ロシアが国連にシリア和平案を提案

2015.11.12


 BBCによれば、国連で回覧されているロシアの書面は大統領選挙に続いて、18ヶ月間続く、シリアの憲法改革プロセスを提案しました。

 書面はバシャル・アル・アサド大統領(Syrian President Bashar al-Assad)がその期間、権力に留まるかどうかを書いていません。書面は特定の反政府グループに土曜日にウィーンで行われる重要な会談に参加しなければならないとしています。

 ロシア外務相広報官は土曜日の会談に前の最優先事項はこのプロセスでどの反政府グループがパートナーと考えられるか、どれがテロリストで受け入れられないかが確立されなければならないと言いました。

BBC特派員ジョナサン・マーカス(Jonathan Marcus)による分析

 2つの基本的問題が明らかです。

 まず、アサド大統領自身の地位があります。漏洩された書面は「シリア大統領派憲法委員会の議長を務めません」としているものの、移行期間にアサド大統領が身をひくことに言及しません。

 第2の問題は包含性です。つまり、最終的な和平会談に参加するよう求められるのは誰ですか?。ロシアの提案はシリア政府と反政府グループの連合代表団の間の政治的なプロセスを開始するといいます。しかし、これは正確に何を意味しますか?。それはトルコ、湾岸諸国と西欧諸国に支援され、一部はロシアの空襲を受けた反政府グループ多数を含みますか?。どうやれば、これら多様で、多くの場合分裂し、局在するグループを共同の意見を話せる代表団へとまとめられますか?。

 ロシアが作った8項目の提案はアサド大統領が選挙に参加することを除外していません。「民選されたシリア大統領のはシリア軍の最高指揮官、特殊サービスの統括、外交政策の機能を持ちます」と文書はいいます。文書は改革プロセスはアサド大統領ではなく、すべての側が同意した候補者が議長を務めるとしています。

 国連特使スタファン・デ・ミストーラ(Staffan de Mistura)が、2012年6月の合意に基づいて、シリア政府と反政府グループの統合された代表団との政治プロセスを開始するようにも要請しました。


 記事は一部を紹介しました。

 省略しましたが、記事はシリア軍がクェイリス航空基地を占領したことを、この和平案提案にからめています。シリア軍が戦果をあげたいまが、和平提案のチャンスだというわけです。ロシアの軍事支援はこれが目的だったことになります。

 しかし、この記事が触れたこと以外に、イスラム国の問題がまるで置き去りにされていることを指摘しないわけにはいきません。反政府グループだけがシリア政府と戦っているのではなく、イスラム国も存在し、国土の大半を占領しています。彼らを抜きにして、反政府グループと和平を結んだとしても、シリア内戦が終わるわけではありません。

 そもそも、記事が指摘したように、反政府グループとの交渉はほぼ不可能です。反政府グループが和解して、一緒にイスラム国と戦う可能性はかなり低いのです。

 さらに、一部の反政府グループはアルカイダ系だったり、それらと連携していたり、グレーの部分もあります。彼らをテロリストとして排除することで、状況がさらに複雑化する恐れもあります。

 クェイリス航空基地の占領は、この内戦で大きな意味はありません。それをタイミングとして考えているロシア政府の戦略は、もしかすると、かなり浅い考えで終わっているのかもしれません。この程度の思考なら、ロシアの介入も失敗に終わる可能性があります。「西欧諸国の対テロ対策は非効率だ」と言い切ったロシア政府でしたが、訂正しなければならない日が来るかもしれません。

 


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