ウクライナ危機は長期的問題へ

2014.3.6


 ウクライナ危機について、BBCの記事から、その後の展開を拾ってみました。

 欧州連合は110ユーロ(150億ドル)の支援を提供し、ウクライナ人18人の資産を凍結しました。ホセ・マニュエル・バロゾ欧州委員会委員長(European Commission President Jose Manuel Barroso)は、来る2年間のローンと補助金は、キエフの献身的、包括的で、改革志向の政府を支援するために計画されたと言いました。ウクライナ財務相は、経済を救済するためには350億ドルが必要だと予測しました。

 チャック・ヘーゲル国防長官は、米軍とポーランドとバルチック諸国との軍事協力を拡大する計画を発表しました。彼は、アメリカはポーランドとの空軍の共同訓練を推進し、バルチック諸国の空域を警備するNATO軍の任務への坂を増やすと言いました。彼は、この発表は先週、ポーランドの懸念に対する直接の対応だと言いました。

 一方で、欧州連合の外務代表、キャスリン・アシュトン(Catherine Ashton)とエストニア外務大臣のウルマス・パエト(Urmas Paet)の電話会談の録音音声がインターネット上に漏洩しました。パエト氏はアシュトン女性男爵に、ウクライナで、追放されたビクトル・ヤヌコビッチ大統領(President Viktor Yanukovych)の政府は、先月、キエフで置きた衝突での警察官と抗議者の死に関係がないという理解が広まりつつあると言いました。彼は、ウクライナ人は新しいキエフ政府の中の一派が狙撃手を雇ったと考えていると言いました。ウクライナ人医師のオルガ・ボゴモレーツ(Olga Bogomolets)が彼に、双方の犠牲者は同じ武器を使う狙撃手によって撃たれたと言ったと言いました。しかし、ボゴモレーツ医師は、イギリスのテレグラフ紙に対して、彼女は政府側から犠牲者に接したりしておらず、彼らがどのように殺されたかについてコメントできないと言いました。ピエト氏はアシュトン女性男爵との会話が2月26日にあったことを認めました。水曜日の記者会見で、彼はキエフでの死者を調べるよう要求しましたが、このコメントを新政府の評判を落とすために使うことのないよう警告しました。「私は記者たちに、この録音を特に慎重に扱うように求めます。私はウクライナで起きたことについて、そこにあった説について話していました」と彼は言いました。

 欧州安全保障協力機構(The Organisation for Security and Co-operation in Europe)は、35人の非武装の軍事監視員を、キエフからの要求に応じて、ウクライナに送ったと言います。彼らがクリミア半島に展開したかは不明です。

 military.comによれば、ロシアの連邦議員は、経済制裁がロシアに科せられた場合、ヨーロッパとアメリカ企業の不動産、資産、口座を没収することを許す草案作りを行っています。


 記事は一部を紹介しました。

 直接的な軍事介入の可能性はほぼなくなり、不測の事態が発生しない限りは、テーブルの上で戦争が進むことが確定的になりました。

 アメリカはロシア国境沿いの他の国との軍事的つながりを強化し、ロシアに軽い圧力をかけようとしています。ポーランドがロシアを警戒するのは、第2次世界大戦のことを考えると当然です。今回は、ドイツが仲介に入っているという点で、ポーランドは一定の安心感を得ているでしょう。ロシアはクリミア半島を手に入れて安心しようとしていますが、長期的にはドイツのサポートはポーランドの西欧との結びつきを強め、ロシアにとっては不利になります。

 狙撃手の話は、現地に流れる噂話の一種としてとらえればよいでしょう。こうした陰謀説は自然発生的に出るものです。

 クリミア半島で住民投票が行われ、ロシアへの帰属が決まる可能性は高く、アメリカと西欧はロシアに対する経済制裁をせざるを得ないでしょう。ロシアも欧米企業の資産凍結を行うところまではやるでしょう。軍事オプションは金がかかりすぎる展開になるので、誰も選びません。

 クリミア半島は大陸との接続部分に湖が多く、接近ルートが限られています。地上軍を侵入させるには、この狭い地域での戦いとなります。守る方が有利なのです。ウクライナ軍がクリミア半島を開放するために侵攻すれば、ロシア軍は東ウクライナへ侵入するか、すると見せかけて、ウクライナ軍の兵力を南北に分散させます。一方で、南方ルートから鉄道船を使って補給を投入し、兵力を安全に増強します。沿岸部分では黒海艦隊の支援も可能です。

 ウクライナがクリミア半島を手放さないと決め、ロシアと対決する覚悟をすれば別です。しかし、そうなった場合、ウクライナが単独で戦争を遂行する力はなく、NATO軍の協力が必要になるでしょう。欧州連合やアメリカも、正直、そこまでの支援は難しいと考えるでしょう。そうなれば、今後、ロシアとの境界線近く全域で警戒態勢を引き上げることになるからです。

 ロシアも単純にウクライナを脅して要求を通せるほどの力はありません。ウクライナで全力疾走すれば、他の地域で武装勢力の抵抗が激化する可能性もあります。国際社会での立場も悪化させたくはありません。すでに、ソチ五輪に投じた資金は、今回の紛争で無意味になったとも言えます。五輪開催で評判を上げても、紛争介入でそれ以上に失ったのです。 よって、クリミア半島から出たいというウクライナ人に対しては、積極的に移住を認めるなどのソフト路線で、この難局を乗り切ろうとするでしょう。

 結局のところ、クリミア半島のロシア帰属が、最も可能性が高い落としどころということになるわけです。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.