ヘーゲル国防長官が政権の詳細な軍管理を支持

2015.1.17


 military.comによれば、木曜日、退任演説でチャック・ヘーゲル国防長官(Defense Secretary Chuck Hagel)は、ホワイトハウスへの批判としてみられる、軍隊を細かく管理することに対して警告しました。

 テキサス州フォート・ブリス(Fort Bliss)の陸軍上級曹長アカデミーの下士官とのホールミーティングで、「細かく管理しようとせずに、そうすることはできないのです」とヘーゲル長官は言いました。「あなたたちは正しい指導者がいると考えるから、兵士に仕事をさせられるのです」とヘーゲルは言いました。彼はホワイトハウスのスタッフと国家安全保障問題で衝突した後、11月24日に突然の辞任を発表しました。

 ヘーゲルは先に、サンディエゴ・タイムズ・ユニオン紙とのインタビューでも、ホワイトハウスとの相違に言及しているようです。オバマ大統領との会議で、ヘーゲルは「大統領はことの善し悪しについて私の考えを表明する機会を設け、私はそうしました」。彼の助言が受け入れられたかどうかを尋ねられると、ヘーゲルは直接応えませんでした。「私は私が出したある種の勧告を与えられ、助言できたという事実に満足しています」。

 ヘーゲルの2人の前任者、ロバート・ゲーツ(Robert Gates)とレオン・パネッタ(Leon Panetta)はどちらもオバマ大統領と安全保障スタッフが彼らを細かく管理しようとしたと批判する本を書きました。いまのところ、ヘーゲルは彼が首を切られたとの推測を避け、彼とオバマは昨年後半に彼が辞任することで納得する決定をしたと言いました。

 しかし、上院軍事委員会の新議長、ジョン・マケイン上院議員(Sen. John McCain)は、ヘーゲルが彼に昨年後半、ホワイトハウスへの不満を話したと言いました。「私はチャックが政権の国家安全保障政策と意志決定のプロセスに失望したことを知っています」とマケインは地元アリゾナ州のラジオ局「News Talk 550」に言いました。「彼の前任者はホワイトハウスから過度の細かい管理について、それが彼らの仕事を成功させるのをより困難にしたと話しています」「チャックの状況も同じです」。

 フォート・ブリス訪問の終わりに、ヘーゲルは後任者のアシュトン・カーター(Ashton Carter)の最大の挑戦が経費節減により国防総省に強いられた予算の不確実性を解決するだろうといいました。「私は(来たるべき年に)長期の地上戦に突入しようとしているとは思いません」とヘーゲルは言いました。しかし、節減策の下で「我々は防衛戦略の必要性を満たすためにすべてできることをしようとしてはいません。私はこれが我々は直面する最大の課題と考えます。13年間の絶え間ない戦争は我軍の一部分を破壊しました」。


 記事は一部を紹介しました。

 ヘーゲル長官は退任のプロセスに入っており、主要基地を訪問して、兵士とその家族に最後の演説をしているところです。新長官を議会が承認するまで、その座に留まります。

 この段階での演説は微妙な問題を避けるのが常ですが、オバマ政権がさらされている、過度の軍管理を支持する発言をした点が興味深く感じます。

 以前に書いたように、私は伝統的な方法によらないオバマ政権の軍管理は、もしかすると、効果的かも知れないと考えています。これまで、米軍は大統領が承認すれば、後は好きなようになるという態度でした。彼らに必要なのは、大統領の承認だけで、その先の判断は軍が合理的と考えるものすべてが含まれるというのが、米軍の考え方です。

 だから、ホワイトハウスから直接、部隊へ命令が出ることに対して、強い不快感が出るのは当然なのです。私の知人の陸自幹部も、福島第一原発事故に派遣された際、官邸から直接指示が降りてくるので困ったと述べています。官邸の指示を実行しようとすると、現在進行中の仕事を止めることになる、と彼は怒っていました。軍は指揮系統によって動くので、上級司令部が複数あると現場は混乱します。

 しかし、過去において、このやり方は対応の遅れを生んだ可能性があると私は考えます。問題が大きくなり、政権の耳に届くと、大統領は軍の最高位である統合参謀本部議長を呼んで事情を聞きます。議長は該当部隊から情報をもらい、ホワイトハウスへ行き大統領らに説明し、大統領の支持で議長から該当部隊へと指示が降りていくことになります。そうこうしている間に問題が拡大してしまうのです。

 ベトナム戦争の撤退が遅れたのは、政権と軍の関係に問題があったからと思います。マクナマラ国防長官は早期の段階で侵攻が失敗だったと考えていましたが、すぐに言い出せませんでした。2003年のイラク侵攻では、凡将のペトラエス大将は意味のない報告を繰り返し、米軍の被害を大きくしました。軍に浄化機能が期待できないなら、政権が「葵の紋所」を示して、直接指示する場合もあると、私は考えます。

 今回、ヘーゲル長官がこの問題に触れたのは、彼の退任理由は別のところにあるのだろうと考えます。このやり方が、今後、アメリカの政治のスタイルになるかもしれません。

 


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