有益な情報から無を報じるの愚

2014.7.31
更新 同日 18:00


 北朝鮮が東倉里のロケット基地に謎のドーム型の建物を新設したという記事を、共同通信が報じました。しかし、元記事の38north.orgのレポートを読むと、重要な記述は他の部分にありました。共同通信は一体どこを読んだのでしょう?。(記事はこちら

 レポートから重要な部分を選んで紹介します。

ガントリータワーが完成間近

 2014年7月4日の商用衛星写真は、ガントリーと発射パッドの改善が完成に近いことを示します。ガントリーの新しい3レベルが回転式のプラットフォーム付きで完成しています。

 完成すると、新しいガントリーは、2012年に打ち上げられた30mの銀河3号より20〜25m高い、50〜55mのロケットをサポートできます。

 写真から一段機体の直径は分かりませんが、直径2.4mの銀河3号は移動式発射台の直径4mの開口部の内部に設置されました。新しいロケットの一段機体はこれくらいの直径でしょう。

 ロケットを組み上げるのに使ったとみられる、長さ24mのクレーン・ブームを撤去したことは重要な発展かも知れません。

 北朝鮮はもっと重たいロケットを扱うために、さらに強力なブームを設置するつもりかも知れませんが、そうでないなら、発射台の東端に垂直組立棟を建てるかも知れません。

新しい道路と鉄道

 将来、ずっと大きなロケットを発射台へ移動式できる、発射台につながる道路と引き込み線の新しい、より広範なアクセスに関する建設が進行しています。道路と川にかかる橋の建設は2014年7月初旬に終わりました。

  2014年3月に始まり、発射台につながる、軌道の約半分が敷かれた、1.42kmの引き込み線の建設で大きな進展がありました。引き込み線は西から発射台の地域に入り、すぐに新設された長さ120m、幅4mのトンネルに入り、発射台へ3分の2のところに出てきます。線路は発射台の端の新しい建設エリアに入り、北朝鮮がより大きなロケットのために垂直組立棟を造ろうとしている可能性を強めます。

新しい正体不明のドーム型建物

 過去4ヶ月にわたり、北朝鮮はドーム型の屋根(直径30mと10m)をもつ二つの建物を建設してきました。その目的は不明です。

 現場の整地は2014年3月に始まりました。4月までに、非常に変わった基礎がみられました。5月10日までに、3層の中心部直径30mで、直径50mの円形の建物が建設され、直径10mのドームをもつ直径18mの建物は建設中です。


 記事は一部を紹介しました。

 Google Earthが早速写真を更新していて、このドームが確認できます。もちろん、元記事にも写真が何枚も掲載されています。

 多分、ドーム型建物の大きな方は見学者のために造られたもので、小さな方は管理棟でしょう。大きなドームは、ロケットを追跡するレーダーを置く山にあり、発射台を視認できる位置にあります。大きなドームの西側にある木が生えていない場所がそれです。ドームから発射台まで、視線を遮るものはなく、木よりも高い位置に見学する場所があれば、発射台はよく見えるはずです。大きなドームへの道は幅が広く、傾斜が急にならないように大きくカーブしています。小さなドームへの道路は幅が狭く、一ヶ所を除いて直線です。つまり、大きなドームへの道路は快適にアクセスできるように造られています。これは身分の高い者が使うことを示しており、金正恩などが来訪することを前提としていると考えられます。

図は右クリックで拡大できます。

 大きなドームの位置から発射台まで直線を引き、地上の高さで見たのが下の図です。実際にはこれよりも少し高い位置から見ることになります。どちらにしても、発射台の眺望は最高です。

図は右クリックで拡大できます。

 より重要なのはガントリータワーの改修、道路と引き込み線の増設です。明らかに、北朝鮮がさらに大きなロケットを造る計画があることを暗示しています。タワーの大きさからは、新しいロケットの大きさが推測できます。そこから、今後、北朝鮮がやりそうなことが予測できます。これこそがメディアが報じるべきことです。妙なドームに視線を向けさせる意味はありません。

 何が本当に意味があるかを分析せず、見た目に奇妙に映るものを見るのは無意味です。

 


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.