ヒラリー・クリントンが対テロ戦を語る

2015.11.23


 military.comによれば、ヒラリー・ロダム・クリントン(Hillary Rodham Clinton)は米国内で別のテロ攻撃があってもイスラム国と戦うために軍隊を派遣することに反対すると言いました。

 ヒラリーは2016年のシリア内戦の詳細な評価を示した上で、アメリカはイスラム国との戦いを主導しなければならないものの、軍隊を多く提供するようアラブ諸国に要請したといいました。

 CNNのファリード・ザカリア(Fareed Zakaria)との質疑の中で、元国務長官は別の米国内でのテロ攻撃が起きたら、シリアへ地上軍を送ると求められることはプレッシャーかと訪ねられました。

 「それは間違いなく増すでしょうが、私はそれは間違いと考えます」と彼女は答え、特殊部隊をさらに派遣すること、イラクで訓練教官の能力を高めること、この地域で同盟国の空爆を用いることは支持すると指摘しました。「いま、我々は現場の人たちに圧力を加え、優先順位を変えさせ、共に活動し続ける必要があります」。

 ヒラリーはオバマ大統領のイスラム国と戦う努力の多くを支持しますが、政権が米露の軍事協力を妨げるアサド大統領を追放することに集中する立場を否定しました。

 ヒラリーはオバマが反対するシリア北部への飛行禁止区域の設置を現場の状況を改善するとして、ジョン・ケリー国務長官(Secretary of State John Kerry)が仲介する政治的決着に向けてアサド大統領に圧力を加える立場を繰り返し主張しました。

「私が彼らの領域の所有を破壊する必要があると言ったように、いま、我々は最も重要な目標を持っています」「我々は優先順位を決定しなければなりません」。

 ヒラリーはアメリカ人に世界中の過激派の脅威と闘うため超党派的な戦いに勝ち、個人的な不安を超越するよう訴えました。

 彼女はアメリカは空港、ネットワーク、ファイナンスの分野で防衛を堅固にする時でも、この地域からの難民を歓迎しなければならないと言いました。ヒラリーは議会に民兵に対して軍隊の使用承認の更新を早く通過させるようにも求めました。「孤児を閉め出し、信仰に関する試験を用い、イスラム教徒を区別し、すべてのシリア難民にドアを閉ざすのは、我々らしくありません。我々はもっと善良です」。

 彼女はトルコとサウジアラビアにクルド軍と戦うこととイスラム国と戦うためにイエメンでの紛争に注意を向け直すよう訴えました。


 記事は一部を紹介しました。ヒラリーの発言部分を中心に訳しました。19日付けで少し古いのですが、彼女の主張を確認したくて取り上げました。

 共和党候補者たちに比べると遥かにまともな主張と思います。ヒラリーが次の米大統領に相応しいとの思いを新たにしました。

 シリアに地上軍は送らない、ただし、少数の特殊部隊は除くという考え方はいうまでもなく正しい選択です。陸軍と海兵隊の大軍を送り込んだブッシュ政権の戦略は米国内の戦略家から批判され、実際、当時から陸軍の中に反対意見も多かったのです。これは国家相手の戦いには有効でも、テロ組織相手には非効率的です。テロリストは一カ所に留まりません。逆に駐屯基地はテロリストに攻撃されます。テロリストは思ったようには補足できず、攻撃できないのです。

 そこで、地上戦は現地の抵抗勢力に任せ、米軍は主に空から空爆による支援を行います。これが効果を生んだのはシリア北部のコバネの戦いでした。イスラム国はコバネ市街地まで攻め込みながら、陥落させられずに撤退しました。重要なのは地上戦と空爆をどう組み合わせるかです。

 アサド大統領の追放は内戦の初期に介入していた場合は有効だったはずです。しかし、ロシアが介入した現在ではかなり難しくなりました。なにをしようにも、ロシアはアサドの追放に反対します。何か別の政治的決着を考えるしかありません。その点ではヒラリーは現実的です。

 飛行禁止区域はロシアの介入後は設置が難しいかもしれません。ロシア軍は平気で禁止区域を飛びそうです。先に設置していれば、ロシアも軽視しにくかったと思います。

 そして、難民の受け入れを宣言したことは重要です。シリア国民と共に汗を流す姿勢を示したのです。軍事的手法だけが解決手段ではない。難民受け入れは重要な紛争解決の手段です。安倍首相も少しは見習っては?。

 


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