスバ(Moaz al-Kasasbeh)を悼んでいます。安全なイスラム教、アラブ世界を我々の子供に残すことは、我らの責任です」と女王は言いました。

 「ヨルダンの心は激しい痛みと怒りで一杯であるため、悲しみと嘆きの黒雲は我々が皆さんに加わることを拒みました」「最も辛い時はしばしば、我々を責任に直面させます。そして、イスラム教は我々の責務です」「我々は我らが信仰を乗っ取った者たち、暴力、流血、虐殺でイスラム教を中傷した者たちとの対決の中にいます」。

 alarabiya.netによれば、シリアは外国軍がイスラム国と戦うために自国領に入ることを許さないと、ワリド・アル・ミュアレム外務大臣(Foreign Minister Walid al-Muallem)は言いました。

 ダマスカスの記者会見で、ミュアレム大臣は、ヨルダンはイスラム国が拘束されたパイロットを殺した後、彼らに対する活動を調整するシリアの要請に応じなかったとも言いました。

 「今のところ、シリアとヨルダンの間にはテロリズムと戦うことで調整が行われていません」と、大臣はベラルーシの外務大臣との共同記者会見で言いました。

 「地上軍がシリアに入るとの報道記事について、我々は明確に…イスラム国と戦うことに介入することにより、我々は何者もが我々の国家主権を侵害することを許容しないと言います」「シリア軍がこの仕事を立派に引き受けています」。

 ダマスカスは定期的に、ヨルダンがアサド大統領に対する反乱を支援したため、シリア国内のテロリズムを支援したと非難します。

 先週、シリアはヨルダン人パイロットの殺人を示すビデオに引き続いて、テロリズムに対する活動で協力を要請しました。


 記事は一部を紹介しました。

 ラニア女王の演説はヨルダンの怒りがかなり強いことを想わせます。

 そして、それがシリアに警戒感を抱かせているようです。先日、将来予測されるイスラム国掃討作戦について書きましたが、それはまだ先の話です。今年中にイラクからイスラム国を追い出し、シリア国内へ追い込むのが当面の目標です。その後、大量の物資集積を経て、ラッカに向けた進撃が始まります。

 しかし、シリア内戦には、アラブ諸国が食い込んでいるのも事実です。シーア派系アラウィ派のアサドに対して、スンニ派中心のサウジアラビア、カタール、ヨルダンなどが反乱を契機に、反政府派を支援し始めました。だから、シリア政府からすると、そうした国は「テロ支援国」です。シリアとトルコの関係もよくありません。

 つまり、イスラム国掃討のためのシリア侵入はアサド政権にとっては、協力できるはずがない話なのです。ミュアレム大臣の話はそこから出てきたものです。

 ラッカ戦はシリア政府の支配地域からは距離があります。外国軍がシリア軍と戦うことはないでしょう。シリア軍も僅かな戦力しか投入できないため、監視するだけで反撃はしないでしょう。外国軍は領土的野心のない軍事行動だと宣言して、一方的に領土を侵犯して行う作戦となります。国連決議はロシアと中国が反対するので採択されません。

 一方、自由シリア軍が内戦の見通しに楽観的との報道もあります。シリア政府が倒れかかっている可能性もあります。これがイスラム国との戦いにどう影響するかが気になっています。

 余談ながら、イスラム国が作った通貨「ディナール」は、イスラム国の崩壊と共に無価値となります。通貨といっても、実質的には軍隊が戦地で発行する軍票に近く、その価値は裏付けがありません。貨幣コレクターは欲しがるでしょうが、「国家になりたがったテロ組織のアイコン」となるのです。

 


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