米軍がクルド人地区へ2度の空中投下を実施

2014.8.9


 BBCによれば、アメリカは過激派を避けて山中に隠れるイラク人多数に対する2回目の食糧と水の空中投下を行いました。

 空中投下はアメリカがイスラム国家(IS)の武装勢力に対して新しい空爆を開始した数時間後に行われました。

 声明で、国防総省は最新の空中投下は、補給品の包み総計72個を積んだC-17輸送機1機、C-130輸送機2機が参加したと言いました。輸送機は空母ジョージ・HW・ブッシュのF/A-18戦闘機2機の護衛を受けました。

 支援物資は、1週間前にヤジディ派がISの前進から逃げたシンジャル(Sinjar)周辺の山地へ投下されました。

 金曜日の最初の空爆では、500ポンド爆弾2個がイルビル(Irbil)を守る部隊に対して使われる、ISの砲兵隊に投下されました。金曜日遅く、国防総省は第2波の攻撃を認めました。無人攻撃機とジェット戦闘機がイルビルを脅かす迫撃砲陣地と7台の車列を攻撃しました。

 ISのある戦闘員は、攻撃は「我々に何の影響もない」と言いました。「航空機は彼らが重要と考える場所を攻撃しますが、これは我々が活動するやり方ではありません。我々はゲリラ戦向けに訓練されています」

 国務省公報のマリー・ハーフ(Marie Harf)は、攻撃の直近の目標はISが、米要員がいるイルビルへ前進するのを防ぐことだと言いました。イギリス政府筋は、空爆は完全にアメリカの作戦で、イギリスは現在、人道支援に集中していると言いました。将来、空爆に参加することを排除しない一方で、それは金曜日にイギリス政府の緊急会議「コブラ(Cobra)」で議論されず、週末にかけてもされないだろうと、消息筋は言いました。

 クルディスタン政府の顧問として働いた、元米外交官のピーター・ガルブレイス(Peter Galbraith)は、アメリカの空爆はクルド人に多くの信頼を与えると言いました。「それは彼らに軍を再配置させることもできます」「彼らは首都を守るために多くを集中させる必要がありません」。

 military.comが攻撃の内容を詳しく報じています。

 早朝の攻撃で、F-18はレーザー誘導式500ポンド爆弾を、イルビルの30マイル(48km)以内に殺到したISIL(ISISと同じ意味)が使う移動式の砲に向けて投下しました。

 次の攻撃で、プレデターと考えられる遠隔操作された航空機が迫撃砲陣地を攻撃しました。ISILの戦闘員が少し経って現場に戻った時、彼らは再び攻撃され、殲滅されました。

 3番目の攻撃はF-18戦闘機4機が、駐車中のISILの車両7台と迫撃砲陣地近くを攻撃しました。航空機は計画された2度の投下を行いました。各航空機はレーザー誘導爆弾1個、合計8個を目標に投下し、迫撃砲と車列を無力化しました。

 支援物資には調理済み食糧8,000食が含まれます。

 アメリカはイルビルに領事館を持っており、米特殊部隊約40人が、クルド人を情報と助言で支援するために、ここの統合作戦センターに配置されています。

 米当局者は、空爆の2番目の目標は、シンジャル郊外の山中で、ISILが行っているヤジディ派の包囲を破ることだと言いました。


 記事は一部を紹介しました。

 国内報道では、攻撃目標はミサイル部隊と書いているようもあったようですが、これは誤りと思われます。

 ガルブレイス氏の意見は楽観的すぎます。米軍の空爆はイルビルの領事館と米軍関係者を守ることが目的です。このことは、すぐにクルド人指導者に伝わるでしょう。食糧8,000食も、数回分の分量しかありません。シリアの反政府軍に送った食糧を、彼らが気に入らず、食べてもらえなかったことがありました。似たことが起きる可能性があります。

 ISISLの戦闘員が言うほど、米軍の空爆は無意味ではありません。イルビルを攻略するには組織だった作戦が必要で、そのために兵力は集結します。そこを攻撃するのは、米軍が得意とするところで、ISILにはそれを防ぐ手がありません。迫撃砲陣地に戻った戦闘員が再び攻撃されたように、攻撃可能な場所は常時監視できることを、彼らは知ったはずです。

 国内メディアは最初の空爆だけ報じる傾向がありますが、肝心なのは、これからの空爆の中身です。

 


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