イスラム国が湯川遥菜氏を殺害か

2015.1.25
追加 同日 7:20


 非常に残念なことに、イスラム国が人質の湯川遥菜氏を殺害したとみられる映像がインターネット上に公開されました。

 現段階では、私はオリジナルの映像を見ておらず、報道されたモザイク処理された映像を見ただけで、殺害されたことが本当かを確認できていません。しかし、後藤健二さんの妻にイスラム国から同じ映像が送られていることから、本物と考えてよいでしょう。

 この映像については、すでに疑問視する声が出ているようです。これまでは首を切る場面を公開したのに、写真を後藤さんに持たせているとか、イスラム国のロゴが入っていないとかいった点が疑問だというのでしょう。首を切る場面がないのは以前にもあったことで、撮影しても脅迫するのに適当な映像でない場合は使わないこともあるはずです。

 military.comによると、アメリカでも最初の脅迫ビデオが屋内で撮影された可能性があるとの専門家の意見を報じています。影の向きの不自然さについても指摘していますが、それよりもジャンプスーツが揺れているのに、ジハーディ・ジョンの声に風のノイズが入っていない点を指摘したことが大きいと思われます。この見解を裏づけるには音声分析の専門家に調査させるしかありません。周囲に声を反響する物があるかどうかは音声解析で判明します。これはぜひとも調査して欲しいものです。

 新しく出された要求はヨルダンにいる女性死刑囚の釈放でした。イスラム国は中東への支援金2億円を中止しろと言うかと考えていたので、少し意外な気持ちです。おそらく、日本政府がヨルダンに対策本部を置いたので、これを思い立ったのでしょう。死刑囚の釈放を交渉しやすいヨルダンに日本の代表がいるのですから。つまり、これは犯人側の「妥協」を示しています。最初の要求に強いこだわりがあるのではなく、妥協もあり得るということです。日本が要求をのまなくても、イスラム国は簡単な条件をやったのに、実行しようとしなかったから人質を殺したと自分を正当化できます。機会主義的ですが、しっかりと計算もしているという点では、イスラム国のやり方といえます。

 NHKの午前7時のニュースを見て感じたことを追記します。解説委員の「イスラム国は緻密な計算をしている」との見解には苦笑させられました。イスラム国の行動は多分に行き当たりばったりです。イラクに攻め込んだとき、まずクルド人自治区に向かったのに、その後、バグダッドに向かい、また方向を転じてクルド自治区に向かうという戦略転換を行いました。そのため、現在、イラクで行き詰まっているのです。明確な戦略がないから、このように方針がふらつくのです。外交に長けた者がいるとか、日本の状況をよく分かっているとか、どうでもいい話ばかりでした。唯一、先日撃墜されたヨルダン軍パイロットとの交換に、この女性死刑囚を使うとの案がヨルダンでも浮上していたという話は参考になりました。複数の条件が相まって、今回の要求が出たといえるのです。

 


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