スーパー襲撃犯がイスラム国のメンバーだと主張

2015.1.12


 alarabiya.netによれば、パリの攻撃で警察官を撃ち、ユダヤ人用スーパーマーケットで人質をとったアメディ・クリバリ(Amedy Coulibaly)に似た男は、日曜日、死後に公開されたネット上のビデオ映像でイスラム国のメンバーだと主張しました。

 男は、彼が警察に対して反対の意志を表明すると言い、映像に重なるテキストが彼がパリ南部で警察官を殺し、翌日、スーパーマーケットを攻撃したことを認めます。

 フランスの検察官は日曜日、彼らがクリバリがシャルリー・エブド社で2人のガンマンが大量虐殺を行った数時間後、パリ南部でジョギング中の人を撃ったことに関係したと言いました。検察官事務所の声明の中で、ジョギング中の人が撃たれて負傷したフォントネー=オー=ローズ(Fontenay-aux-Roses)で見つかった弾丸と、クリバリがスーパーマーケット攻撃で使ったトカレフ拳銃の弾丸が同じだとしました。


 フランスではシャルリー・エブド社襲撃事件が「表現の自由」への挑戦として受け止められ、大規模なデモまで起きているといいます。

 しかし、同社の風刺漫画は過激派だけでなく、イスラム教自体を侮辱しているとも受け取れる内容であり、無用にイスラム過激派を刺激したことを指摘しないわけにはいきません。イスラム教とイスラム過激派を区別し、過激派だけを批判する内容ならシャルリー・エブド社を擁護したくなりますが、フランスで立場が悪いイスラム教徒をさらに批判しているとしか思えません。もともと、風刺漫画は権力者を批判するものですが、弱者を虐げるための道具として、イスラム教の移民を疎んじるフランス人の心に媚びるために使われていたように見えます。これは明らかに「差別」です。まさしく、これがテロリズムの原因です。貧者が富者を攻撃するのがテロリズムなのです。悲しみにくれるフランスは、そのことをすっかり忘れています。

 言うまでもなく、テロ行為は容認されるべきではありません。しかし、現在の国際情勢を顧みれば、わざわざテロリストを刺激して、攻撃を誘致するような漫画を公表するべきとは思えません。テロ防止の観点からも推奨できる行為ではありません。

 さらに、表現の自由がある一方で、信仰の自由もあります。預言者を侮辱するような漫画を描くべきではありません。

 言論による批判には、武器ではなく、やはり言論で応じるべきです。キリスト教徒がイスラム教徒を批判するのなら、イスラム教徒はキリスト教徒を言論で批判すべきです。

 シャルリー・エブド社を襲撃したのはアルカイダのメンバーで、スーパーマーケットを襲撃したのはイスラム国のメンバーです。アルカイダとイスラム国は対立していますが、この戦いではなぜか共闘する形となりました。クリバリはシャルリー・エブド社を襲撃したクアシ兄弟に資金を提供したとも言っていますが、真偽は確認できていません。

 フランス警察特殊部隊は、両方の現場で、どちらかに動きがあれば、他方でも突入する準備をしていたようです。また、死亡した人質は突入前に犯人によって撃たれており、警察の突入作戦は妥当な内容だったようです。

 射殺された警察官もイスラム教徒で、その家族が「過激派とイスラム教を混同しないでほしい」と声明を出しました。この事件で最も考えさせられる発言だと、私は考えます。

 今回の事件程度の犠牲者が出るテロ攻撃は中東やアフリカでは珍しくありません。それが強い象徴制を持つ事件となり、犯人らもまた殉教者として強い象徴制を獲得しました。イスラム教徒と非イスラム教徒の分断が高まったのが、この事件の負の成果です。これが今後の世界に一層悪い影響を与える可能性を懸念します。

 


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