ロシア空爆開始後、イラン兵がシリアで実戦配備

2015.10.15

 alarabiya.netによれば、ロシアとアメリカはシリア上空で両国の航空機が衝突しないようにする規則を定める文書に関する合意に近づいています。

 ロシアとアメリカの軍人専門家はシリア上空での空対空の行動規則を定めることを目的とする3度目の会合を持ちました。インターファックス通信は「将来の書面の重要問題に関する立場の一致が言及されました」と声明を引用しました。

 ロシアとアメリカの軍指揮官はもう一度、水曜日にシリア上空の空で互いに距離を保つ方法に関して会合を開きます。

 アシュトン・カーター国防長官(Defense Secretary Ash Carter)は「ロシアはシリア上空でプロフェッショナルに振る舞い、基本的な安全手順を順守しなければなりません」は言いました。「我々は明日、この問題についてロシアともう一度会合を持ちます。それらの議論は進展しています。確定しているものはありません」「シリアの政策について不同意のままでも、我々は少なくとも我々の航空兵ができる限り安全になるよう合意できなければなりません」。

 カーター長官は衝突回避の会合に時間枠を設けませんでしたが、「私はすぐに終わると思っている」と付け加えました。ロシア政府のシリアへのアプローチは間違っており戦略的に近視眼的であるため、彼は軍人同士の対話はそれにつながらないと言いました。

 一方、ロシア国防省は水曜日、ロシアの軍用機は過去24時間でシリアに41回出撃し、イスラム国の攻撃目標40カ所を攻撃したと言いました。イゴール・コナシェンコフ国防大臣(Igor Konashenkov)は、攻撃でロシア空軍はテロリストが自爆犯が使う爆弾を造るアレッポ(Aleppo)近くの工場を破壊したと言いました。

 military.comによれば、シリアの活動家は水曜日、イランはシリア北部と中部に数百人の兵士を第一陣として送り、ヒズボラの戦闘員が反政府派との戦闘に参加し、ロシアの航空作戦を隠していると言いました。

 彼らの到着が、すでに250,000人以上の人命を奪い、人口の半分を難民にしたシリア内戦に火を注ぐことは間違いありません。それはシリアにおける広範なロシアの軍事的関与の目標をも強調します。

 ロシアは9月30日にシリアで空爆を開始し、シリア軍と同盟する民兵達は1週間後にシリア中部で反政府派に対する地上戦を開始しました。ロシアは空爆はシリアでイスラム国とその他のテロリストを弱体化させるはずだと言いますが、西欧国当局者とシリア反政府派は大半の攻撃は、過激派グループがほとんどいないシリア中部と北部に集中していると言います。

 ロシアの航空戦力が援護する下でイラン兵が到着したことは、バシャル・アル・アサド大統領(President Bashar Assad)を支えることであるとの見方を強化します。CIAが支援する自由シリア軍の指導者、タジャムー・アレッツア(Tajammu Alezzah)は「ヒズボラとイランから兵士を増派することは、すでに終わる運命にあるアサド政権を存命させるだけです」と言いました。「それはさらに破壊と難民を生むだけです」「それがスーパーパワーで彼らの陣地を強化しているため、いまや彼らはロシアの背後に隠れています」。

 シリアでの作戦の詳細に詳しい当局者は、現在は約1,500人と数えられるイラン兵は、約2週間前、ロシアの空爆が始まってからシリアに到着し始め、ここ数日で加速していると言いました。彼はヒズボラがシリアに新しい戦闘員を送ったとも言いました。彼はイラン人戦闘員はダマスカス空港に到着し、ラタキア(Latakia)の港湾都市へ送られたといいました。そこから、彼らは主にイドリブ州(Idlib)とアレッポ州の戦場へ派遣されています。彼は軍事問題について語る権限がないため匿名を希望しました。当局者はイラン兵とその同盟者はアレッポ州で、数日中に発表される武装勢力に対する大規模攻勢を準備していると言いました。

 人権団体「The Syrian Observatory for Human Rights」も水曜日、イラン兵がシリアに到着し、ジャブラ(Jableh・kmzファイルはこちら)の軍事基地へ送られたと言いました。

 イランとシリアの当局者は長らく、イランは顧問と軍事専門家をシリアに置いていますが、陸軍兵については否定してきました。水曜日のニュースでイラン兵がシリアで戦闘活動を行っていることが初めて確認されました。


 記事は一部を紹介しました。

 アメリカとロシアの対話は表面的な合意に留まり、本当に友好的なものにはなり得ません。玉虫色の文面が飾られ、現場では大して尊重されないのです。結局、米空軍がロシア空軍に進路を譲り、それがアメリカの不満となって蓄積されていくことになります。

 ロシア軍の増派はすでに報道されていますが、実戦投入が開始されたということです。

 イランとヒズボラ、ロシアが別個にアサド政権を支援しているとは誰も考えません。イラン兵が送られたジャブラはロシア空軍がいる空港のすぐ近くです。彼らは連携して地上戦を行うつもりなのです。中部から北部を取り戻せば、インフラの多くは奪還できます。東部にある油田へのパイプラインはイスラム国の支配地域が多いのですが、まずは中部と北部を奪還することがシリア政府とその同盟者の戦略です。

 それがいよいよ現実化してきました。こうなる前に国際社会が介入して、アサド政権を除去しておけばよかったのです。遅くとも3年前に空爆を開始すれば、シリアの民主化が成功した可能性があります。もちろん、リビアやエジプトのように、その後も混迷を続ける可能性も高かったのですが、それでも中東地域に民主化の波が押し寄せる傾向は止められません。

 今朝の新聞を見ると、日本の外務省はプーチン大統領の訪日で忙しいようです。シリア情勢がさらに悪化する中でのロシア大統領訪日は望ましくないはずですが、外務省はおかまいなしです。安倍首相とプーチン大統領が握手する姿が世界に配信されるデメリットは考えません。すでに米議会報告では、日本がロシアに接近していることに不快感が示されています。それもかまわないのでしょう。外務省の戦略なんか、昔から理解できた方が少ないのですから。

 


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