シリア空爆で民間人の犠牲は出たか?

2014.9.27


 military.comによれば、米軍はシリアでのアメリカと同盟国の空爆によって死んだ民間人がいる件を調査していますが、現在のところ、死者が出た確証はないと言いました。

 人権団体「The Syrian Observatory for Human Rights」とシリアの活動家は、若干の民間人が水曜日の空爆で殺されたものの、おそらくは、民兵の妻と子供だったと言いました。

 米国防総省広報官、ジョン・カービー海軍少将(Rear Adm. John Kirby)は、軍は報道を承知しており、それらを調査しているものの、シリアには地上軍はおらず、民間人が死んだかどうかを判断するのに時間がかかると言いました。現在、アメリカは空爆によるダメージの評価を続けています。「空爆地域はシリアの非常に隔絶した地域で、大半は砂漠です。市街地ではありません」「我々は民間人への資産の類へのコラテラルダメージの懸念が高い理由はないと考えています。しかし、民間人の犠牲という問題は、間違いなく真剣にとらえ、ダメージ評価の過程を通じて、調査と評価を続けます」。

 別のコメントで、第1歩兵師団司令部の約500人がこの地域に派遣されていて、約200人がイラクに行く予定だと、カービー少将は言いました。残りの300人はすぐにイラクに行く予定はありません。


 記事は一部を紹介しました。

 時事通信は民間人の死亡について、『民間人5人死亡か=シリア空爆—イスラム国』という25日付の記事で、「米軍主導で24日夜に行ったシリアへの空爆で、北東部ハサカで民間人5人、東部デリゾールでイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」のメンバー14人が死亡したと発表した。民間人の中には子ども1人が含まれていたという。」と報じました。空爆が製油施設を目標としていたことも書いています。

 しかし、military.comが書いているように、死亡した子供はイスラム国民兵の子供です(引用元はこちら)。人権団体の報告は、アル・ハサカ(al-Hasakah)南部の田園地帯、アル・ホウル地区(al-Houl)の製油施設3ヶ所への空爆で民間人5人(子供1人と女性)が死亡。アル・ハサカ(al-Hasakah)南部の田園地帯、アル・シャダディ(al-Shadadi)でイスラム国戦闘員の3家族(複数の子供と女性を含む)が死亡としています。死亡した子供の数は元記事の方がより多く、国内報道でなぜ1人に減ったのかが分かりません。

 製油施設には、そこを管理する民間人もいます。民間人の居住施設は爆発事故を避けるために、施設から距離を置いて設置されるもので、普通、親は子供を施設へは連れて行かないものです。しかし、国内メディアは、そういう事情には触れず、民間人が死んだことだけを指摘します。これでは、日本国民が正確な知識を得ることはできません。国内メディアに注目しても、海外情勢は理解できないのです。

 民兵の子供は国際法上は民間人とされますが、戦争遂行上は無視されがちです。心配なのは、イスラム国に脅されて施設管理をしている職員が空爆で死亡することです。民兵がそんな場所に子供を連れていることまでは関知しません。すでに、 シリアに関する国連調査委員会からは、シリア空爆を行う国は、民間人保護に配慮するように勧告が出ています。空爆による民間人の被害はつきものであり、空爆が続けば、そういう被害は出るかも知れません。いや、すでに出ているかも知れません。

 こういう場合、事前に空爆を行うことを予告するビラを撒き、施設職員に告知する方法があります。空爆を行う時間帯を大まかに知らせておき、その期間は施設から離れるよう指示するのです。イスラム国はろくな対空兵器を持っていませんから、予告をしたところで、友軍に被害は出ません。報道機関なら、そういう措置を取ったかどうかを取材するべきですが、それもやっていないようです。


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