共和党議員がシリアに地上軍派遣を主張

2014.9.22


 alarabiya.netによれば、米下院のピーター・キング(Peter King・共和党)は、アメリカはシリアに一定の地上軍を派遣する方向に向かい、バラク・オバマ大統領(President Barack Obama)はイスラム国を破壊しなければならないと言いました。

 西欧はイスラム国の長期の困難な戦争に直面しているが、大統領は軍事顧問に続いて地上軍を送ることを拒否することを説明していたとキング議員は言いました。

 シリアに軍を派遣することを除外することで、オバマ大統領は不明瞭なラッパを鳴らしているとキング議員は言いました。

 統合参謀本部議長マーティン・デンプシー大将(General Martin Dempsey)に続いて、地上での介入が不可欠だと議会で述べたあと、キング議員は「軍のメッセージは大統領に届いている」と言いました。「大統領はそうしようと考えていることよりも先へ行こうとしています」と彼はサンデータイムズ紙に言い、イラクへ2,000人派遣する大統領の決断を称賛しました。

 下院国土安全保障委員会のメンバーで対テロ・諜報グループの議長であるキング議員は、CIA職員と特殊部隊は地上介入の一部となる必要があるとも言いました。「我々は基本的に、自由に使えるすべての武器を使って、(イスラム国)を恐れるのと同じだけのことをしなければなりません」と、彼はイギリスの新聞に言いました。

 キング議員は、イスラム国の脅威は中東の中で阻止されるというホワイトハウスのスタンスと一致せず、アメリカに入国するためのビザを必要としない、武装グループに参加するために旅行するヨーロッパ人によってもたらされる驚異をあげました。「アメリカに来られる大勢のヨーロッパ人です。イギリス人であれ、フランス人であれ、誰であれ、中東を行き来する人たちをすべて監視することは極めて困難です」。

 民主党と共和党が珍しく合意し、米上院はイスラム国と戦えるようにするために、シリアの穏健な反政府派に武器を提供し、訓練する法案を承認しました。キング議員は大統領に求められて法案に賛成票を投じました。


 記事は一部を紹介しました。

 キング議員の意見は彼だけでなく、共和党全体にみられる意見です。

 軍事オプションを促進したがるアメリカ人の性癖は日本人には理解しにくいところですが、独立戦争の経緯を知ると、無理なく理解できるようになります。志願した民兵から始まった独立戦争は、武装した国民が建国の礎になったというイメージをアメリカ人の心に刻みつけました。

 国家防衛のためには、誰かが声をあげることが重要という考えは、トム・クランシーの小説『日米開戦』にも反映されています。日本の自衛隊が密かにハワイを占領したことに気がついた退役軍人が米本土に通報するくだりは、日本人にはかなり非現実的に思えます。そもそも、日本がハワイを占領しなければならない理由が日本人にはまったく理解できません。日本人には、それを実現する動機もなければ、手段もありません。それでも、この退役軍人の姿こそ、国家的危機に対する態度としては不自然ではないのです。

 連邦議会が、そういう意識が結晶した場所でなければならないのは、機関の性質からいって必然です。よって、キング議員みたいな意見が出てくる訳です。

 しかし、こうした戦略は、結果を見据えたものでなければなりません。古来、戦略は目的に合致した手段を用いよとされています。反射的な反応みたいな考えでは、戦略を誤る場合があるのです。うまくいっても、まぐれ当たりかも知れません。

 キング議員みたいな意見に戦略論が付随しないのは、先を見通していない証拠です。「とにかく、やれ」式の発想で、過去、アメリカは何度も間違った戦争をしてきました。その最たるものは、2003年のイラク侵攻です。

 イスラム国くらいに巨大化した組織を殲滅するのは大変な作業です。確立された戦略はありません。いまは、空爆で様子を見て、深入りしないという選択の方が賢明です。そのうちに、イスラム国へのイスラム教徒の期待の減少、内部分裂などにより、その勢力が衰える可能性もあります。次のステップがあるとしても、イスラム国の盛衰を見極めてからになるでしょう。

 


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