イラク軍によるラマディ奪還作戦が開始

2015.12.23


 BBCによれば、イラク軍がラマディ市内に前進しました。

 イラク軍は正規兵と同盟する部族民が米主導の空爆に支援され、すでに2地区を奪還し、他2地区に入りました。軍は主要政府ビル街に向かい、狙撃兵と自爆犯に直面しました。

 先月、政府軍はスンニ派が大半の街の包囲を終わらせ、アンバル州(Arab)とシリア各所の拠点から民兵を孤立させました。

 イラクの対テロリズム局の報道官、サバー・アル・ヌマニ(Sabah al-Numani)は、警察、スンニ派部族民に支援された正規兵たちはミメイニラマディ中心部に対する攻勢を開始し、政府ビル街に向けて前進していますと言いました。「我々はいくつかの前線からラマディ中心部へ入り、住宅地を一掃し始めました」「街は今後72時間で掃討されます」
「狙撃兵と自爆犯だけで、強い抵抗には直面しておらず、これは予想した戦術です」。

 アンバル州作戦司令部のイラク軍筋は、工兵が街の北と西を流れるユーフラテス川に仮設橋を造ったと言いました。これは兵士が政府ビル街の南西部、アル・ホウズ地区(al-Haouz)に入るのを可能にしました。火曜日の午後までに、政府軍はアル・スバト地区(al-Thubat)、アル・アラミル地区(al-Aramil)を奪還し、近くのアル・マラーブ地区(al-Malaab)、バキル地区(Bakir)に入りました。

 ラマディ奪還が成功すれば、ここ18ヵ月でティクリート(Tikrit)を取り戻して以来、二番目に大きい都市になります。それはイラク軍とイラクでイスラム国に対抗するスンニ派には大きな士気高揚になります。これはラマディをスンニ派が大半を占め、イスラム国の主要な拠点だからでなく、奪還のために戦う部隊がスンニ派部族民によって先陣が切られたからでもあります。

 国民動員部隊(Popular Mobilisation, al-Hashd al-Shaabi)として知られるシーア派が支配する準軍事部隊は、イスラム国との戦いの多くに関与してきましたが、政府はラマディに派遣しないことを決めました。この部隊は4月にティクリートを奪還した後、スンニ派に対して人権侵害をしたと非難され、過去にシーア派民兵が行った残虐行為がスンニ派を遠ざけ、イスラム国に加担させたと考えられています。

 火曜日に攻勢を支援するために少なくとも12回の空爆を行った米主導の対イスラム国同盟の報道官は、ラマディの陥落は必然的だとしながらも、激戦になると警告しました。スティーブ・ウォーレン大佐(Col Steve Warren)は、市中心部に立てこもるイスラム国民兵は250〜350人とし、さらに数百人が北部と西部にいると示唆しました。

 イラク国防省は先月、街に攻撃を予告するリーフレットを投下してから、過激派たちが民間人がラマディを出るのを妨げていると言いました。「イスラム国は住民を人間の盾として使うつもりです」と報道官のナセル・ヌーリ(Naseer Nuri)は言いました。

 ウォーレン大佐はまだ、民間人数千人、おそらくは数万人がラマディ市内にいると言いました。

 ラマディ市内の情報筋は、イスラム国は、政府の攻勢を支援する反乱を防ごうとして、まだ支配している地区で襲撃作戦を行い、住民を大量に拘束したと言いました。

 月曜日、IHSジェーン社の分析は、イスラム国が昨年中、イラクとシリアで領域全体の14%、12,800平方キロを失ったと示唆しました。それにも関わらず、イスラム国は同時期に、ラマディとシリアのホムス州(Homs)、パルミラ(Palmyra)を含めた戦略的価値のある新しい領域を獲得できました。イスラム国は依然として、イラクのファルージャ(Falluja)、ラマディ東部、北部のモスル(Mosul)を支配します。


 記事は一部を紹介しました。

 昨日は疲労でほとんど活動できず、記事を更新できませんでした。その間に、ラマディ攻略が始まりました。

 この戦いは激戦になるとの予測と展開が違うようですが、それはイスラム国相手に限っての話です。住民の生死は危機にさらされていると考えるべきです。街の奪還は決定的ですが、大きな犠牲を甘受しなければならないということです。これが戦争の実情です。しかし、そう考えない人もいます。

 自民党の稲田朋美は生長の家の創始者、谷口雅春氏が述べた「戦争は人間の霊魂進化にとって最高の宗教的行事」という言葉を「ずっと自分の生き方の根本にしてきた」と言います。谷口氏が 本当にそう言ったのかや、どういう主旨で述べたのかは知りません。しかし、軍事を知る者としては、この言葉をいくら心得たところで、意味はないとした思えません。閑話休題みたいですが、これは戦争を考える上で重要なことです。

 自爆犯と狙撃兵が防戦の主体ということは頭数(兵数)が足りないことを意味します。大勢で反撃できないから、これら二種類の攻撃に頼るのです。いずれ狙撃兵も自爆犯に転じ、最後の攻撃的を仕掛けてくることでしょう。日本軍の玉砕戦術に似ていて、降伏せず、最後まで戦うのです。こういう発想のイスラム国は住民のことまでは考えません。

 地を失えば別の場所に転戦するのもイスラム国の戦略の特徴。ダメな場所は容赦なく切り捨てます。土地を占領することで石油のような収入源が得られる場所ならどこにでも来ます。つまり、そういう場所を彼らに渡さないことが対イスラム国戦略として重要ということです。こういう話題が各国の間で交わされたという話を聞かないのが気になっています。 シリア政府を助けるだけで満足のロシアには興味のない話でしょうし。

 


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